薬局が在庫を絞らなければならない理由 〜会計学の知識を踏まえて〜

薬局を経営する上で知っておくべき会計学の知識が3つあります。

①ある時点(決算など)で会社がどれだけの資産を保有しているのか
②ある一定期間(例えば1年間)の会社の損益
③キャッシュフロー(現金の動き)

このうち②と③について少し解説いたします。
先ず、損益計算の場合、「販売や費用が発生した」、のように実態に基づいた事業活動を表しているので、損益と現金の増減が一致しません。
例えば5月の調剤売上が100万円の場合、損益計算上は5月度の売上高に100万円が計上されますが、診療報酬が振り込まれるのは約2ヶ月後なので、5月の時点で100万円の現金の増加があるわけではありません。
卸への支払いも同じです。

したがって、実際の現金の動きを示すキャッシュフローという概念が必要になってくるのですが、このために薬局は在庫を絞る理由があるのです。

薬局が在庫を絞る理由は、
①資産価値の下落を最小化させるため
②キャッシュフローを安定化させるため
の2つです。

①については、薬価改定のタイミングがそれにあたります。

②について説明します。
例えば1錠で1万円(30錠包装で30万円)が3ヶ月に1回のペースで処方されることがわかっているとします。
これを処方3ヶ月前から仕入れておくのと、処方直前に仕入れるのはわけが違うのです。
「現金30万円」を用いて社員の給料などを支払うことはできますが、「30万円分の薬の在庫」では、それらができません。
手元の現金を無駄に減らさないために、つまりキャッシュフローを安定化させるために、在庫は絞らないといけません。

逆を言えば、①と②以外で、薬局が在庫を減らすべき(会計学上の)理由はありません。
薬局の在庫は流動資産(固定資産ではない)なので、税金は発生しません。

なぜ、在庫を絞る必要があるのか。
それを理解した上で、日々の業務にあたりたいですね。

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