悲しくて泣いておるのです

遠い昔,まだ私も姉も実家にいて団欒の食卓を囲み,幸せな夕食を取っているとき,確かテレビには所ジョージの笑ってこらえてが流れていたのだと思う.

私の姉は中学の三年間は吹奏楽部に所属していてホルンを吹いていた.
今では全く考えられないほど細々とした体つきで運動なぞ微塵もしなんというような人だったように思っていた.(姉は高校の時にソフトボール部に所属し見るも健康的な体躯になった)

この時はだから姉の好みに合わせてというかいわゆる強豪校に密着,コンクールまでの道のりをカメラが追うというような趣旨の番組を放送していた.
その吹奏楽部かマーチングバンドか今となっては詳細には覚えていないけれど,とにかく今でも忘れられないワンシーンがある.

ある一人の生徒が何度も同じミスをしてしまい,その度に顧問の先生が全体を止めてその生徒を名指しにする.
そのうちに,その女生徒は泣きだしてしまう.

「どうして泣いてるんや.言うてみい」
「○○は悲しくて泣いておるのです」

悲しくて泣いておるのです.

私はそのやりとりが今でも忘れられない.

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