『RED』、映画より小説の方が興奮する説。
上半期に読んだ中で最も興奮した小説といえば島本理生の『RED』であるが、上半期に観た映画の中で最も気分が塞いだ映画もまた『RED』なのである。
まず一言。小説の『RED』はいい。とてもいい。そう、これは不倫とセクのガールズドリーム小説。
主人公は主婦の塔子。夫と幼稚園児の娘、姑と一緒に暮らしている主婦。夫はマザコン気味、姑はイジワルでないけれど、それでも一緒に暮らすというだけでなかなか息苦しいもの。
そんなとき学生時代に恋した年上の男、鞍田と再会し、彼の強引なアプローチにより二人は濃密な関係へと堕ちていくーー
なんといっても、塔子と鞍田の愛の情事、その様子がとても官能的に書かれているのがこの『RED』の醍醐味である。
私は島本理生を読むのはこれが初めてだったもので、それはそれはびっくりした。島本理生って地味で素朴な感じで、図書館の司書みたいな、そんな印象だったから。脳内どうなってるんだと、どんだけ経験積んできたらこんな官能的なシーンを描けるのかと、度肝を抜かれてしまった。お主、さてはやることやってますな、ははぁ。すっかり島本理生のファンである。
そして先日、この映画がNetflixで配信されていることを知るやいなやさっそく鑑賞。
主演は夏帆、妻夫木聡。
期待が膨らむ。さぁ、どれだけ興奮させてくれるんだい~~??
・・・だがおかしい。
何の脈絡もない超強引で濃厚なキスという、女子ならだれもが一度は夢見るシチュエーションにもかかわらず、イマイチ気分が高揚しない。
終始流れる悲壮感と不吉さが漂うバックミュージック、役柄のせいか、やつれて老けて見える夏帆と妻夫木の顔、暗い画面。
良きところで吹雪の中を車で走る無言の二人のシーンが挟まれてきて「はて・・・?」と興味が失せる。小説読んでるので「ああ、あのへんね。」と察しはつくが、あまりにも険悪なムードのじめ~っとした映像が長いので思わず早送りをしてしまった。
肝心の濃厚シーンも、なんだかやけに妻夫木がブッチュブッチュしすぎて、こんだけのイケメンが濡れ場を演じてもあまり美しくはならないんだなぁ、改めてエロメンってすげぇんだなぁと、一徹のすごさを思い知った。
私がエロメンのすごさに感服しているその間にも、映画の中では「鞍田さん・・・」「もっと大きな声で・・!」「鞍田さん!」「もっと・・・!!」みたいな凍り付くような掛け合いがあり、(小説にこのシーンがあったかどうかは思い出せないが、映像化すると全然リアリティがなくて、全然ロマンチックじゃない!)、観ていて噴き出してしまった。
性的興奮 < 悲壮感。
のんきにエクスタシーなんか感じさせてくれない闇映画。
それで一番納得いかないのが、私が小説で一番興奮した場面がカットされていたことだ。
強引に塔子を連れ出しての鞍田のセリフ、
「どうしてほしい?」
が一言も出てこなかったのだ!!
そもそもこの映画、小説の醍醐味である強引な鞍田に塔子が無理やり色々されちゃうみたいな、とにかく色々なドキドキシーンが削られていたのである!
そしてそしてもっと言うと、塔子にちょっかいを出してくる会社の同僚の小鷹、絶対に柄本じゃねぇ!!小鷹は絶対にもっとイケメンだ!なんなら間宮と逆の方がイメージとしてはしっくりくる。
最後に、ビックサプライズ。結末が小説と全く違う。映画の結末は嫌いではない。でもこの結末により、わりとさわやかに終わっていた小説が、絶望、あきらめ、罪などの負のイメージが増し増しのストーリーに変換された。
もはや官能というジャンルではない。
最後は後味の悪さしか残らねぇ。私の性的興奮はどこへ・・・?
ということで、映画「RED」が楽しめなかった人には、断然小説をお勧めしたい!!