災害義援金は本当に役立っているのか
2024年1月1日、能登半島地方を震源とする最大震度7の巨大地震が発生しました。この地震による死者は200人以上、全壊/半壊となった家屋は1000棟以上となり、石川県をはじめとする自治体は甚大な被害を被りました。この地震を受けて、日本赤十字社をはじめとする各団体の義援金募集が始まり、各メディアでも独自の募金窓口を用意しています。
ここでふと「このような義援金って最終的にはどうなっているんだろう?本当に被災者の役に立っているのだろうか?」という疑問が湧いてきました。そこで今回、この義援金がどのように使われているのか、また、実際にどの程度被災者の役に立っているのかを調べてみました。
義援金とは
義援金の定義は以下の通りです。
つまり、義援金に寄付した場合は被災者に全額直接渡るため、団体の中抜きを気にすることなく安心して募金することができます。ただし、デメリットとしては被災者にお金が行き渡るまで時間がかかること、金銭以外での支援(物資や人的支援など)には貢献できないことが挙げられます。特に後者は災害初動期で最も必要とされる部分であるため、災害支援全体を考えた場合は義援金以外での支援も必要になってきます。
とは言え、義援金も大事な支援になることには変わりないため、募金するだけで充分被災者支援に繋がります。
日本赤十字社とは
ここで、義援金の寄付先として最も名前が挙がるのがこの「日本赤十字社」でしょう。他の募金窓口でも「お寄せいただいた義援金は日本赤十字社を通して~」といったようにこの団体を経由することが多いです。
日本赤十字社のホームページを見ると、以下のように紹介されています。
日本赤十字社では義援金を含めた災害救護だけでなく国際活動や献血など幅広い活動を行っています。ちなみに活動費は大半を寄付で賄っているので特定の自治体や有力団体との癒着もありません。彼らの活動に賛同される方は、以下のサイトから義援金以外の寄付をしてみてもいいかもしれません。
義援金の使われ方
話を義援金に戻します。先ほど説明した通り、義援金は被災者に直接渡るものになります。それではどのようにして彼らの手元に渡るのでしょうか。
日本赤十字社などに集まった義援金は、被災した都道府県に設置される「義援金配分委員会」に送金されます。この際に各都道府県の被害状況を鑑みて、どの自治体にどれだけ送金するかを日本赤十字社側で決めます。そのため、自身の故郷など特定の自治体を支援したいという想いがあるのであれば、その自治体に直接寄付する方が良いかもしれません。
各都道府県に送金された義援金は、義援金配分委員会で決められた配分基準に基づき、管轄下の市町村に送金されたのちに被災者に支給されます。
ちなみに被災者に支給される義援金は非課税のため、本当に全額被災者に活用してもらえます。
東日本大震災での例
それでは具体的にいくら被災者の手に渡っているのでしょうか。一例として、東日本大震災の被災者に対して宮城県が配った義援金の総額を表1にまとめました。
これを見ると、被災して苦しんでいる方々に対してまとまった金額が行き渡っていることが分かります。しかし、一方で被災者が実際にかかった住宅の新築費用が平均2,500万円だったことを考えると、住家被害世帯への配分額は足りない印象を受けます。もちろん義援金は被害補償が主目的ではなく、他の支援もあるので一概には言えませんが、元の住宅のローンを払い続けなければならないことを考えるとさらなる被災者支援が必要な部分なのかもしれません。
ちなみに、東日本大震災での義援金は約11年の間に全14回に分けて配られており、その度に被災者が窓口に申請する手間が生じていました。今後は、義援金を負荷なく受け取れる仕組みづくり(マイナンバーやキャッシュレス活用など)も重要になってくるでしょう。
まとめ
以上より、我々が義援金として寄付したお金は100%被災者の手に渡る一方で、損害補償の観点では不十分であることが示唆されました。義援金は被災者への応援や見舞金といった位置づけなので問題はないのですが、「被災者支援に役立っているか」という問いに対しては「不十分な点もある」と言わざるを得ないでしょう。
被災者に対してより直接的な支援をしたいのであれば、被災地で活動するボランティア団体に寄付したり実際にボランティア活動に参加する等の選択肢も良いかもしれません。
後は、仮設住宅や融資などの大掛かりな支援は「行政」が担うので、彼らの対応を監視することも重要になります。災害時に首長や関連政党がどのような対応をとったかを把握しておき、次の選挙で投票する際の判断材料にすることなども間接的とはいえ立派な「支援活動」になります。
義援金は直接被災者の手に渡る点において人気の支援方法ですが、そこで思考停止せず、本当に被災者が必要としている支援は何かを考え、義援金寄付以外の支援を検討することも大事でしょう。