タクシーのアジョッシ

今日で京アニの痛ましい事件から1年だそうだ。
その日の私は、例によって仕事をこなしてから渡韓する日だった。
なぜそれを思い出したかというと、その翌日に韓国で乗ったタクシーの運転手が、京アニの事件を話題にしてきたからだ。

去年の今頃は、韓国で反日感情がものすごく盛り上がってる時期だった。
だから、少し現地で行動するのにも気を張っていたんだけれど、タクシーのアジョッシに京アニの話題をふられて、びっくりしたし、昨日の今日で情報はやいなぁと感心した。反日の話題で持ち切りのはずなのに、そんなニュースもチェックするんだなあ、と。

何度韓国に行っていても、やっぱりタクシーに乗るときは少し緊張する。
だって初対面のおじさんに乗せてもらうんだもの。
幸い、ぼったくりタクシーに乗ってしまったことはないけど、運転手のおじさんにもいろんなタイプがいる。

①乗車から目的地まで、まったく無言のアジョッシ。
②外国人だな、日本人かな、と分かると、話しかけてくるアジョシ。
③すこし日本語をやってたんだ、と自慢げに話してくるアジョッシ。
もっとあるかもしれないけど、だいたいこんな感じ。
②か③が多い気がするけど、その中には反日感情むきだしの人もいたりする。おもしろパターンでは、日本人ですか?と確認されたあと、車内でキリスト教の布教CD日本語バージョンをかけて降りるまでずっと聞かされたりもした。そのシチュエーションがおもしろくて内容は覚えていない。
①のパターンでソウル市内、深夜だと、100キロとかでめちゃくちゃ飛ばすアジョッシもいるからちょっと怖い。

そういう国なんだと割り切ってはいるけど。ちょっと嫌な気持ちになることもあるタクシー。中には本当に優しいアジョッシももちろんいる。

京アニの話題をふってくれたアジョッシは、その事件のことをきいて、すごく胸が痛んだと言っていた。

またそれから数か月後に渡韓したときのタクシーのアジョッシとの会話を覚えている。
まだ数か月しか経っていなかったので、日本製品不買い運動やら、デモやら、そんなニュースが日本では連日報道されていたときだったと思う。
仁川空港から、ソウル方面に向かうタクシーだった。
拙い韓国語で行先を告げると、いつものように、どこの国の人?というやりとりから始まって、日本人ですと言うと、あ~よく来たねと言ってくれた。
「今の時期、ちょっと怖くもあったんですけど、好きな歌手がいるので来ました」なんて話をすると、
「怖いなんてことはないよ、あれは一部の人だからね。国と国の問題で、民間はそうじゃないんだから。」と言ってくれて、すこし安心した。

そこから、何歳なの~?なんて聞かれて、アジョッシにも私と同い年の娘がいるということで少し場が和んだりした。
娘も未婚で、仕事が忙しそうだと。やっぱりはやく結婚してほしいものですか?と聞くと、「う~ん、本人がしたければすればいいんじゃないかなぁ、仕事をしたいならすればいいし。」と。
私が勝手に抱いていた、韓国の家族は娘をはやく嫁がせたいものだというステレオタイプが崩れた瞬間でもあった。(ドラマの見過ぎね)

その他には、一日どのくらいタクシーに乗っているのか、最近はどこの国からの旅行者が多いか、空港にはどのくらいタクシーがいるのかなど、アジョッシに質問攻めで、何かの取材のようになってしまったけど、
空港にいるタクシーのアジョッシたちは、台数も多いのでとにかく待ち時間が長いということが分かった。だから色んなニュースにアンテナを張って、たまに乗るお客に投げかけたり、自分の考えを投げてしまうんだろうなぁと思った。

13時間以上外をまわっているアジョッシに、腰は痛くないですか?大丈夫ですか?と言ったら、少し照れくさそうに、嬉しそうに大丈夫だと言ってくれた。
時間にすればほんの数十分だったと思うけれど、いいアジョッシにあたると色んなことが分かるので、なるべく話しかけようと思う。

京アニのニュースから、こんなことをふと思い出したんだけど、何だかすごく昔の話のように感じる。
新型コロナウィルスの影響で、未だに各国が以前のように自由に海外には行かれないけれど、それまで数万とお客を受け入れていたタクシーのアジョッシたちは大丈夫だろうか…。

思えばイベントがあれば本当にしょっちゅう韓国に行っていた。ちょっと地方遠征するレベルで。
変換プラグを忘れたこともあったし、パスポートを忘れかけたこともあった。それくらい私にとっては身近な場所になっていたし、今だってユクサムネンミョン(冷麺)が食べたくて仕方がない。それを食べないと夏が来ないと思っていたから。信じられないくらい暑い真夏に、涼しいカフェに入ってアイスラテを飲みたい。ジャモンジュースでもいいなぁ。汗をかきながらタッカンマリにソジュってのもあり。あぁ行きたくなってきた。。
誰かが言っていたけれど、去年までのうちに、『軽率に渡韓』しておいて良かったのかもしれない。今後まだしばらくは、そうはいかないんだろうな…。

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