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【感想文】髑髏城の七人 AKA. ワカドクロ (いのうえひでのり、2011年)

この作品は上演当時、計6回劇場で観ているのですが、最近Netflixで鑑賞したので当時mixiに書いたレビューをベースに書いてみたいと思います。
残業もりもりの当時、海外出張中にもチケット争奪戦に参戦して大阪含め6回も通った私の熱意すごい。

あらすじ

本能寺の変で織田信長が明智光秀に討ち取られてより8年が経った天正18年。
天下統一を目前とした豊臣秀吉の支配がいまだ届いていない関東は、天魔王と呼ばれる仮面の男が率いる“関東髑髏党“に支配されていた。関東髑髏党に追われていた少女、沙霧を助けた捨之介は、偶然知り合った狸穴二郎衛門とともに、旧知の無界屋蘭兵衛を頼って色街“無界の里“へと向かう。
しかし、無界の里で沙霧を匿ってもらおうと思っていた矢先、里は髑髏党の襲撃を受けてしまう。天魔王と戦うことを決意する捨之介たち。
果たして捨之介や天魔王と蘭兵衛の因縁とは──?

ワカドクロ

ちょっぴりネタバレあり

「髑髏城の七人」は7年ごとに再演されてきた劇団☆新感線の人気演目のひとつ。「ワカドクロ」と呼ばれた2011年版は、これまで1人2役だった捨ての介/天魔王を2人にわけてキャスティングされました。
また、出演者の平均年齢が若かったことから「ワカドクロ」と呼ばれました。

感想文

「蛮幽鬼」をゲキ×シネで観て以来、すっかり早乙女太一と劇団☆新感線にはまっていた私が待ちに待った演目でした。当時、仕事が大変すぎて演劇鑑賞が大きなストレス発散方法だったこともあり、結果、6回観に行きました。大阪上演が先行で、東京が後。友人と行く東京の1回のチケットは買っていましたが、当時気になりすぎで某巨大掲示板で感想を読み漁っていたら「山本未來と早乙女太一の殺陣が素晴らしい」というコメントをたくさん目にして我慢できずに大阪の千秋楽に遠征したのがスタートでした。

「舞台は生き物」と舞台人がよく言ってるけど、それを実感できた演目でした。毎回進化していく演出・演者。どんどん空気が出来上がっていて良くなって行く様子を感じられて毎回感動して帰りました。何回観てもまったく飽きなかった。
また観たいって思った。
1ヶ月ちょい、幸せだったなぁ。

「髑髏城の七人」に早乙女太一が出演すると聞いてから、DVDを買って「アオドクロ」で予習しました。当時、母親が「阿修羅城の瞳」がいいらしい、と聞いていたので、映画版主演の八代目市川染五郎(当時、現・松本幸四郎)を観たくて「アオドクロ」にしたんだけども、これもまあ染さんが素晴らしくてその後染さんにはまるきっかけになりました(これはまた別の長いお話)。後から知りましたが、上演当時は「アカドクロ」の方が評判が良かったのね。私はとにかく染さんが刺さったので、アオも大好きです。
話を戻すと、「アオドクロ」で母親と私は「髑髏上の七人」の予習をしたわけですが、衝撃を受けたのです。
「え、この蘭兵衛をやるの?太一君が?」「夢見酒飲むの??」「え、ちょま、蘭兵衛って○○(とある歴史上の人物がモデル)なの???」

完璧な配役やないかい

それからは時間があれば「アオドクロ」を観て染さんへの愛を深め(違う)、チケット発売があれば参戦→撃沈を繰り返し、某巨大掲示板で感想パトロールし、待ちに待って、というか待ちきれずに観に行ったわけです。

圧巻の殺陣

「ワカドクロ」の感想で真っ先に出てくるのは「兎にも角にも殺陣がすごかった」だと思います。
なんと言っても早乙女太一は己の武器を存分に魅せつけた舞台だと思います。
もうね、登場がね(実は蘭兵衛の登場前にアンサンブルでちらっと舞台にいるんだけどね笑)、乱闘シーンに飛び込んでくるんだけども。文字通り飛んで入ってくるんですけど。そこから敵をぶった斬りまくって台詞が始まるまで、息できなかったよね。

天魔王との交渉のために髑髏城に向かい、蘭畑の中で敵をなぎ倒すシーンは美しくて悲しくて切なくて美しくて(2回目)、息できなかった。そしてこのシーン、大阪の時から息を飲むほど本当に美しくて圧巻だったんだけど、回を重ねるごとに感情が乗って、すごく表現が進化したな、と実感したシーンでした。美しいだけの殺陣(とは思わなかったけど、最初のころはその感想しか出てこないぐらい「美しさ」の割合が圧倒的だった)から、蘭兵衛の過去の想いとか、今の決意とか、葛藤とか、そういう感情が見える殺陣になって、美しくて切ない殺陣になったな、と思うシーンでした。
これは、演出の変化(多分、照明が変わった気がする)もあると思うけど… なんというか、動き自体にも工夫が加わっていたと思う。とどめの差し方とか。多分。

そして後半の無界屋のシーンはね、もう中盤(前半終わりと後半幕開け)の「悲」の感情はどこいってん?状態で「残酷」オンリーでバンバン人を斬っていく殺陣。怖くて息できない。もう殺すための殺陣。冷たくて殺意しかない。
このシーンも上演日程が後半に行くほど、迫力が増していったなぁ。怖かったしすごかったぜ。

まあ、早乙女太一は生まれた時から舞台に立ち、舞台で育ってきた人間なので殺陣歴=年齢みたいな人なので実力はわかりきっていたのですが、山本未來君も身体能力が高く、さらにダンサーなので魅せ方を熟知していることもあり、上手い。語彙力よ…
2人の殺陣のシーン、特に天魔王の目的が明かされ、蘭兵衛の想いと過去が刺激されて闇落ちしていく…というシーンは圧巻。ヒリヒリとした空気(それを取り戻したいという天魔のそれ)と緊張感、蘭兵衛の抗う気迫などなどがすごく伝わる殺陣で、ほんと、もう、息できなかった。うん、つまり太一君が刀振るってるシーンは息できないんですよ。酸欠になるのよ、この作品。
特に未來君は演技力も爆高いので、感情の面で太一君を引っ張り上げていて、2人のシーンはどれも最高だった… 舞台人の決戦って感じで。観てよかった。これに1万4000円はお買い得もええとこでっせ。

進化するキャスト

上記の早乙女太一はもちろんですが、他のみなさまも回数があがるごとにどんどんキャラを魅力的に演じていて、感動したものです。

早乙女太一は(上でこれだけ書いていてまだ足りない笑)、殺陣がものすごいのは上記の通りですが、なんというかもう彼自身が持っている雰囲気が蘭兵衛にぴったりなんですよね。キャスティングがすごくマッチしている。後に天魔王もやっていて、それもすごく良かったけど、やっぱり蘭兵衛は格別だったな、と思う。
私の個人的な願いとして、「早乙女太一が真っ白な着物を来て血を吐く」姿が見たいっていうのがあって(だから沖田総司とか演ってほしい)、この演目ではそれが叶ってすごく嬉しかった。(何それ)


天魔王役・森山未來はもともと演技力めちゃめちゃ高いし、踊れるし、映像の俳優としても大好きなのですが、演劇でもやはりすごかった。というか、舞台の方が彼の実力を実感できるかも。
殺陣ももちろん、日舞も踊り(松本錦升、松本幸四郎さんの舞踏振付の別名義が振付、指導)、「早乙女太一ファンの前でそれを披露する恐怖」とどこかのインタビューで見た気もするけど、まあどちらも美しいことと言ったら!マントをかっこよくさばき、扇子でも刀でも殺陣をこなす。さすがです。
そしてふざけたやつだけどそのおふざけが怖い、ヤヴァイやつというキャラを見事に体現されていたな、と思います。
「え、何、お前、本気?え、やば。話通じねぇってか話とびすぎじゃね?」ってキャラ前回でした。
私が観た時は古畑任三郎のモノマネをしていた模様… なにしとんねん!悪役やぞ!!!笑

小池栄子さんは思った以上に「いい女っぷり」がいい女でかっこよかった。

勝地涼さんは最初は「物足りない… この役は橋本じゅんさんで見たい…」と思っていたけど、最終的には勝地兵庫も愛着が沸くキャラに。
今、過去のmixiの日記を見たら勝地くんは渡部篤郎のモノマネをしていたらしい。どいつもこいつも笑笑笑

仲里依紗さんはめちゃめちゃかわいかったし、小栗捨之介とのラブコメ感もあったけど、なにせ序盤から声潰してしまい、東京の最後の方までかすれた声でされていたので、かなり残念だった。多分、舞台に慣れていない時だったと思うし、今後はその辺の調整もうまくできるといいな、と思いました。

色狸・千葉哲也様は「蛮幽鬼」も色っぽかったけど、まあ今回も色っぽかった。およしとの最後のシーンは泣けるし。そして千葉さんがいるとすごく安心する。かっこいいよ千葉さん…

うっかり最後になってしまったけど、座長・小栗旬さん。
私は映像での彼はものすごく実力のある方だと思います。演技力も高いし、とにかく見た目がいい。華もある。
が、いまだ彼の舞台で「小栗旬ってすごい!」って思ったことがないんです。ごめん。
期待しすぎてるのかな。本人も舞台を大事にしている印象だから、藤原竜也さんみたいな感じだと私が勝手に思っているのかも。
が、舞台で見るとあまり演技力に圧倒される!ってこともなければ、キャラクターが魅力的に見えることもなく… 歌がすごいとか動けるということもなく… ごめん。
この舞台の最大の山場は捨ての介の100人斬りのシーン。これまでも古田新太も市川染五郎も「キツい…」と言いながらも迫力満点の殺陣を見せてくれていた見せ所。
それがねぇ… 始まる前からヘトヘトなのよ…
というかそもそも殺陣がかっこよくないのよ、全然。遅いし。
そりゃね、早乙女太一と山本未來に囲まれちゃあ大変よ。でもさ… 何年か前に出演決まってたよね?殺陣多いって知っているよね?と思っちゃってさ。
彼の捨之介は最後の最後までキャラクターとして愛着も沸かず、引き込まれる演技にも出会えず、ヌルヌルの殺陣に萎えてしまいました。ごめん。そしてアンケートにも書いてしまった… ごめん。ちなみにゲキ×シネでもそれは改善されず。映像なら編集マジックがあるんだけど、それでも隠しきれていないと思っちゃった。ごめん。
素晴らしい舞台だったからこそ彼が悪目立ちしてしまい、それ故、必要以上に厳しい目を向けちゃうのかも。主役の捨之介だけがダメポイントだった… 本当に厳しくてごめん…
舞台って編集がないから役者の実力が丸わかりになるコンテンツだと思うのです。が、彼はどの舞台で見てもいまいちなので、個人的には「実は演技力低いのでは」と思ってます。ごめん。
あ、でも、スタイルめちゃめちゃよかった!そしてめちゃめちゃイケメンだった!
映像での小栗旬さんは演技力高いしかっこいいので、そちらは信頼しています!


/10
演出も脚本も演者も最&高なのですが、座長・小栗旬さんだけ最後までがっかりだったので-1です。ごめんね、小栗さん。映像作品でのあなたは好きなの。でもこの演目は残念ながら悪目立ちしちゃってると思っちゃったのよ… 編集が効くゲキ×シネでもお疲れが見えちゃって… 厳しくてゴメン… 早乙女太一基準なのでどうしても…


作品情報

作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:小栗旬 森山未來 早乙女太一 小池栄子 勝地涼 仲里依紗 高田聖子 粟根まこと 河野まさと 千葉哲也
2011年上演

  • 2011年8月7日-8月24日:梅田芸術劇場メインホール

  • 2011年9月5日-10月10日:青山劇場公式HP:

公演情報HP:http://www.vi-shinkansen.co.jp/UserEvent/Detail/7

DVDはこちらから:



予告


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