自動車メーカーによる「性能試験の不正」 古いルールは呪いになる
昨年末からのダイハツ、豊田自動織機の不正から自動車産業は減産が常態化しています。
5月以降、ダイハツの生産も順次再開というところで、トヨタのプリウスが大規模リコールとなり、冷や水を浴びせられました。
生産が回復しません。
そのプリウスの生産再開が6月半ばという発表があったすぐ後に、今度はトヨタ、マツダ、スズキ、ホンダ、ヤマハと複数のメーカーで性能試験に不正があったとして、国土交通省は出荷・販売の停止を指示しました。結果的に生産停止ということになります。
自動車メーカーに対して「またか」という落胆の気持ちと同時に、これだけのメーカーが違反を起こしているのは法令自体に無理があるのではないかという疑念が湧いてきます。
実際、法令より厳しい条件で行なったテストを、国土交通省がNGとして対応している案件もあるとのこと。
トヨタの豊田章男会長も記者会見で指摘していましたし、日経新聞にもそのあたりのことが報道されていました。
ルールの文言と異なっているからダメ!という狭い了見ではないことを祈るばかりですが、国として日本の自動車産業をどうするのかといったビジョンがあるのか甚だ疑問です。
日本国内での自動車生産はすでに30%程度。
そして少子高齢化で国内需要が減少するのは目に見えています。
グローバルでは自動車産業は新興国を中心に成長分野ですが、日本国内では斜陽産業になりつつあります。
自動車生産を支える下請け製造業が耐えきれなくなっているように映ります。
金曜日も休む会社も出始めています。これが生産性向上によるものであれば喜ばしいことですが、単に注文減・生産減で致し方なく休みとしているにすぎません。
製造業は多額の設備投資が必要です。
長期にわたって生産の見込みがあり、元が取れなければ破綻してしまいます。
これではサプライチェーンの崩壊につながるとともに、新規参入の芽も出てきません。
国は近年、半導体に力を入れていますが、最終製品に乗らなければ半導体も宝の持ち腐れです。
自動車は半導体と同じく、モノとしての機能的価値のみならず、国の安全保障にも直結するアイテムだと捉える必要があります。
今一度、国と国産自動車メーカーは将来に向けて自動車生産をどうしていくのか考えて頂きたいと思いました。
よく言われることですが、ルールは目的を達成するための手段であるべきです。適宜、その目的を見直さなければ、ルールだから守るべきだ、と形骸化し、ダイナミックな世の中の変化で足を引っ張る呪いのような存在になってしまいます。ブラック校則と同じです。
安全を確保するとともに、国内自動車産業の成長戦略を願うばかりです。