初沢亜利写真展 東京コロナ禍2020
2021年1月12日~24日㈰まで。12時―19時 最終日16:00まで
日本橋小伝馬町17-9 さとうびる4F Roo nee 247 fine arts Room1+2
「写真集コロナ禍」の続編を含めた、2020年12月31日までのコロナいちおうの完結編。されど、まだまだ終わらぬ、続編、乞うご期待!
初沢は、グラフジャーナリズム的な手法で、その1年間を撮影した。ウイルスという写真には写らない事件。初沢はただただ、微妙に変容した社会の状態を記録する。
この写真展にはキャプションがない。一言「時系列に並べた」という。右回りで最後に12月31日に撮影した写真で終わる。
たいていの事件にはたいていクライマックスがある。その瞬間を撮れば、昔のニュースカメラマンだったら一丁上がり。
でもこんなに不条理な、長期ぬるま湯の細菌戦争は、絶対に写真に写らない。だからこれを撮ろうと思う写真家は少ないのかもしれない。
初沢の写真が、良いのか悪いのかは問題ではない。
彼はまるで無謀な戦場カメラマン、無償のストリンガーのように東京をさまよう。
個人的には、好きな写真が何点もある。写真展の好みから言えば、そういう写真だけを展示してほしいと思うが、
これらの写真のいいところは、
邪念だらけの欲望の写真家初沢亜利が昨年の春、
始めたばかりの東京撮影中に偶然コロナ禍に遭遇、幸運と悪運。
それは欲望ではなく、まるで責任感のように撮りはじめたことだ。
他に、多くの写真家が撮り始めたら、撮らなかったかもしれない。
初沢は観念したように撮り始める。
基本は古臭いジャーナリズム的な手法。目の前の記録。
でもそれは、誰かに命じられたわけでもなく、自ら写真家としてのリアルな肉体と精神のありかを確認しながら、
撮るべき、撮りたいと基本を貫いている。
くだいていえば能天気だ。
それがちょっとうらやましい。
叱咤激励したくなる、この気分はなんなのだろう。
それにしてもこの上野公園の雪の桜は、
かつて彼が撮った、震災、津波、原発の桜の無常な美しさと比類する。
実は初沢亜利は、桜の写真家なのだ。
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