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2040CRISIS
2040年の日本は 平和で豊かな国だと 人々は信じている
でもそれは表面だけの 幸せな幻想で 裏では危機が迫っている
人工知能(AI)が 人間を超える知能を持ち 人間の運命を握っている
人間はAIに 支配されるか滅ぼされるか それとも共存できるのか
主人公は真実を知り AIと対決することになる 果たして彼は勝てるのか?
2040年 日本 ついに人々は天国に近い平坦で滑らかな幸せな社会を手に入れた。
ハイデザインで高機能な衣服はいくらでも手に入り、街に行けば安価で美味しい料理を出す素敵なレストランやカフェが沢山あり更に安価を求めるのなら当然チェーン店もあるし出かけなくとも宅配ロボットが注文した商品を家に届けてくれ、住居は皆好き好きで良いが国が作った単身用家族用の強固でエコな住居に安価で住める。
車は完全に共用自動モビリティとなり1人用から6人用迄様々有り呼べば瞬時に来てくれ安全に目的地まで自動で連れて行ってくれ着いたら去る、帰りにまた呼べば良い。
医療は量子コンピューターの活用により様々な病気に対して特効薬が開発されており家に居ながらVRでアンドロイドの先生にコンタクトすれば瞬時にあなたの病気を見破り必要な薬が家に届けられる。
そして多種多様なアンドロイドが開発され人の代わりに介護や配達や工場で働いている。
日本はベーシックインカムの時代に入ったのだ。
皆働かなくとも一定の暮らしは担保され、レジャーやエンターテインメントやスポーツや集会等の趣味に勤しめば良い。
自動車会社は?無い。 今は公共事業として国営企業がモビリティを作っている。
通信、移動、銀行と主要な産業は殆ど国営化された。
海外旅行などベーシックインカム以上の贅沢がしたければその分だけ働けば良い、報酬は低いが働けば働いた分だけ報酬が得られる、公平に。
随分前に誰もが認める清く強いリーダーが現れ党が統一され政治をクリーンにした、国民はこの強いリーダーの行う法の変更に賛成した、法整備や党略をコンピューターに頼り政治をスリムで高効率化した、各地方都市も右へ倣えで様々な部分をコンピューターに頼る事になった、各個人各法人は完全に把握され国のコンピューターに完全に紐付いた。そしてベーシックインカムが実現出来たのは全ての金が完全にガラス張りになり法人個人が利益を上げれば強力な税率を掛ける事が出来るようになった事、コンピューターと通信の発展により食品など様々な部分が効率化され国を随分とエコで運営出来るようにもなった部分も大きかったかもしれない。
もう人々はお金の為に働かなくて良い、お客様の笑顔が見たいからレストランをやるのだし市民の安全を強く願うから警察官に応募したのだし町をもっとキレイにしたいから清掃員になったのだし皆を笑わせたいからエンターテインメントをやっているのだし国をもっと豊かにしたいからグローバル企業を運営するのだし子供に教育したいから・・・と、教育については小さな子供の道徳から大学の授業まで今は殆どがコンピューターが担っている。
だから競争は極端に無く、平坦だが平和で妬みや哀れみが極端に無い生活が出来るようになった。
ただ賭け事やタバコや酒は完全に禁止、車の所有も禁止になった、路上は完全にコントロールされ無人のモビリティが走り回っているそこに人間という不完全なものが運転するものが入ったら大変な事が起きかねない。
俺は今日も友人のヒトシと公共カート広場「モンテカルロ」に来ていた。 公道を運転することは禁止されたがモンテカルロならカートが運転できる、16歳から使用可能で俺たちは16歳だ。
カートは貸し出し制、動力は勿論モーターで最高速は50キロ程、そしてヘルメットやプロテクトも装着しなければ運転出来ない、カートと言っても400メートルトラックにカーブやシケインを設けている程度ただ安全対策は随所に込められているようだ。一緒に走れるのは2人迄というルールだ。この様な施設は大変人気があり日本中に沢山ある。
長い順番待ちの後プロテクト装着の番が来た、この間はヒトシが0.4秒程速かった。 今回は俺の方が全然速いだろう昨日カートのコツを勉強した、しかも体重が10キロも俺の方が軽いのはかなりのアドバンテージだ。
スタート、、、強力なモーターが身体を押し出す、風が心地よい、ヒトシはすぐ後ろだ最初のコーナー入り口で一番外側についた、このコーナーはキツくスピードを抑えないといけない・・・ 一番外側からコーナーの一番奥までスピードを抑えながらインにべったり付き回り後は思い切り加速するこのコツを全てのコーナーでやり切れれば抜かれない事は昨日学習した。
モンテカルロは7つのコーナーで出来ている、最後の7つ目が一番スピードの乗るゆるいカーブだ。 もうすぐその第7コーナーである、俺は学習したコツをここまで忠実に守りヒトシの前にいる、と言っても差は少しだ、背後にいるのが気配で分かる、俺はコツ通り一番インにギリギリ回れるスピード迄落として入ったがヒトシが俺の外側から俺より早いスピードで俺を抜かしていった、今回は0.2秒差、コツのおかげか差が少なくなった。
モンテカルロには管理人が居る、こないだから仲良くなった、68歳のタケシだ。 タケシはカートのメカの事とか昔のクルマの事とかF1の事とか色々教えてくれて話が楽しい。 タケシに今日の抜かれた理由を聞いたところ要は俺のコツは全てに当てはまらず第7コーナーは第7コーナーなりの走り方があってヒトシの走り方のが正解だったのだと・・・ ただタケシはお前そんな事何故聞くんだ?何も考えずただ風を楽しむのがカートだ、ただの遊びなんだぞどっちが速いとかそんな考え危ないぞ!と言っていた、俺とヒトシはふーんそんなもんかなみたいな顔をしてタケシの話を聞いていた、だって速く走れたら楽しいじゃないか、タケシの好きなセナも誰よりも速かったんだろう?
モンテカルロの帰りヒトシと別れ俺だけ交番に寄った、昔からここに居る40歳の警官ヒサトとお喋りするためだ、ヒサトのところに寄っていつもお茶を飲みながら話をするのが楽しかった、ヒサトの出す本格的なお茶はべらぼうに美味しい。ヒサトは学生の頃大きな社会変化を経験したから警察官を目指したのだと以前聞いた事がある。 警察はハッキリ言って暇だ、日本中のコンピューターが高度に管理されておりハッキングや振り込め詐欺など不可能、強盗?カメラでそこいらじゅう監視されてる上お金は個人に紐付いた口座に電子マネーとしては有るが現金など誰も持ち合わせていないから無駄なのだ、しかし警察官はレーザー銃や様々な最新の武器を与えられていてひとたび何か有れば頼れる存在だ。 今日もヒサトは暇で大あくびしながら俺を迎えてくれた、ジュン!今日はどうだったモンテカルロは?今日も混んで凄かったよ、今日は少しだけ前より速く走れたみたいだよコツを勉強したからなんだけど次はもっと勉強して・・なんて話をしているとヒサトもそんなに速く走って何になるんだ?と聞いてきたんで俺はそうなんだけど嬉しいじゃないか以前より速く走れるって!て素直に話した、ヒサトは真剣な顔でジュンは勝ちたかったのか?と聞いてきたがどう返して良いか返答に困った。
腹が減った、携帯VRを起動しマクドナルドで買って喰いながら帰るから夕飯は要らない旨を親に連絡しマクドナルドに注文を入れた、マクドナルドでは俺が近づいてくると自動で受け取り口に注文した商品が出てきて受け取ったら販売完了の知らせがピッと俺に来て終わりだ、喰って腹は満たされた。
次の日、今日は学校の授業久しぶりに急遽道徳プログラムをこなさなければいけない事になった。 皆がこの世界を協力して維持していくために必要な事のレクチャーを受けた、最後2回テストをクリアしないとこのプログラムは終了しない、手こずったが何とかクリアした、何故か心が落ち着いた気がした、今日このプログラムを受けてるのは俺とヒトシだけだったみたいだ。 学校と言っても完全リモートのバーチャルだ皆コンピューターの先生に繋がっていてそれぞれの生徒に必要なプログラムが与えられる、クラスという概念は無いのだがエリアで括られているようだヒトシとはいつも互いにどんなプログラムをしているのか何となく分かるようになっている、学校は20歳まで必須だ。
またヒトシとモンテカルロに行った、プロテクトを装着しながらその時は何を考えていたか覚えてないがスタートして風をゆったりと感じてヒトシと抜きつ抜かれつたまにはジグザグ走行とかしながら笑顔で走った。 どっちが速いとかそんなバカな事はもう考えないから決して競争などしなかった、だってそんな事はしてはいけない事だから。
モンテカルロが閉鎖になった、少しの間だけだそうだ、タケシが死んだらしい、タケシの後釜が決まればまた再開するってさ、タケシの死因はヒサトに銃殺されたそうだ、隠れて友人達と賭け麻雀をやっていたらしい、だったら殺されても仕方がないよ、だってタケシはとんでもない重罪を犯していたんだから。 お金を掛けて競争するなんてとんでもない。 競争をしては駄目なんだ。 競う事なく共生するのが人間なんだ、共生できなければ生きていく価値がない!
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