1-1)医療業界について

お世話になっております。
株式会社Albatrus CEOの星野仙太です。

今回は「パート1-1:医療業界」についてまとめます。


医療業界とは?

医療業界とは、人々の健康を維持・改善するためのサービスを提供する業界です。この業界は、病院やクリニックといった医療機関だけでなく、製薬企業、医療機器メーカー、薬局など、多岐にわたる関係者によって成り立っています。人々の「生きる基盤」を支える社会インフラの一つであり、公共性が非常に高い産業です。


医療業界の市場規模

医療業界の市場規模は、医療費だけでも2025年に47.8兆円に達すると内閣府が試算しています。これは日本の国家予算の中でも非常に大きな割合を占める数値であり、少子高齢化が進む中、さらに拡大が予想されています。医療費の増加は、医療機関の経営に影響を与えるだけでなく、国全体の財政にも大きな負担をもたらしています。


医療業界の特徴

医療は「社会的共通資本」として、すべての人が平等に受けられるべきサービスとして、公共性が高いのが特徴です。

  1. 社会保障の中心的役割

    • 医療業界は、国の社会保障制度の一部を担っており、健康保険制度に基づいて運営されています。

  2. 法律や規制が多い

    • 医療法、医師法、診療報酬制度など、複雑な法律や規制が多く、これらの遵守が求められます。これにより、業界の参入障壁が高くなっています。


医療業界の主なプレイヤー

1. 医療の提供者

  • 保険診療機関

    • 病院: 総合病院、大学病院、地域病院、特定機能病院などが該当します。

    • クリニック: 地域のかかりつけ医として機能する診療所がこれに当たります。

    • 介護施設: 介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)など、医療と介護が連携する施設も含まれます。

  • 自由診療機関

    • 自由診療クリニック: 美容クリニックや予防医療(人間ドックなど)を提供する施設。

    • 老人ホーム: 医療的なケアが必要な入居者向けのサービスが行われるケースもあります。

    • マッサージやリハビリ施設: 広義には医療業界に含まれることもあります。

2. 医療の材料の供給者

  • 開発者

    • 大学・研究機関: 医療技術の研究開発を行い、特許や技術移転を通じて新しい治療法が誕生します。

    • 各製造業者: 医療用素材の製造や医療機器の部品を供給する企業がこれに該当します。

  • 製造者

    • 製薬企業: 医薬品の研究開発、製造、販売を行う企業。

    • 医療機器メーカー: 手術用器具や検査機器、AIを活用した診断機器などを製造する企業。

  • 卸業者

    • 医薬品・医療機器の卸企業: 病院や薬局に医薬品や機器を供給する役割を担います。

  • 小売業者

    • 薬局: 処方箋医薬品の調剤を行い、患者に直接販売する施設です。

3. その他の関係者

  • 治験機関: 新しい医薬品の有効性や安全性を確認するための臨床試験を行う機関。

  • 保険基金: 健康保険の運営主体(全国健康保険協会や健康保険組合など)。

  • 医療システムベンダー: 電子カルテやレセプト請求システムを開発するIT企業も重要な役割を果たしています。


医療業界の特殊事情:診療報酬制度とは?

診療報酬制度とは、医療機関が行った医療行為に対して、どれだけの費用が支払われるかを国が決める制度のことです。医療機関は、患者が支払う医療費の一部を自己負担として受け取り、残りの費用を健康保険組合や全国健康保険協会といった保険者に請求します。これにより、患者は高額な医療費の負担を軽減することができ、医療機関は提供した医療サービスに応じた報酬を受け取ることが可能になります。

患者負担と保険請求の仕組み 通常、患者は医療費の3割を自己負担し、残りの7割は保険者に請求されます。この請求に必要な業務が、いわゆるレセプト業務と呼ばれるものです。レセプトとは、病院から保険機関への「請求書」のようなものであり、どのような医療行為が行われ、どのくらいの費用が発生したかが記載されています。この書類に基づき、保険者から医療機関に対して支払いが行われます。

レセプト業務の重要性 レセプト業務は、医療機関にとっての経営基盤の一部を成す非常に重要な業務です。不備があれば保険者からの支払いが遅延したり、最悪の場合は請求が減額されるリスクがあります。そのため、正確で効率的なレセプト業務の運用が、病院経営において大きな課題の一つとなっています。

また診療報酬の金額は、2年に一度、厚生労働省によって改定されます。これにより、医療機関の経営や提供する医療サービスに大きな影響を与えます。例えば、入院費や外来診療の診療報酬が引き下げられれば、病院の収益は減少し、医療現場の運営にも影響を及ぼします。

診療報酬改定の影響 診療報酬の改定は、医療費の総額や医療機関の収益構造を大きく変動させるため、医療機関にとっては大きな関心事です。特に、診療報酬の改定による収益の増減は、病院の経営戦略にも直結します。そのため、医療機関は、診療報酬の改定に備えて業務改善や効率化を進める必要があります。


まとめ

医療業界は、人々の健康を支える社会インフラであり、巨大な市場規模を誇る産業です。医療の提供者、医療材料の供給者、各種の関係機関が複雑に連携し、公共性の高い役割を担っています。また、診療報酬制度の改定やレセプト業務の煩雑さなど、医療業界特有の課題も多く存在します。


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