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映像制作の際の出演依頼に必要な『映像作品出演契約書』のひな型を公開します。

 (2020/05/07 新たにMS-Word版を公開しました。)

 こんばんば。あらんです。
 お仕事は、五反田バレーのベンチャー企業でバックオフィス全般を担当しています。おもに得意分野は経理財務ですが、実際の仕事のボリュームは大量の契約書を作ったり、相手方文書のレビューをしたり、条件面の交渉をすることです。

 趣味の分野では、自主制作映画を作っており、独学だけでなく、デジタルハリウッド大学大学院といった専門性の高いところから、(いま話題の)ENBUゼミナールの映像監督コースで学んだりしました。仕事でもデジタルコンテンツを販売している会社、スマホのネイティブゲームの会社、ゲームでないスマホアプリの会社で働いてきたので、企業の法務担当としては、エンタメ業界には詳しいと自負しています。

 前回は、「カメラを止めるな!」の件に便乗して、原作者(小説、漫画、演劇、シナリオ等)と映画制作者のための、映像化案件に権利を許諾する、『原作(原案)利用許諾契約書』のひな型を公開しました。半分はネタでつくりましたが、ある程度使用に耐えられるよう作っています。

 今回は、より、使いでがあると思われる、映像作品をつくる際んに、キャスト(役者)さんと結ぶ、『映像作品出演契約書』のひな型を作成しました。

 自主制作映画など作る場合、現状、出演契約書を取り交わすのは非常に稀です。しかしながら、なにかの拍子に話題になったり、2次利用(パッケージ化やネット配信)できるチャンスがでてきた場合、出演者と取り決めがないと非常に困る可能性があります。

 映像作品を映画祭に出展したり、ポートフォリオ作品をウェブ掲載した際に、出演者からクレームを受けることもあります。書面での契約が交わされていないと、出演者から事後で出演料や慰謝料を請求されたり、不本意な映像の改変や公開の取り下げを余儀なくされることがあります。

 海外の映画祭では、作品のエントリー時に適切な契約や権利処理が行われているかを、詳しく問われます。コンテンツの買い取りに積極的なVOD放送やネットフリックス、アマゾンプライムなども、権利や契約の処理については、かなり厳格な規定があるようです。

 将来的に作品を公開、売り込み、マネタイズしたいと考えている方は特に、書面での許諾しておく必要があります。

 エンタメ・コンテンツに詳しいバックオフィス担当が、得られる情報を騒動員して約1日がかりでつくりましたが、何か不備があるかもしれません。
 必ず、弁護士などの専門家にレビューを受けることをおすすめします。ゼロから作成をいらいするよりは、ある程度のひな型があるとタイムチャージが少なく済む可能性があります。
 ネットにある各種契約書のサンプルに着想を得ましたが、ただ僕としてはその後、自らが加筆・修正・解説して作ったオリジナル作品だと思っています。
 なお、契約書には著作権が無いというのが判例なので、どうぞご自由に使ってください。ひな型のリンク(googleドキュメント)では、そのまま使えるように成形していますので便利かと思います。
 また、自身の権利を確保するためだけに条文を作成するのではなく、お互い、クリエーターとして尊重できるように交渉して合意することが大切だと思います。

 今回は、フリーの役者さんとの契約を想定しています。事務所やエージェント所属の場合は、役者本人ではなく事務所・エージェントと契約する可能性が考えられますが、今回は考慮していません。

以下目次です。
■主な条文の逐条解説(途中から有料です)
(以下、有料です)
■映像作品出演契約書、ひな型リンク(Googleドキュメント)

主な条文の逐条解説

第1条 (目的)
 甲は乙に対し、別紙記載の日程で行われる甲制作の映像作品名「〇〇〇」(以下、本件映像作品という)に出演を委託し、乙はこれを受諾する。なお、上記以外の詳細に関しては別途、定めるものとする。

 何の作品に対する出演なのか、特定する必要があります。タイトルが決まっていればタイトルを。決まっていない場合は仮題の注釈をいれるなどする必要があると思われます。

第2条 (出演依頼)
 乙は本件映像作品の出演業務の遂行に際し、甲の指示に従い、甲に協力し、出演業務を行うものとします。また、甲乙は業務の遂行に関し、お互いに詳細な連絡および報告を行うものとする。

 出演に際しては、単に当日現場に行くだけでなく様々な事前準備が考えられます。(リハ、衣装合わせ等)。それらに対して、連絡など明確に協力を得られることを定める必要があります。

第3条 (出演料)
 甲は乙に対して、本件映像作品の出演料として、以下の報酬を支払うものとします。なお報酬には、リハーサルおよび出演のための準備・打合せ、移動による時間拘束料が含まれているものとする。
 (1) 出演料 金 ■■■■■■円也(税抜き)

 次に出演料ですが、出演料に何が含まれるかは明確にする必要があります。ここでは、リハや準備、打ち合わせの拘束料も出演料に含むことを明確にしています。

第4条 (経費)
1.前条に規定する出演料には、下記が含まれているものとする。
①都内を移動する交通費


2.本件映像作品出演のため旅費・交通費(前項以外のもの)および宿泊代は、甲がこれを負担するものとする。

 経費について誰が負担するのか、出演料に含まれるか明確にします。都内での撮影の場合、軽微な都内近郊の交通費などは精算の手間などもあり出演料に含めるとし、それ以外の旅費交通費、宿泊費は別途制作側が負担することが考えられます。また、衣装を出演者側が用意する場合などの衣装代の扱いを記載することなどが考えられます。

第5条 (支払方法)
 出演料の支払いは、撮影終了の月の末日に乙が請求書を発行することとし、甲は翌月末日までに甲指定の口座に振り込み送金する方法で支払う。(振込手数料は乙の負担とする。)

 一般的な商習慣にしたがって、月末締めで請求書をだし、翌月末に振り込むことを記載しています。

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