へうげもの
くろがねが何度も読み返したマンガと言えばへうげもの。モーニングで連載していましたね。
趣味とはテイストのこと。この場合のテイストとは「味」の意味ではなく、「好み」の意味です。英語のテイストには「好み」の意味合いがありますが、日本語の「味」にはありませんよね。日本語には代わりに「趣味=好み=好き」転じて「数寄」という言葉があります。そして数寄から人はスタイルを生み出し、人生そのものを紡いでいく。数寄なくして人生なし。
このへうげものは古田織部が人生を紡いでいくその過程を描いていくもので、彼の先達である千利休も、名だたる戦国武将たちも、各々の数寄を紡いでいくのであります。
でも数寄って自然に出来上がっていくもんじゃないのですよね。数寄ってそれぞれの人生との格闘の結果。
例えば織部はグリーンが好きな人で、彼は好みの茶碗や食器を完全させるために鮮やかなグリーンを出すための探究を続けるわけですが、「グリーンが好き」だけでは彼の数寄は完成しない。
彼の数寄が出来上がるのは(あくまでこの物語のなかでの話で史実とは違いますが)、千利休によって彼が己を見つけた時以降なのですよね。
俺とは何者だ、何が起こっても変わらない俺の本質とは何か!という人生最大の問いに答えた瞬間ですね。
ライターというのはそれぞれの題材と合わせ鏡のような己の本質というものをさらけ出します。僕はエロの人なので、AVを見て掻き立てられる時、その掻き立てられる己とは何者か?という問いにぶつかります。
その己のあり方には普遍性があるか、単なる自分固有の性癖だけで作品をジャッジしてしまって良いのか、あーでもない、こーでもないと色々取捨選択の末に、ここは作品の魅力として伝えるべきものかな?というものをレビューとして書いています。
表現する人はみんなそうですよね。己とは何者か?
でも、それってそんなに難しく考えること無いんですよ。何かに魅了された経験があれば、人は自分を発見するきっかけが掴めるのだと思います。
表現する人に幸あれ、皆さんに良き出会いがあることを祈ります。