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酒粕(さけかす)について
日本酒の、仕込み終了後の「もろみ(醪)」を絞った時に残る固形物の事。
酒粕の量は、酒米を醸造した時の重量比で約25%程。
「かす」と言うと、あまり良いイメージがないので、
「お神酒板(おみきいた)」と呼ぶ方も、いらっしゃるそうです。
江戸時代には、
「手握り酒」→手で握れるお酒という意味
「酒骨(さけぼね)」 → 魚も三枚に下ろすと残るのは骨だから、
酒を搾ったあとに残るものという意味合い
等、粋な呼び方をされていたとも。
ちなみに、味醂を造る時に残るものは、「こぼれ梅」と呼ばれています。
こちらも、粋ですね。
発酵食品ブームの近年。
酒粕も、そのひとつとして、豊富に含まれる栄養素が注目されています。
免疫力アップ、便秘解消、肥満・糖尿病の予防、冷え性改善、高血圧の抑制等々の、生活習慣病の予防の効果、そして、美肌効果等々…。
健康維持のための、伝統食でもあります。
酒造メーカーが、自社製品(日本酒)の酒粕を販売してますし、
最近では、スーパー等の量販店でも見かけるようになりました。
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(板状のもの、熟成の練り粕(2種類))
【板粕(いたかす)】
市販されている酒粕は、絞ったそのままの「板状」のものが多く出回っています。
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日本酒を搾った時に出る板状の、そのままの酒粕です。
色は、白っぽく、味は若くて、癖がなく、淡白な感じです。
「板粕」を、適度にほぐしたものを「バラ粕」または、「そぼろ粕」と呼びます。
【練り粕(ねりかす)】
酒造メーカーが、販売されていることが多いのが「練り粕」。
下記、2種類の練り粕は、お料理屋さんから、分けて頂いたものです。
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「板粕」、「バラ粕」を踏み込み、ひと夏、越させて熟成させた酒粕です。
茶色になり、「板粕」よりもコクがあり、芳醇な味がします。
原料の米の違い、製造工程の違いも、もちろんありますが、
この2種類だけ食べ比べても、かなり味わい、風味も違います。
生酛純米の練り粕が、その色、味わいも含めて、熟成期間も長いように感じました。
でも、どちらも、美味。
以前、テレビで、ある酒造メーカーの賄いのシーンを見た事があります。
「練り粕」が、塩や、醤油と同様、万能調味料として、常に、卓上にあり、
味噌汁にはもちろん、炒め物や、和え物など、
食べる時に、皆が、それぞれの好みで、ちょっと足して、食べていらっしゃいました。
などほど、面白い。
私も、この「練り粕」との出会いには、感動的。
酒粕を使い方、考え方を、変えてくれたと思います。
【酒粕の保存方法】
「板粕」「練り粕」ともに、できるだけ空気を抜いて、封をします。
冷蔵庫保存で、半年程。
冷凍庫保存で、1年程です。
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京都の、お料理屋さん
大好きな、京都のお料理屋さん。
実は、ここの料理人さんに、「お神酒板」の呼び方を教えて頂いたのです。
こちらでは、秋から冬にかけて、白味噌仕立てのお椀が出されます。
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ほんの少し酒粕が入っていて、これが、とても美味しかったのです。
ふわ~っと、ほんのり酒粕の風味が感じられ、京ならではの白味噌と相まって、美味。
そして、なんとも言えない滑らかな舌触り。
その事をお伝えしたら、仕込み方法を教えて下さいました。
酒粕と同じ銘柄の日本酒とを合わせて、一晩置きます。
酒粕(お神酒板)を緩めてから、そのまま日本酒の中で溶いて、混ぜ合わせ、ザルで濾したものを、使われるそうです。
もちろん、仕込み方法が分かっても、同じ味わいは出せないのですが。
凄いな、このひと手間、ふた手間を重ねていく事で、深い味わいとなるのですね。
これが、日本料理の素晴らしさでもあります。
お椀の味噌ひとつにも、丁寧なお仕事をされています。
酒粕を使って
酒粕と言えば、やはり、粕汁ですね。
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身体を温めてくれますし、栄養価が高いので、疲れた身体に優しい一品。
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魚の粕漬けも、定番です。
そして、最近、よく作っているのが、酒粕和え。
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ベースは、酒粕と白味噌を合わせて、味醂でのばしたもの。
野菜や、肉類は、その時々で変えています。
そして、無性に作りたくなるのが、こちら。
「桜と酒粕のケーキ」です。
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日本の郷土料理・第4弾「金沢編」レッスンで、
酒粕を使ったデザートとして考案し、試作を重ねて出来上がった、春らしいケーキです。
板状の酒粕と、桜の塩漬けを使います。
ふわ~っと感じる酒粕と、最後に残る桜の風味。
ご紹介したレッスンでも、皆さまに、喜んで頂けました。
美味しいですよ。
是非、ご覧ください!
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