【日記】二十歳まで飲酒を縛ったので、私は偉い人間なんだって言いたい。
私は先日、人生の節目とも言える「二十歳の誕生日」を迎えた。
成人年齢が2022年から20歳から18歳に引き下げられたため、既に成人ではあった。しかし18歳になっても成人の実感はない。幼少期から抱いてきた「20歳=成人」というステレオタイプが染み付いているため、「飲酒・喫煙が解禁される20歳こそが成人だ」という考えを持っている同世代がほとんどを占めているだろう。
ところで、私には1つ譲れないプライドがあった。
「絶対に未成年飲酒をしない」
ということである。
プライドというか、これは単なる法令遵守だ。小学校から高校に至るまで保険の教科書、あるいは総合的な学習の時間において耳にタコができるほど再三教育されてきたことであろう。飲酒防止教育は、国の教育機関が「日本国民の常識」として擦り込まんとしている重要教育事項なのだ。
だが、実態はどうだろうか。大学に入学して2年、未成年飲酒の話を聞くことや、実際にその場面に出くわすことが多々あった。
いざ保護者が一切関与しない同年代の食事会に赴くと、いけしゃあしゃあと未成年飲酒が行われている。私は全く陽キャの部類ではないが、サークルやら学部の知り合いやらで食事に行くことはある。やはり行われているのだ、未成年飲酒が。
最初は「まぁそんなやつもいるか」くらいの認識でいたが、徐々に交友関係が広がるにつれて、その未成年飲酒率の高さに目を疑った。地元に帰省した際に行った幼馴染の同級生10人程度の食事に至っては、未成年飲酒者が8人という始末である。皆さんも実体験としてあるのではないか。一度も未成年飲酒が行われていない飲み会に立ち会ったことがない、なんて人は少数派ではないだろうか。
これは私の周りがたまたまそうだっただけかもしれない。それだとしても、私の前の現実はこのあり様であった。
友人や知り合いが未成年飲酒をしたからと言って、そいつを酷く軽蔑したり、縁を切ったりはしない。私はそれができるほど薄情な人間ではないし、交友関係を切った方がデメリットが大きい。あと普通に友達だから。
けれども、そんな私にも納得できないことがある。
飲み会で酒を断るとこう言われるのだ。
「えぇ~~!真面目だね!」と。
まじめ……真面目?法律遵守を……真面目扱い?冗談ではない。
この場合の「真面目だね」には、称賛の意を遥かに凌ぐ「珍しいね」のニュアンスが含まれる。法律を遵守した私が少数派扱いされているのである。繰り返す。冗談ではない。本来、「未成年飲酒をしない私」というのは称賛の対象ではなく、常識の、一般の存在であることが理想なのだ。
……前置きが冗長になって申し訳ない。
私がこの記事で何がしたいかというと、「二十歳までの禁酒を敢行した私がいかに優れた人間か証明すること」だ!
おかしい、完全についさっき上の段落で言った「常識の存在」という内容と速攻矛盾している。常識とは人間の優劣における0、つまりはスタート位置であり、本来これを遵守したからと言って賞賛の対象にはならない。強盗犯が罰せられるからと言って、強盗をしない者がいちいち賞賛されることはないのと同じように。
だが、好奇の目を向けられた私の怒りは、自らを「常識の存在」に留めて置くことに耐えられなかったのだ。嗚呼、何が成人か、何が大人か!
これは二十歳になる前の私(執筆開始2024/9/17)による、未成年最期のわるあがきである。
「えぇ~~!真面目だね!」の解釈が、捻くれ者の曲解であることを祈る。
20歳未満の者の飲酒の禁止に関する法律
まずこの話の前提条件として、日本の法律における未成年飲酒の禁止について条文を引用する。
超概略すると、二十歳未満は酒のむな、親は監督責任、提供した店はぶっ潰す。未成年飲酒をした時に罰せられるのは飲んだ本人よりその周りである、というのはよく聞く話である。告発すれば今すぐ営業停止に追い込める飲食店は星の数ほどあるだろうが、ここでは言及は控えることにする。
この記事の目的は暴露系YouTuberの真似事ではなく、あくまで私がいかに優れた人間であるかについて証明することである(自己中心的極まりない)。
法治国家ニッポンが法律で未成年飲酒が禁じていることを確認したところで、私が優れた人間であることを示す指標を考える。この場合、希少性が高ければ優秀と言える要素になるのではないだろうか。
では次に、厚生労働省のデータから、「未成年飲酒を行う人の割合」について見る。
未成年飲酒の割合
アルコール関連問題について言及している厚生労働省のHPを見ると、中学生、高校生における未成年飲酒をしたことがある人間の割合について、以下のような記述が見られた。
(アカデミーに属する人間として先に断っておくと、これは二次情報にあたる。しかも引用元の一次情報(上記33にあたる)について確認すると、「尾崎米厚,簑輪眞澄,鈴木健二,和田清.中高生の飲酒行動に関する全国調査.日本公衆衛生学会雑誌 46(10): 883-893, 1999」とのことなので、このデータが平成8年という古いデータであることに注意する必要がある。)
平成8年のデータではあるが、高校3年生の時点で男子51.5%、女子35.9%と高い数値が見られる。
うーん、もう少し新しいデータが欲しい。さらに同HPで調査すると、次のようなデータも見られた。
……ここまで引用しておいて情けないが、このデータの母集団は全国規模ではなく、ある学校の1学年に対するアンケートであった。このデータを以て世間一般の傾向を示すことはできない。平成18年に実施したものである、ということだけが、先の資料より優れている点ではあるが。
本記事は学術論文ではないため、あくまで未成年の集団における未成年飲酒率の参考としてほしいが、それでも飲酒経験者の割合が高く出ていることには相違ない。
厚労省HPから離れて論文を調査すると、次のようなデータも見つかった。
A県の3大学の大学1年生から4年生1,122名を対象に,無記名自記式質問紙による集合調査を行ったデータとのこと。今までは中学と高校におけるデータであったが、これは大学生を対象としたものである。自分の優位性を証明するには持って来いの資料だ。
その飲酒実態としては、59.2%、おおよそ6割とのこと。調査年も平成28年とのことで、より新しいデータである。
ただ、少数派であることに優位性を見出そうとしたところ、どのデータを見ても非飲酒者がおおよそ40%~50%未満という絶妙な割合だったため、思ったより優秀さの証明として頼りない気がする。1つ目のデータが全国規模であり、その半数以上が飲酒しているということを鑑みると、下にいる人間の多さを感じられないこともないが。多少の優越感を得ながらも、割合上の数値的なインパクトには欠けてしまった。
というか絶対もっと飲んでる人いるでしょう。未成年飲酒erは、あくまでもその行為がイリーガルと分かった上で飲んでいる。データとして公表されるともなればひた隠しにする者の方が多いに決まっている。
さぁ、自分からデータを持ち出しておきながら嘘だと喚くアカデミーにそぐわぬ態度が露見したところで、「優秀さ」にもう一押し加えたい。
しかし、より新しい資料からデータを探そうにも、信頼性の高い情報源による調査は見つからなかった。直近の学術誌を探せばあるのかもしれないが、この内容だと徒労に終わる可能性が高い。
ならどうすべきか……。
データから離れ、思想的な角度から攻めていこう。
仏教における飲酒の禁止
数値から優位性を示すと大方上位4割という戦績だったため、思想的観点から非飲酒者の優位性を検証して行こう。他者との比較から一個人の優等性に焦点を変える。ただし、未成年飲酒はかなり現代的な概念であるため、これから触れる思想には「未成年」の指定はないことに注意する。
飲酒を禁じる思想として、身近なもので言うと仏教が挙げられる。仏典『スッタニパータ』において、ブッダは次のように述べている。
飲酒をメタクソに卑下している。酒を飲んだ者は正気を失い、過ちを犯すとのことだ。またこの後、ブッダの弟子が悪酔いしてゲロ吐いたあげく、師に足を向けて寝た、という話が説かれる。なんとなく、未成年飲酒をしたまま閉店間際までトイレから出てこなかった先輩を思い出した。サークルに入りたての新入生にド派手な醜態を晒していたと書き出せば、同じことをしようとはまず思わないだろう。
五戒の1つに不飲酒戒が含まれる通り、仏教における禁酒は非常に重要なものである。不飲酒戒を守ることで、心の乱れを防ぎ、倫理的な行動を維持し、社会的な調和を生んで悟りへの道を開くことができるのだ。
「高次の精神」を持った者になれるということだ。これは「優秀な人間」と称すよりも神々しい。つまり飲酒を我慢した私は、未成年飲酒者とは異なる黄金の精神を持っていると言っても過言ではない。
ちなみに、イスラム教の禁酒に関しても「飲酒すると理性がなくなるから」という似た理由付けがされている。両者の違いとしては、仏教が悟りの道に至る精神的な修行として初期から示されている一方、イスラム教は信者が礼拝を忘れたり暴力沙汰を起こしたために後から禁止されたものという点だ。最初は禁止されていなかった上、天国には酒の川が流れていて飲み放題らしい。なんじゃそりゃ
今回の議題として例示するなら、仏教の方が適切であろう。
結論
収集したデータと資料から得た情報を元に、20歳になるまで飲酒を制限した私を形容するならば、それは
「同年代の上位40%に位置する高次の精神を持った人間」
と言うことができる!
うーん、若干40%が足を引っ張っている上、仏教的観点から見た場合という前提条件が付くため、当初想定していたよりもインパクトに欠けてしまった。比較対象として直近3年くらいのデータを参照できるように尽力したが、思ったよりインターネッツにも転がっていないものである。学術雑誌とか漁ったら出てくるのだろうか。
まぁ何にせよ、かなり現実的な数値を以った証明結果なのだろう。体感としては上位20%くらいには入っていそうだと思う物であるが……。経験上、サークルだの友人との食事よりも、Twitterなどの知り合いで構成されたオフ会の方が未成年飲酒に対する意識が高かった気がする。どのみち、いかなる場においても飲酒を強制されることはなかったので、私はかなり恵まれている方なのだろう。
こんなクソみたいな記事を書いている間に、私も二十歳を迎えてしまった。筋金入りの禁酒プライドを持っていたので、私が生まれたという午前3時まで飲酒を我慢し、実際に生を受けてから20年が過ぎたところで、ようやく成人の訪れを実感したのである。やはり20年という時間をかけた挑戦を達成した時は、晴れ晴れとした気分になるものだ。視界の隅に「『アチーブメント:二十歳までの禁酒』を達成しました。」というバナーが出た気さえする。
……午前3時。ド深夜にお腹を痛めて生んでくれた親に感謝しなければと思った。今度京の漬物でも送ってあげようかな。
その日は友人と遊んでいたので、カラオケに行ったついでに初飲酒。ほろよいと氷結という弱めのチョイスで少しずつ飲んだため、特に強烈なアルコール感や酔いを感じることはなかった。まぁ酒に関してはこれから詳しくなっていくことであろう。別に酒が嫌いだったわけではないのですよ。
誕生日を祝っていただいたフォロワーの方々、本当にありがとうございました。また、こんな何の学びもない浅薄な文章を読んでくれた方々もありがとうございます。今回は結局、飲み会の時に酒の話に乗り切れず悶々としていた私のささやかな抵抗だったわけですが、【日記】と書かれた記事ではこういった趣味のゲームとは何の関係もないことを書き駄弁ります。お暇な時間があれば、適当に読み流してくださると嬉しいです。
次回の記事は、9/28,29に開催される東京ゲームショウのレポートです。主にエンドフィールド、ポッピュコム等の鷹ゲーを中心に、あわよくばモンハンワイルズも触ってこれたら、なんて画策しております。旅行記要素もあるかもしれません。
どこかリアルでお会いする機会があれば、一杯よろしくお願いします。
Cheers!