この写真の秘密をお話しします。
横木安良夫写真展のDMと写真集の表紙に使用されているこの写真について多くの人から質問がありました。
アイルランド南西部の田舎道
2012年8月 アイランド南西部の狭い田舎道を、激走する木材満載の大型トラック。その写真を撮っている時に突然女性がジョギングしているところに遭遇。レンズは200mmf2.8。走る車から撮影する時の視線は日常より遠く、200mmがちょうどだからだ。ファーカスモードはAIサーボ、通常の連写モード。カメラはEOSMarkⅢ。
この写真は、連写した写真のなかから選んだ3枚だ。その3枚をパノラマ写真のようにステッチしている。はめ込み合成ではない。望遠レンズで撮ったので歪みもなく、偶然3枚ならべると一枚の写真になった。それをステッチしている。
女性の左手は時計を見ているのだろう止まっている。髪の毛の翻り方は微妙に違うカットであることがわかる。そして足は動いていることが分かる。多分1秒前後の瞬間の連続だ。
あくまでそれぞれ移動している偶然の産物だ。画像の合成ではなく、時間の合成写真ということになる。
これは僕のTWILIGHT TWISTというシリーズで、長秒露光と懐中電灯で撮影している。露光時間は10秒ぐらい。画面のなかに入って被写体に近接してライティングをしている。ガラスまでにその光跡が写ってる。この写真の露光10秒が合成されている。合成というのか、その時間全部が記録されているということになる。
今回の写真展のタイトル「追いつくことのできない時間」は、写真は構図や色調ではなく、時間であるということの証明のような写真ということだ。と言い切るつもりはないが、今のようななんでもオートの時代以前は、シャッター速度と絞り、ピントはとても重要で、特にシャッター速度は、シャッターを落とし込むたびに、その速度を意識していた。写真は時間だと。
今回の写真展のもととなった写真集 「Catch it if you can」