桜蕊降る頃、寂寞の思いを抱きながら。
桜の舞う季節。
別れの季節。出会いの季節。
あと何回君に会えるだろう?
君よりも想う人が今後現れるだろうか。
寒明けから数日。
徐々に卒業のムードが漂いはじめる。
卒業後の希望に満ちた生活を心待ちにしている者。
先の見えない不安に押し潰されそうになりながらも前を向いて頑張ろうとする者。
友達と離れるのが寂しい者。
様々な人達がいる。
□□:〇〇ぅ?
〇〇:どうした?
□□:もう卒業の季節だな。
〇〇:まだあと一ヶ月あるだろ笑
□□:一ヶ月なんてあっという間だぜ。
〇〇:そうだな。何だか寂しくなるな。
□□:お前好きな人いるんだろ?
〇〇:うん。
□□:どうするんだよ。
〇〇:迷ってる。
□□:俺はしたほうがいいと想うけどなあ。
〇〇:何で?
□□:しないで後悔するよりして後悔した方がいいだろ?
〇〇:まあな。
□□:お前の好きな久保さん色々な人から告白されてるらしいぞ?
〇〇:し...知ってるよ。
〇〇:まだ時間はあるから。
〇〇:まだ勇気が出ないんだよ。
〇〇:あまり話した事ないし。
□□:ふーん。
□□:本当にその時間とやらはあるのかね?
□□:いつまでも時間がお前を待ってくれているとは限らないぞ。
〇〇:?
俺は言っている事が理解できなかった。
□□:まあ頑張れよ。応援してるからさ。
〇〇:う...うん。
私は、久保史緒里。
今私には好きな人がいる。
いつだろう彼のことを好きになったのは。
辛い事ばかりの自分の人生。
彼の顔を見てると嫌なことは全部忘れられるような気がして、幸せな気持ちにすらなれた。
なぜだろう。
彼氏でも、家族でもないのに、
そもそも家族って大切な存在だっけ?
わからないや笑
美波:もう卒業が近いねー。
美月:うん。寂しい...。
史緒里:まあ私たち、「ずっと」仲良しだもんね。
史緒里:これからも会える時に会おうよ!
2人:うん!!
美月:そういえばさー。
2人:どうしたの?
美月:久保って〇〇君のこと好きなんだよね?
史緒里:う...うん。
美波:どうするの?
史緒里:ど...どうするのって...。
史緒里:こんな私が告白したって...
美月:それは告白してみないとわからないんじゃない?
美波:〇〇君女子から人気だけどさ、噂だと久保の事好きって噂あるしね。
史緒里:えっ!?
2人:知らなかったの?
美月:あと久保って結構男子から人気なんだよ?
史緒里:う...嘘だよぅ...。
美月:嘘じゃないよ笑
美月:あそこの男子達の会話、聞いてごらん?
△△:なあ?
□□:どうした?
△△:やっぱり久保さんって可愛いよなぁ
□□:いつもその話するじゃん笑
△△:だって可愛いんだもん。
美月:ほら!久保って結構モテててるんだよ。
史緒里:そうなんだ...。
美波:〇〇君とまずは少しずつ話してみたら?
美波:〇〇君の事がもっとわかると思うよ。
史緒里:頑張って話してみる!
放課後...
史緒里:ま...〇〇君!!
〇〇:く...久保さん?
史緒里:もし良かったらさ...一緒に帰らない?
〇〇:俺でよければいいよ?
史緒里:(よしっ!少しずつ!
俺は久保さんと一緒に帰ることになった。
たくさん話をした。
楽しかった。
ただそれ以上に、あなたの可憐さ、明るさ、人柄に惹かれていった。
この想いを自分から伝えればいいのに、あなたに気づいて欲しかった。
史緒里:じゃあ私はこっちだから
史緒里:もしよかったら明日からも...一緒に帰らない?
〇〇:いいよ。
〇〇:俺も一緒に帰りたい。
史緒里:(俺も!?これって///
史緒里:じゃあまた明日!!
〇〇:うん!また明日!
俺らはこの日から毎日一緒に帰ることになった。
学校生活の中でも話すことや一緒にいる事が増えた。
もしかしたら...久保さんは俺のことが好きなのかもそう思っていた。
いや、そうであって欲しかった。
久保さんといる時間は何にも変えられないもので、永遠に続いてほしいと思っていた。
〇〇:久保さん!!
史緒里:どうしたの?
〇〇:今日も一緒に帰ろ?
史緒里:今日は...少しやらなきゃいけない事があって...
史緒里:先帰ってて欲しい。
史緒里:ごめんね...。
〇〇:分かった。
〇〇:また明日ね!
史緒里:うん...。
何故か久保さんの目は潤んでいるように見えた。
史緒里:ご...ごめんね...〇〇君。私...もう限界...。
次の日学校に久保さんはいなかった。
いや、この世界に久保さんは...いなかった。
久保さんはいなくなってしまった。
今まで抱いたことのない喪失感。
実感が湧かなかった。
全てのことがどうでもよくなった。
あなたともっと話したかった。
あなたと、どこかに行きたかった。
常に久保さんのことが頭から離れなかった。
その時ふとあの言葉を思い出した。
□□:本当にその時間とやらはあるのかね?
□□:いつまでも時間がお前の事を待ってくれているとは限らないぞ。
何故だろう。
何故もっと彼女に話しかけに行かなかったのだろう。
何故彼女に自分の想いを伝えに行かなかったのだろう。
そう思うと涙が止まらなかった。
卒業式前日...
久保さんがいなくなって少し経ち、学年全体では再び卒業ムード。
しかし俺は卒業式などどうでもいい。
今日も一人久保さんのことを考えながら過ごしていると...
?:〇〇君?
〇〇:何?
?:少しお話しがしたいんだけどいい?
そう言ってきたのはクラスメイトの山下美月。
〇〇:いいけど。
美月:〇〇君って久保の事好きだったでしょ?
〇〇:!?
〇〇:そうだけど...
美月:私も久保の事が友達として大好きだった。
美月:何で悩んでいる事に気づけなかったんだろうって。
美月:そんな時に久保に言われた言葉を思い出したの。
久保:まあ私たち、「ずっと」仲良しだもんね。
久保:これからも会える時に会おうよ!
って言われたの。
美月:私はこの「ずっと」って部分が忘れられなくて。
美月:実は前に〇〇君が□□君と会話してるの聞いててさ。
〇〇:もしかして時間は...ってやつ?
美月:うん。それ。
美月:私たちは久保や□□君に、大切なものを教えてもらった。
〇〇:大切なこと?
美月:うん、大切なこと。
美月:久保は〇〇君に気づいてほしいと思う。
美月:久保が遺した大切なものに。
5年後...
〇〇:俺...ようやく分かった気がする。
〇〇:あの時久保さんが遺してくれたもの。
〇〇:答え合わせ...したいな...。
〇〇:今から...。
桜蕊降る頃、寂寞の思いを抱きながら。
end
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