ギフテッド / GIFTED
人は迷う。
自分のしていることが正しいのかどうか。
それが最善の道だと思っても、その判断が本当にその人のためになるのかどうか、実際に踏み出してみなければ正解は分かりません。
この映画はひとりの天才的な能力を持つ少女と、彼女を取り巻く人の物語です。
ストーリー紹介 (-∀-)
フロリダでボートの修理をしているフランク・アドラーは、姪にあたるメアリーと片目が塞がっている猫のフレッドと、小さな家に暮らしていました。
メアリーの母でフランクの姉ダイアンは、著名な数学者でしたが、メアリーが生まれてわずか6ヶ月のときに自殺をしてしまい、以来フランクが男手ひとつでメアリーを育ててきました。
フランクとメアリーが一緒に暮らし始めて6年半が過ぎ、7歳になったメアリーを地元の学校に通わせることにしたフランク。 けれど、メアリーは学校に行くことに今ひとつ乗り気ではありませんでした。
フランクに促されながら、渋々スクールバスに乗り込むメアリー。 隣の家に住んでいるロバータは、フランクにとっては借家の管理人で親しい隣人でしたが、メアリーにとっては歳の離れた親友でした。
学校へ行くことに不安を募らせていたメアリーのことを、ロバータは心配していましたが、外の世界に出ることも必要だとフランクは思っていました。
登校初日、1年生の教室では算数の授業が行われていました。 クラスの担任ボニー・スティーブンソン先生は、子供たちに計算問題を出していました。
「1+1=2 これは覚えたわね? それじゃあ、2+2がわかる人は?」
子供たちは一斉に手を挙げましたが、メアリーだけは机に顔をつけてつまらなそうにしていました。
ボニーは手を挙げた前の席の子を指名しました。
「4」
「そうよドナ 2+2=4です。 じゃあ、3+3は?」
メアリーは顔を上げます。
「3+3?マジで?」
「発言するのは指された人だけよ」
ボニーはメアリーを注意しました。
「6って誰でもわかる」
「じゃあメアリー立って。 難しい問題を出してあげる」 ボニーは1年生には少し早い算数の問題を、メアリーに出し始めました。
「9+8は?」 「17」
「その通り。じゃあ、15+17は?」 「32」
「正解よ…。 じゃあ、57+135は?」 「192」
次々と即答するメアリーに、周りの生徒たちがザワつき始めます。
「それじゃあ…57×135はいくつか答えられる?」
メアリーは少し息を吐き、沈黙が数秒続きました。
それを見たボニーが授業に戻ろうとしたときです…
「7695」
慌てて電卓で計算するボニー。
メアリーの答えは合っていました。
「平方根は87.7。 およそね」
電卓の√を押すと、やはり答えは合っていて、ボニーは驚きを隠せませんでした。
メアリーのクラスに、デイビス校長が授業を見にやって来ました。 なぜかメアリーがひとりだけ、真っ直ぐに手を挙げていました。
「メアリー、何か?」
「彼女がボス?」
デイビス校長は眉をひそめます。
「今すぐフランクに電話して!私を帰らせて!」
メアリーは大声で校長に訴えました。
連絡を受けて、フランクがメアリーを迎えに来ました。 帰ろうとする二人を、担任のボニーが追いかけて呼び止めました。
「あなたのお嬢さんは特別な才能があると思う」
メアリーの高い計算能力について話し始めるボニーでしたが、フランクは冷静に理由を話しました。
「トラハテンベルク法だ」
フランクは速算法を考案したトラハテンベルクという人物について簡単に説明し、メアリーはその暗算法を習得しているから問題が解けたのだと話しました。
「でも彼女はまだ7歳よ」
「俺は8歳で習得した。 特別じゃない」
フランクはボニーに今日のことを詫び、メアリーを連れて仕事に戻りました。
「学校で特技をひけらかすなと言ったろ」
「分かってる。 私がいけなかった」
メアリーは母親のダイアンの血を継ぐ、数学に関して高い能力を持つ子供 "ギフテッド" でした。
もちろん、そんなメアリーの特別な才能を、フランクは深く理解していました。
けれど、フランクはメアリーを特別扱いせず、普通の学校に通う子供として育てたいと考えていました。 それは亡きダイアンの遺志でもあったのです。
ある日のこと、スクールバスで学校に向かう途中、上級生の男の子がメアリーのクラスメイトのジャスティンをわざと転ばせて笑い者にしていました。
「笑うなんてひどい!意地悪は許さない!」
一部始終を見ていたメアリーは怒り出し、4歳も年上の男の子に向かって本を振り上げ、殴りかかったのでした。
相手の子に怪我をさせたことで、再び学校に呼び出されたフランクは、今回のことも含め、デイビス校長からある提案をされます。
「おたくの子は特別だと聞きました。 うちの学校では手に余る才能だと…」
デイビス校長はギフテッド教育で有名なオークス校の校長が知り合いだと話しましたが、フランクは首を横に振りました。
「転校するのが普通だろうが、今回は例外として残りたい。 メアリーはここに残るべきだ」
フランクは校長からの提案を断り、このままメアリーを普通の学校に通わせたいという考えを伝えました。
メアリーを連れて自宅に戻ると、玄関前にひとりの女性が待っていました。 その女性はメアリーの祖母で、フランクとダイアンの母親イブリンでした。
メアリーにとっては初めて会うに等しい祖母イブリンでしたが、フランクとメアリーの居場所を突き止め、わざわざボストンから来たのには理由がありました。
それはメアリーに高い水準の教育を受けさせ、自分の娘ダイアンのように数学の才能を伸ばしてあげることでした。
数学者として高い能力を持っていたダイアンにも、引けを取らない潜在能力を秘めていたメアリー。
イブリンはメアリーの将来について、フランクにある提案をするのですが…。
《続きは是非本編をご覧下さい》
作品の裏話と個人的な感想 (-∀-)
監督はマーク・ウェブ。 「(500)日のサマー」(2009年)が映画監督としてのデビュー作品ですが、元々はミュージック・ビデオの監督として、多くの作品を手掛けて来た人物です。
日本のミュージシャンだと、B'zの「今夜月の見える丘で」のMVを撮ったのもウェブ監督です。
「ギフテッド」という言葉は "天賦の才がある" とか "並み外れた才能を有する" などの意味があります。 日本ではあまり聞き慣れない「ギフテッド教育」という言葉。 アメリカなどでは本作に出て来るメアリーのような子供の、幼少期からのギフテッド教育を進めるような、特別な学校も存在しています。
この映画はとにかく、映画好きの方に観てもらいたいの一言に尽きるのですが、全キャスト、端役に至るまで、素晴らしい演技を見せてくれています。
主役のフランクを演じたクリス・エヴァンスは、「アベンジャーズ・シリーズ」ではキャプテン・アメリカを演じている俳優ですが、この映画ではごく普通の男性を演じています。
芯の強さ、頭の良さと心根の優しい人柄などがフランクというキャラクターに表れているのですが、反面、自分の判断に対して絶対の自信が持てないというような面も垣間見えて、そういう人間臭い演技に好感が持てます。
もうひとりの主役、メアリーを演じたマッケンナ・グレイスは、撮影当時10歳。 末恐ろしい演技力で、将来メジャーな存在になり得る、強烈な子役です。
とにかくキュートな笑顔、大人顔負けの演技力を兼ね備えている現在15歳のマッケンナ。 彼女の今後の活躍に期待したいです。
キャストにはワタシの大好きな女優、オクタヴィア・スペンサーも出演していますが、今回のキャストで外せないのはフレッドという片目の猫です。
シーンごとによくフレッドが映るんですが、とても味のある佇まいの茶トラの猫です。
実はフレッドは本作の脚本家トム・フリンの飼い猫で、傷ついた動物が収容されている施設から引き取られてきた猫でした。
物語ではフランクもメアリーも、そしてフレッドもそうですが、それぞれが心に傷を持っている者同士が、ひとつの家族として描かれていて、フレッドが大切な家族の一員だということも優しく伝わってくる作品です。
物語はこの後、突然現れた祖母イブリンによって、思いもよらぬ方向へ急展開していきます。
フランクの姉ダイアンの遺志を継ぎ、普通の暮らしの中でメアリーを育てていきたいと思っているフランクと、特別な才能を持つ孫に高い水準の教育を受けさせ、その才能を開花させることがメアリーの幸せだと信じて疑わないイブリンとの、親子の争いに発展していきます。
幼い娘を遺して、なぜダイアンは死を選んだのか? メアリーとフランクは、ここからどんな人生の選択をするのか?
ヒューマンドラマは沢山観て来ましたが、この映画は非常に完成度が高いです。
いい映画が生まれるのには、監督やキャスト、スタッフたちの丁寧で完璧な仕事も重要ですが、ほんの少しの巡り合わせの奇跡も必要だと思います。
ウェブ監督じゃなければ、このような作品にはなっていませんし、マッケンナ・グレイスがこのタイミングで作品に出会え、メアリー役に選ばれたのも、少しの巡り合わせが起こした奇跡のようなものだと思います。
笑いあり、涙あり、気持ちが温かくなって、そしてまた涙が溢れてくる。
とてもシンプルなストーリーですが、観る者の心を揺さぶる極上のヒューマンドラマです。
是非、映画がお好きな方に観ていただきたいです。
【スタッフ】
監督…マーク・ウェブ
脚本…トム・フリン
撮影…スチュアート・ドライバーグ
音楽…ロブ・シモンセン
【キャスト】
フランク…クリス・エヴァンス
メアリー…マッケンナ・グレイス
ロバータ…オクタヴィア・スペンサー
イブリン…リンゼイ・ダンカン
ボニー…ジェニー・スレイト
デイビス校長…エリザベス・マーヴェル
グレッグ…グレン・プラマー
《2017年 / アメリカ / G》