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逆入力遮断クラッチ フリータイプ ~中華製スマートカーテンを分解~

中華製スマートカーテンを分解したら,面白い機構を見つけたので,紹介です.

紹介する機構について

 今回紹介する機構は,一部では逆入力遮断クラッチ フリータイプなどと呼ばれているらしいです.要点は以下の通りです.

  • 入力軸からの回転は伝達し,出力軸からの回転は入力軸に伝えない

  • 両方向の回転に対応

  • ソレノイドなどは使わず,モータのみで実現可能

  • 入力軸と出力軸は同軸

 すなわち,モータからは出力軸を回せるが,手で出力軸を回そうとするときはモータが回転しないという機構です.しかも両方向に対応しています.似た例としては以下の機構が挙げられます.

分解した商品について

 下記の商品を購入し,分解しました.
シャッターモーター付きスマート電気カーテン,Tuya,wifi,zigbee,rfリモート,22.5cmサイズ,アプリケーション制御,alexa,Googleアシスタント,smartThings

仕組み

 分解した入力側と出力側を図1に示します.簡単に説明すると,入力軸が回転時はボールが外側に移動し,出力側の溝にハマることで,動力を伝達する.反対に,出力軸が回転時はボールが内側にいるので,入力側に動力が伝わらないといった機構です.

図1 分解した機構(左:入力側,右:出力側)

 写真ではわかりにくいので,CADにしたものを図2に示します.赤が入力軸,青が出力軸です.また,緑が固定部品です.
 ポイントは,球体が磁石でできており,さらに緑の固定部品には鉄が埋め込まれている点にあります.これにより,球体は固定部品上を転がるようになります.すると,入力軸が回転時は,赤の部品に押されることで,自然と球体は外側に移動します.遠心力に頼ることがないので,いかなる速度域でも完全に機能します.また,出力軸が回転時には,球体を固定部品に繋ぎ止め,振動や重力で意図せず球体が外側に移動するのを防ぐ役割も担っています.
 CADをThingiverseに公開しました.併せてご覧ください.なお,寸法はできるだけ実物に近づけてあります.
スマートカーテンの逆入力遮断クラッチ(フリータイプ)| Reverse input shut-off clutch (free type) used Smart curtain

図2 機構を再現したCAD

追加調査1: 特許が出ていないか調べてみた

 間違いなく何かしら出ていると思うのですが,ぱっと調べたところ,見つかりませんでした.有識者の方,ご存知でしたらご教示いただきたいです.

追加調査2: 製品化されていないか調べてみた

 似たような挙動をする機構を調べてみたところ,「逆入力遮断クラッチ フリータイプ」や「トルクダイオード フリータイプ」と呼ばれていることがわかりました.「フリータイプ」の他に「ロックタイプ」があり,
・「フリータイプ」:出力軸からの動力を空転させることで,入力軸に伝えない
・「ロックタイプ」:出力軸からの回転をロックすることで,入力軸に伝えない(ウォームギヤ的な)
という違いがあるようです.

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