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#BornGlobalの真のキーパーソン──3年でインド有数のテックチームを組成したCTOの実録

「ペットは家族の一員」。A'ALDA(アルダ)のCTOを務めるShiv Whorraにとって、この言葉は単なる理想ではなく、日々の原動力となっています。

7歳の誕生日に初めて犬を飼ったことをきっかけに、Shivは子どもの頃から様々なペットに囲まれて育ち、深い愛情を育んできました。それ以来、ペットという存在は彼の人生に欠かせない存在となったのです。

銀製品小売チェーンや教育機関でキャリアを積んだ後、2020年にA'ALDAに参画。ペット産業への情熱を持つ創業者との出会いが、Shivの人生を大きく変えることになりました。

A'ALDAでCTOを務める彼は、獣医療業界にテクノロジーの風を吹き込むべく、日々奔走しています。インドでゼロから動物病院を立ち上げ、技術的な基盤を構築。獣医療の高い品質を維持しつつ、現地の文化に適応させる難しさにも真正面から向き合ってきました。 優秀な人材の確保にも苦心しましたが、志の高さとチームワークを重視した採用を続け、今ではA'ALDAならではの強固な開発体制を築き上げています。

ゼロから開発チームを作り上げたShivに、これまでの歩みと、エンジニア採用で大切にしていること。そして、医療データを活用し、ペットの健康管理に革新をもたらす「デジタル化」への取り組みなどを聞きました。

7歳の頃にもらったプレゼントで、私の未来は決まったのかもしれない

子どもの頃から、私はずっと動物に囲まれて暮らしてきました。犬だけではなく、ウサギ、鳥、ハムスター、魚、カメなど、様々なペットと一緒に。今でも覚えているのは、7歳の誕生日プレゼントで初めて犬を飼ったこと。今、考えてみればその出来事から、私の未来は決まっていたのかもしれません。

それまでは、家族やお手伝いさんが世話をしてくれていて、私は遊ぶだけでした。インドでは家事を手伝う人を雇うのは割と一般的で、犬の散歩や病院への連れ出しも、飼い主ではなくお手伝いさんがやることが多かったですね。

でも、犬を飼い始めてからは、私自身で世話をするようになりました。子供心に、ずっと「犬が欲しい」と思っていましたが、いざ飼ってみると、これ以上ない愛着が湧いてきたんです。私の家では、犬も家族の一員。人間の家族と何ら変わらない存在として、大切にしています。

今では、家で1匹の保護犬を飼っています。以前、路上でレスキューした子なんです。家の外には、もう2匹いる犬のために作ったシェルターもあります。ペットは、私の人生にとって欠かせない存在。一緒に過ごした時間はかけがえのない思い出です。

ただ、仕事としてペット業界に参入することは、私にとっては全く予期せぬ出来事でした。インドで動物関連の一般的な仕事といえば、かつては動物園の飼育員やトレーナーくらい。限られた選択肢しかなく、ペット業界に特別な思い入れがあったわけでもないんです。

ビジョンに心は震え、主力事業の原型も生まれた...たった一度の面接で

A'ALDAと出会ったきっかけは、いつも親身に相談に乗ってくれる友人で弁護士をやっている人間が、もともと(COOの)Ohhun Kwonと仕事をしていたことでした。Kwonはインドで人材を探していて、友人経由で「会ってみないか」と誘ってくれたんです。

正直、その段階では入社するつもりはありませんでしたよ。面接に臨んだのも、友人の顔を立てるつもりでしたから。ただ、「新しいことに挑戦したい、何か変化が欲しい」と漠然と考えていた私に、友人がチャンスを用意してくれた、という感じでしょうか。

初めて会ったKwonは、会社のビジョンを熱く語りました。面接というより、A'ALDAからのピッチを受けたのにも近かったかもしれません。その時点では、技術的な具体案や計画はなかったものの、ペット業界の課題について議論するうちに「保険のアイデア」なども生まれました。私からは「ペット保険のデジタル化を推進する」という進言もした記憶がありますね。

ただただ、彼と話す時間はエキサイティングだった。
何よりKwonが語るA'ALDAのビジョンが私の心を何度も震わせました。一緒に働くことで、動物のために世界をより良い場所にできる。そんな壮大な夢を、私は想像したこともなかったんです。

ITエンジニアとして自分のビジネスを経営し、ハイレベルなリーダシップ・コンサルティングも担ってきた自負はありますが、獣医でもない限り、インドで動物と関わる仕事を生きがいにするのは、困難だと思っていました。でも、Kwonは「あなたは動物のためにもっと大きなことができる」と言うんです。その情熱に、私は心を打たれました。

振り返ってみると、私がA'ALDAに共感したポイントは、主に3つです。1つ目は、A'ALDAが新しいアイデアにも非常にオープンだったこと。2つ目は、事業の背景がしっかりとリサーチされ、計画されていたこと。3つ目は、動物と共に働ける機会があると感じられたこと。

Kwonは、インドのペット市場について詳しく説明してくれました。彼が話す内容は、ランダムなアイデアの寄せ集めではなく、きちんとした計画に基づいていると思えました。話し合ううちに、今後の事業の方向性についてもどんどんアイデアが生まれ、彼自身もワクワクしている様子でした。オープンで柔軟な姿勢に、私は「この会社なら自分のアイデアも実現できる」と思ったんです。型にはまらず、自分なりのやり方で貢献できる。

そして何より、A'ALDAのメンバーが持つ、動物への純粋な愛情を感じました。動物のために働ける喜びを、彼らとなら共有できそうだと。ここまで理想的な仕事に出会えるチャンスは、もう二度と巡ってこないかもしれない。

……たった一度の面談で、私の心は決まりました。給与などの条件は二の次、ビジョンに共感してしまったんですね。

動物と共に働き、ペットの幸せのために貢献できる。それが、A'ALDAに参画した最大の理由だったんです。もちろん、A'ALDAが単に動物病院を経営する企業ではなく、長期的なビジョンに基づき、もっと大きな可能性を秘めていることを直感したのかもしれません。

その当初は、現在、私たちの未来をつくる事業であるSaaS事業、直観的でわかりやすい電子カルテ・会計システムを作る計画すらありませんでした。それが面談の中で、自然と「じゃあデジタル化したらどうだろう?」という話になり、“Pet Tech”を事業にするべく、あっという間にプロジェクトがスタートしたのです。

インドで得たポジティブなフィードバック。さぁ、日本展開だ!

テクノロジーと獣医療を掛け合わせるというチャレンジには、大きな難しさがありました。なぜなら、日本でもインドでも前例のない取り組みであり、それをゼロから始めなければならなかったからです。過去の事例も、お手本もない状況から、まさに開拓です。

そもそも、私がA'ALDAに加わった当時、インドにはオフィスも病院も何もない状態でした。今、私の最初の仕事を思い出しましたが、アメリカの獣医療の権威であるTheresa W. Fossum先生と、CEOのMasa(奥田昌道)がインドに来るというので、彼らを案内するというものでしたね。庭に椅子を並べて座り、これからインド、アジアの獣医療をどうするかを話し合いました。

そこからは、病院スタッフの採用にも着手しましたね。人材紹介会社に頼る余裕もないので、自分で人を探して声をかけ、面接を繰り返す毎日でした。今はCTOという肩書きですが、1年目は起業家のような心で、とにかく出来ることは何でもやる、そんなマインドセットだったことを記憶しています。

採用の面接はもちろん、マーケティング、そしてシステム構築まで。それこそ、通話管理システムの設定も手探りでやりましたね。準備に2〜3ヶ月かかったので、電子カルテのプロジェクトが本格的に動き出したのは、2020年の9月か10月頃だったと思います。

当初、技術チームを社内で持たず、外部のベンダーに頼っていました。インド国内向けの小さなシステムを作るだけという想定だったので、社内でゼロから開発するよりも、ベンダーにお願いする方が早い、そう考えていたのです。それも私一人で担当し、フィードバックの収集から、製品の要件定義、計画立案まで、すべてこなしていました。 

私自身、病院管理システムの開発経験はありません。ビジネス面からシステムのあるべき姿を描き、医師の運用実態を理解することから始め2020年4月にプロジェクトを開始し、10月にリリース。初期バージョンは機能も少なかったのですがそこから改善を重ね、2021年4月には会計処理の仕組みも盛り込みました。

インド国内で1〜2年ほど使ってもらううちに、手応えを感じるようになりました。獣医師やスタッフ、そしてユーザーからのポジティブなフィードバックが増えてきたのです。そこで、「日本でも使えるようにローカライズしよう」という話になったのです。

もちろん、日本向けのローカライゼーションは簡単ではありません。1年以上かけて、現地スタッフとも議論を重ねながら、手直しを進めたのはもちろん、このシステムをさらに進化させ、他の動物病院にも提供できるプラットフォームにしようと考えるようになりました。そのために必要なのが、自前の開発チームだったのです。 そこで2021年12月、私たちは社内で開発チームをつくろう、という意思決定を下しました。

3ヶ月で人もチームも大きく進化できる、良いマインドセットであれば

創業当初のチーム作りは、大変な苦労の連続でした。

無名のスタートアップで、オフィスも設備も誇るものはありません。一緒に働いてくれるシニアエンジニアを見つけるのは至難の業でした。面接しても、ほぼ全滅に近い状態。そこで私たちは、新卒などフレッシュなジュニアエンジニアを採用し、一から育てていくことに舵を切り、徐々にチームを作り上げていったんです。 

インドのIT業界は、エンジニアの転職が非常に多いという現状があります。市場の流動性が高いので、その中でチームを維持していくには、シニア層の採用と定着が欠かせません。とはいえ、まずは新卒を軸にしたチーム作りから始めました。 

当初の開発チームは18名ほどで、エンジニアは7〜8名。全員が新卒で、スキルはこれからという状態でした。彼らを育てながら、徐々にシニアエンジニアの採用も成功していきました。 外部に委託していた開発も、ゆっくりと内製化に移行。コアメンバーが軌道に乗ると、さらに経験者が増え、開発力は底上げされ、理想のチームが見えてきたのです。
 
採用基準で重視したのは、何よりもコアとなる技術力......と思われるかもしれませんが、それは最低条件。私が面接で特に見ているのは、候補者の姿勢や人柄ですね。技術力は2次面接までで確認するので最終面接では、より人間的な部分を見ています。 

例えば、学ぶ意欲や成長意欲。チームワークへの姿勢、前職での仕事ぶりや、同僚との関係性。そして、仕事への取り組み方。ペットが好きかどうかも当然大事なんですが、 「新しいことに挑戦したい」「スキルを磨きたい」といった向上心、ピュアな仕事への情熱を持つ人を求め続けたんです。

面接だけでは判断しづらい部分もありますが、質問の仕方を工夫し、候補者の本質を見抜けるよう、ひたすらPDCAを回しましたね。

私のポリシーとして、3ヶ月ごとのレベルアップを意識しています。
今は難しく感じる課題も、3ヶ月後には簡単に解決できるようになる。そうやって常に進化を続けることが、会社の成長につながると考えているのです。

つい3ヶ月前は大変だと感じていた問題も、今振り返ればたいしたことはなかったと。kwonとの対話でも、そうしたマインドセットの重要性を確認し合うんですよ。だからこそ学び続ける姿勢を忘れないよう、自分自身にも問いかけ続けています。高い目標に向かって邁進する。その姿勢こそが、A’ALDAの原動力なのだと思います。

こういうサイクルを会社として繰り返せた結果、テックチームとA’ALDA、そして獣医療業界の未来は明るいものとなりました。わずか4〜5年でA’ALDAが成し遂げた成長ぶりは、その期待の表れだと言えるでしょう。数名ではじまった会社が今では世界で700人、インドだけでも100人以上の仲間がいます。それだけ私たちのビジョンに共感してくれる人が多いということです。

日本の動物病院はさらに前進する、デジタル化と共に

日本の動物病院の現状について、全体的には素晴らしいと思います。小さな病院でも、隅々まで整理整頓が行き届いていて、物事を体系的に管理する姿勢には感銘を受けます。一方で、デジタル化への対応は遅れていると感じています。

例えば、ある病院では患者の記録を壁一面のファイルやフォルダに保管していました。これでは、必要な情報を探したり検索したりするのが非常に難しい。やはりデジタル化の推進が、今後の課題だと思います。

デジタル化のメリットは2つあります。一つは、業務の効率化です。顧客との関係性を管理しやすくなり、患者の記録をすぐに引き出せるようになる。予約の管理も簡単になります。

もう一つは、顧客体験の向上です。今は電話で診療の予約を取るという病院が多いと思いますが、デジタル化が進めばワンクリックで予約が完了する。これは飼い主側も病院側も楽ですよね?将来的には、病院から顧客に直接、医療記録を共有できるようにもなるでしょう。

私たちのシステムを導入した病院では、すでにそうした変化が表れ始めています。予約のリマインドメールなどを通じて、顧客とのタッチポイントを効果的に管理できるようになりました。来院時には、新しい電子カルテシステムですぐに必要な記録を引き出せる。さらに、関連する過去の記録も瞬時に検索できるのです。

つまり、日本の動物病院がさらに前進するためのカギは、デジタル化にあると言えるでしょう。大切なのは、病院同士が自発的にデジタル化について議論を交わし、互いに意識を高め合っていくこと。私たち企業が一方的に進めるのではなく、業界内部から変革の機運が高まっていくことが理想だと考えています。

最後に、A'ALDAで共に働く仲間たち、そしてこれから仲間になる人たちへ。私からのメッセージを送ります。

どんな不安があったとしても、A'ALDAのビジョンを信じて前に進んでいきましょう。私たちの目標は、ペットの幸せな世界を実現すること。一緒に働き、一丸となって、この理想に向かって努力を重ねていく。それが私の願いです。

“Let's work together to improve the pets life!”

A'ALDAのカルチャーがわかるスライドはこちら
全方位で、新たな仲間との出会いを心待ちにしています!

(文・構成/長谷川賢人)

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