フィアナ伝説:水を引かせる者、コナンとリア

水を引かせる者、コナン

ráither Conáin Chind-tshugmuire Ruaidhe, óir is leis do tráigheadh Loch Lorgán ag iarraidh Mic in Luinn ann .’ Et dob fhíor don doirseóir a ndubairt uile ann sin ré Fiond, óir is é Fiond dorinne na héachta sin uile.
前略)……(彼を)赤い湖を吸う者、コナンと呼ぶ。なぜならそこでマク・アン・ルインを手に入れるために、ラーガン湖の水を引かせたからだ。門番がフィンに対して言ったことの全ては真実だった。なぜなら、彼らのその全ての虐殺を行ったのはフィンだったからだ。

上記は「コナンの屋敷の饗宴」(Feis Tighe Chonáin、10世紀から13世紀に成立)という物語から抜粋して訳したものです。この中の、彼らの虐殺というのは、コナンの両親と兄弟及び妻の両親をフィンが殺したということを示しています。
この物語は、「古老たちの語らい」でも語られています。詳しくはこちら

クウァルの娘、スカースデルクがラーガンの湖にいる竜≪スミルドリス≫を目の当たりにして溺れてしまった。
後にブルーム山と呼ばれることになるエドレカイルの息子スウォーイルの山の頂上からラーガンの湖の渦巻く冷たい水が湧き上がって撒き散り、はるばるここからこの国中に広がる恐れがあったのはこの泉のことなのだ。
それからフィンは後にも先にも誰もなしえないような偉業を打ち立てた。
彼は東方の地≪インディア≫から(湖を)吸う者を、ゲルマン人の地≪アルウァーン≫から魔法使いを、サクソン人とフランク人の地から女戦士たちを連れてきて、彼らは渦巻く冷たい湖から水を引かせた。

エドレカイルの息子スウォーイルの山というのは下記抜粋の「コナンの屋敷の饗宴」でも言及されている場所です。

私(フィン)が最初に泳いだのは、エドレカイルの息子スウォーイルの山の側のクリスィルリィン(Crithirlinde)の噴水だった。
※Crithirlinde…震える湖の意味か。

震える湖の噴水、とは水の噴出現象に対する言及でしょう。これらの伝承でフィン・マックールはラーガン湖の噴出の際に水中にいたことがうかがえます。(補足として、こちらを。幼いフィンが水の中に投げ込まれ、ウナギ/蛇/竜を手にするといった逸話があります)
この時に水を引かせることが出来た人物がコナンでした。ではこのコナンはなぜ家族をフィン・マックールに殺されたのか。彼らの確執の一端がフィン歌集の第47歌「カイールテの剣」に存在しています。以下に抜粋。

嘘偽りなく、そなた※によってルアハー・デザのリア(リア・ルケア)は殺された。その行為は復讐だった。私たちにはそのことを勝ち誇る権利がなかった。
その年、マク・アン・ルインを持ったコナンが毎日一人のフィアナを殺した。二度傷つける必要はなかった(一太刀で殺した)。

※”そなた”とはフィンの家宝の剣に対する呼びかけ

これは、コナンの親であるルアハー・デザのリアがフィンによって殺害されて、コナンはフィアナ騎士団と戦いを繰り広げていたという記述になります。
この後に、「コナンの屋敷の饗宴」では、フィンはコナンとその妻を助命して、まだ腹の中にいる赤子が男子であれば仲間に入れ、女子であれば相応しい教育を受けさせて自分か他の誰かと結婚させる約束をしたと述べています。一方、「古老たちの語らい」では、コナンはフィンの背後から近づき、戦いをやめさせて和解を求めました。その後、コナンは人里離れた場所に隠れ住み、ベッドの上で死ぬことができた四人のフィアナ騎士の一人だったと述べられています。彼の最期は頭に毒虫が入り込んだことが原因でした。

さて、リアの息子のコナンはどのような人物だったのでしょうか。
・ディンシェンハス(地名伝承)
・フィン歌集
・古老たちの語らい
これらの三つの物語集にはコナンにまつわる共通の物語が存在します。それぞれ細部は微妙に異なるのですが、フィン歌集第一歌の「エアルグナの誘拐」を紹介します。

私は禿頭(聖パトリックのこと。剃髪から)が来る前の、偉大なるフェルグスから公正なオシーンの時代までのフィンのフィアナ騎士団の物語を知っている。
カルプルンの息子、偉大なるパトリックよ、騎士団には二人の立派な者がいた。彼らは、ルアハーのリアの息子のコナンと正しき憤怒のアエド・リンといった。
コナンよ、スコットランドやアイルランドの土地にいるフィアナでより良い者は誰か? ロナンの息子のアエド・リンよりも勇名を馳せた英雄はいなかった。
アエドの父親を諍いから殺したのはフィンだった。そしてそれは名誉ではなかった。アエド・リンと予言者フィンは、二人の兄弟の子供たちだった。
フィンは幸いなるロナンの息子に彼の父の人命金として要求されたそれぞれの高価な賠償を屋敷に用意した。
武勇を披露したアエドは彼の父のために得た賠償に喜ばなかった。その男が悲惨な行為を行い、そこから激しい悲劇が生まれたのだった。
アエド・リンには娘がおり、彼女はアイルランドで最も愛らしく、彼は目に入れても痛くないほどかわいがったのである。その乙女の名前はエアルグナと言った。
アエド・リンは皆が聞いている中で、自分の婿になろうとする者は無傷ではいられないと誓った。
アエド・リンは幸運にも生まれてから彼の言葉を違えたことはなかった。情熱的な英雄でも敢えて彼の娘に求婚しようという者はいなかった。
それからコナンの配偶者が死ぬまで四年七か月と束の間の一週間だった。
二つの山の間のガヴラには、ブレガのロナンの娘のリフィという高貴な女性が住んでいて、彼女の名前が川の由来となった。
高貴なる者、偉大な君主であるコナンには良き妻がいなかった。アイルランド中でも彼に釣り合う女性はアエド・リンの娘エアルグナしかいなかった。
フィンは屋敷の中でルアハーのリアの息子のコナンに言った。
「コナンよ、お前は武勇を披露してみせたといのに、どうしてアエドの娘に求婚しないのだ」
「彼女に求婚しに行こうと思っているので、あなたの家臣たちを私に貸してくれないか」
武勇に優れた二百四十人が彼女を求めに行った時の私たちの兵力だった。偉大なアルムから武功を立てた二百四十人が旅をして、シュア川の清流の土手のアルド・ルズィのアエドの砦に向かった。
私たちは勇敢なアエドの砦にたどり着き、ロナンの砦に入る許可を得た。アエドはそこにいなかった。彼は危険なブレフネに行っていたのだった。
コナンはたおやかな乙女を見て、彼女の肩に隣り合って座った。
その若者が言った。
「その女性を残さず連れ出せ、全力で」
それからすぐに堅い剣のロナンの息子が北から帰って来た。彼はその乙女を残した砦にすぐに進んでいった。
彼らは、武器を持った勇敢なアエドに、エアルグナが明るい清流のシュア川からレンスターの広大なアルムにコナンによって連れ去られてしまったことを伝えた。
「私を敬愛しているコナンがやったことは、私の誓いを破るものではない。大胆な英雄が彼に釣り合う善き妻を得たということは私にとっても喜ばしいことだ」
コナンと美しく見目好いエアルグナ、彼らの結婚は両者にとって幸せだった、フィンの息子の胸の奥深くが彼女への愛のために傷つくまでは。
誰も敢えて問題を解決しようとしなかった。オシーンは彼女に袖にされても夢中だった。そしてコナンは、一人一人数えたところ、アイルランドでも九番目に怒り狂う夫だった。
その小王(アエド・リン)はラース・キアナズに行き、そこで戦うことも、不和も貢納もなく、ロナンの息子のカイールテの一団の中で一年を過ごした。
私たちがボイン川に行った時のこと、オスカーは彼自身が生きている間に西にも東にも(敵から)退かないと、大いなる誓いを立てた。
そこでアエドがオスカーに言った。
「そのこころよい誓いが果たされるのなら、そなたの生涯は幸いというものだ、幅広の武器のオシーンの息子よ。
私に教えよ、クウァルの息子、アルムの勇ましきフィンよ。私が自らの言葉を違える場所を東西に貴方は見つけるだろうか」
刃を携えたフィンが言った。
「良くない不名誉がそなたに降りかかってしまっている。結婚式の贈り物なしで、礼儀を尽くした求愛なしで、そなたの娘はそなたの意志に反して連れて行かれてしまったのだ」
アエドは直ちに声に出して答えた。
「不名誉は悔やむべきことだ。コナンを彼の功業ゆえに殺し、娘を手に戻そう」
優れた技のフィンは活発なロナンの息子のアエドに言った。
「そのようなことは言うな。しかし、リアの息子から、一対一の断固とした権利の正義を要求しなさい」
私たちが一緒くたになって、アーンの下流に到着すると、アエドは巻き毛のコナンに、花嫁の法的な代価を要求した。賢明なコナンは言った。
「彼女に言うのなら話は別なのだが、あなたが生きている限りあなたから何も得ないという旨の誓いを私は立ててしまった」
「これが知るべき時だったのか」
アエドは滝の上で言った。彼は戦装束に身を包み、手ごわい敵に会いに行った。コナンは憤って、彼の緑色の地の中央が赤い盾に向かった。そしてその戦士は素早く自分の剣と兜を手に取った。
サイウェールの島と今では呼ばれている、鳥の島に私たちは行った。
(註:現在のシャノンブリッジ、スナヴ・ジャ・エーン(二羽の鳥が泳ぐ川の意味)のことと思われる。地名伝承にも同類の話が残されている)
アイルランドの戦いの二本柱が一対一で対峙するがままに任せた者は、嘆かずにはいられない。その者たちを見た者は嘆かずにはいられない。アイルランドの戦いの二本柱の一騎打ちを許した英雄たちは嘆かずにはいられない。
互角の戦いでコナンに思いがけない一撃を与えた者は嘆かずにはいられない。その時、彼はコナンの兜の真ん中を割って、頭を骨に達するまで裂いた。そしてコナンは瞬時に判断して、アエドに一撃を与え、肩から首と右腕を袈裟懸けに巧みに勇ましく斬った。決闘の後に、愛されたコナンは立ち上がった。そして美しい顔のロナンの息子はその島に埋葬された。
戦いに従事したコナンは一か月と一週間、床に臥せていた。医者たちは彼の傷の全てがすぐに現れると予測していた。
コナンは一年間生きて、ある日、エフズルウの平原にある茶色いダーラの道で気が狂った。アエド・リンの剣の毒によって、毒の虫が彼の頭に入り込んだのだった。彼は十二日の闘病の末に浅瀬の多いダーラの平原で死んだ。
響き渡る司教杖のパトリックよ、これがアエド・リンがいかにしてリアの息子の手にかかって、勇ましく戦いの中で命を落とした悲劇的な死の顛末だ。
パトリックよ、お前の十字架が私の頼りだ。多くの無為な考えが私を楽しませた。フィアナ騎士団が忘れ去られてからというもの、私は娯楽も飲酒も喜ばない。私はフィアナ騎士団の長に置き去りにされたドゥブ・デードだ。この日から私は女性とは付き合わない。私はフィアナ騎士団の運命をよく知っている。私は物語を知っているのだ。

さて、おおよその共通するストーリーは以下のようなものになります。
1.アエド・リン(またの名をフェルドウァン)はフィンに父を殺された過去からかつて敵対関係にあったが、後に和解した。
2.リアの息子のコナン(あるいは、ダグザの息子コナン、モーナの息子のコナン)はアエド・リンと乙女を巡って対立する。
3.フィンの息子のオシーンが乙女に恋慕からアエドとコナンを対立させる。
4.アエドとコナンは決闘の果てに死ぬ。

コナンの親、リア

これらの物語でコナンの親として挙げられるのが、リア、ダグザ、モーナです。
これらの逸話でモーナの息子のコナンとリアの息子のコナンは同一視されているか、混同されていると言えるでしょう。また、レンスターの書の散文版ディンシェンハスでは、コナンの父親として神であるダグザの名が挙げられることも興味深いです。
古老たちの語らいでは、スナヴ・ジャ・エーンでモーナの息子のコナンがフェルドウァンと、ダグザの孫娘であるフィンニーを巡って殺し合ったと語られています。コナンはダグザの息子か、ダグザの孫娘の夫という立場でもあったようです。
そして、フィン歌集「カイールテの剣」ではフィンによるコナンの親であるリアの殺害が復讐であり誇れないこと、「エアルグナの誘拐」ではフィンによるアエドの父親のロナンの殺害が不名誉であることから、不名誉な親の殺害という点で共通していると言えます。

ところで、ルアハーのリアという名前の人物は、フィン・マックールの養母でもあります。そこでこの話に関連するであろうフィン・マックールの養母について以降は触れます。以下は「ケルト諸国の妖精信仰」からの抜粋です。

アーマー州から逃亡した時のこと、フィン・マックールは彼の母の足を抱えて肩車した。
しかし彼の移動はあまりにも速かったので湖の畔についた時には彼の母は二本の足以外何も残っていなかった。そして彼はそれらを投げ捨てた。
しばらくして、フィアナたちがフィンを探しに来る間に同じ湖の畔を通り過ぎた。
彼らのうちの一人であったキネン・モウルはフィンの母親の脛の骨と、その中に一匹のワームがいるのを見て言った。
「そのワームは水を十分に得ることができたなら大いなるものになるだろうな」
「俺が十分に水をくれてやろう」
追跡者たちの別の者が言ってそれを湖の中に投げ込んだ。後にフィン・マックールの湖と呼ばれるようになった。
即座にそのワームは巨大な水の怪物と化した。
聖パトリックが戦って殺さねばならなかったのはその水の怪物だ。
戦いが繰り広げられ水の怪物の血で赤く染まり、その湖はダーグ湖(赤い湖)と呼ばれるようになった。

以下のようなコナンの屋敷の饗宴の言及についても一考する必要があるでしょう。

(フィンが話しているセリフ)
養母のボドヴァルがクラン・モーナによって殺害されて別離した最初の日、私はルアハー・デザに迷い込んだ。

ラーガン湖の伝承において、フィンの近親(姉妹あるいは母/養母)が死ぬということはストーリーの骨子でした。(こちらを参照)
フィンの養母であるリアがその後どうなったのかは明言されていませんが、養母という役割上、ラーガン湖の伝承を考えると死亡していとも考えられます。

これまでの物語を整理すると概ね以下のようになります。
1.水が噴出して洪水となる。水の中には竜/蛇がいて、女性が死ぬ。彼女はフィン・マックールの家族である。
2.フィンは水の中に入り、竜は倒される。コナンが水を引かせる。水の中にマク・ア・ルインがある。
3.フィンがコナン/アエドの父親を殺害する。これは不名誉な行いだった。
4.コナン/アエド・リンがフィン・マックールと敵対する。彼らが敵対した理由は家族をフィンに殺されたからである。
5.フィンとコナンたちは和解する。
6.コナンとアエド・リンが女性を巡って戦い、両者ともに死ぬ。オシーンが彼らをそそのかしたとする場合もある。

では、リアという人物は男性だったのか、女性だったのか。おそらくどちらでもあったのではないかと思います。例えば、ゴルの親として名前が知られるモーナは、男性としての伝承と女性としての伝承の両方が存在しています。同様にして、リアもまた両方の伝承が存在したのではないでしょうか。
興味深いことに、ゴルのもう一つの名前である、「火を意味するアイド(Aed)は反転させると女神(Dea)になる」と10世紀のコーマックの小辞典に記されています。ある種の女神と英雄は結び付けられて考えられていた節があり、物語における配役によって性別が変わることがあった可能性もあるでしょう。

リアといえば、フィンの父親クウァルを殺害した人物ですが、スコットランドの伝承ではフィンの父を殺害したのはアルカ・ドゥブ・イアシュガルという人物でした。イアシュガルというのは魚を意味するiasgから派生した漁師という言葉です。dubh iasgは直訳では黒い魚ですが、海から帰ってきた鮭という意味になるので、鮭を獲る人という意味かもしれません。(eDILによればアルカ/Arcaは箱/アークが本来の意味ですが、複数の語を組み合わせて○○な人と言った意味になる例があります)
そしてその名の通り、彼は鮭を釣りあげて渋々ながらフィンに鮭を与えたことにより、フィンが鮭の智慧を得てアルカのことが父の仇であると知ってために仇討されてしまうのでした。
以下、Waifs&Strays of Celtic Traditionより。

(養母ルアス・ラーガンの死んだ後のこと)
彼(フィン)は今、友もなく、帰る家も、行く宛てもなかった。彼は近くにあった川に行き、漁師と出会ったので、”幸運のために”釣り糸を垂らしてくれるように頼んだ。漁師はそうしたが、獲れた魚がとても良かったので自分のものとしてとっておいた。するとフィンはもう一度釣り糸を垂れるように頼み、この時も魚(鮭)はとても良かったことが証明されたので、強欲な漁師に川の反対側で魚を調理して、焦げや皮の火ぶくれをつけてはならないと言われた。フィンは魚の皮の一部が焦げ付き始めているのを見た。フィンは手で適度な場所に戻そうとして、そうしている時に火傷して、指を口の中に入れた。このようにして彼は有名な伝承で度々言及されている智慧の歯を得たのだった。この歯は、指を押し当てている時に彼を疑問の解答者にする知識を与えた。この機会に彼は漁師アルカが彼の父親を殺害していた者の一人だったと知った。アルカが彼のところに来た時に、彼はクウァルの死に様がどのようなものだったのか訊ねた。アルカは彼に話した。
「私の槍が背中から貫いた時に、彼は一歳の子牛のように吠えて、去勢された馬のように最期の息を吐き出した」
(以降、別伝の同じシーンの続き)
それから、彼はいかにしてアルカが父を殺したかを知ると、「これからお前を殺してやる」と言って、アルカの釣り竿を取り上げて彼の膝に叩きつけて壊した。彼は竿の残骸でアルカを叩きのめしてから殺した。

上述のように養母ルアス・ラーガンが死んだ後にその脛の骨を捨てた湖の近くにある川で、フィンは鮭の智慧を得て、父の仇を討ちました。このことは以前の考察でも触れていたことなのですが、「養母の死」と「智慧の獲得」が実は関連していることを示唆しているように思えます。

ここで、ブリテン島で語られた伝承を紹介します。マビノギオンの一篇「エヴラウクの息子のペレディールの物語」です。(Peredur、ペレドゥルと訳するものもある)
以下、中野節子先生の「二つの怪童物語を追って」からの引用となります。

(ペレディールは)ある伯爵夫人の領地を荒らしていたカエル・ロイウの9人の魔女たちの城に, 3 週間の間とどまって, 馬の乗り方や武器の使い方を習うことになる。 しかしこの時点ですでに魔女たちは, この男がやがて自分たちを滅ぼす者になることを予見している。 最後の決戦で, 魔女たちの予感どおり, ペレドゥルと彼を応援するアルスルの軍勢によって, 魔女たちは全員殺されたと物語は語っている。

ペレディール少年はカエル・ロイウの魔女たちから武芸を教わっているのですが、それでも、彼女たちが実はペレディールの従兄弟を殺害して伯父(いわゆる漁夫王)の脚を不具にしてしまっていたという過去がありました。そしてペレディールが彼女たちを皆殺しにして仇を討つといったことが予言されており、魔女たちもそのことを知っていながら武芸を教えていたのです。
この九人の魔女というのはアーサー王伝説に繰り返し登場する、聖杯(魔法の大釜)と密接な関係を持った一団です。
カエル・ロイウの魔女は若き英雄に武芸を授け、そして若き英雄により殺される運命にありました。
このペレディールの物語とフィンの物語の共通点として、「鮭/魚」「漁夫/漁師」「養母による親族の殺害」「敵対する養母の死」「父の兄弟の救済」「神秘の獲得」「予言されている」といった要素が挙げられるでしょう。
父の兄弟とは言うまでもなく、フィンの場合はコノートに隠れていたクリムナル、ペレディールの場合は脚萎えの叔父/漁夫王です。
神秘とは、フィンの場合はコルボルグ(鶴革の袋、あるいは鎧)、マク・アン・ルイン(剣)、智慧等、物語によってさまざまな物が該当します。ペレディールの場合は、明確なものごとではないですが、聖杯伝説の原型として不死/豊穣/智慧といった神秘や魔法に紐づけられていると考えられています。
ですのでこのような養母との因縁と復讐の物語が原型としてあったとすると、コナンの復讐の動機や、リアとの過去の関係のおおまかな全体像について理解できると思っています。

出典

Maud Joynt, Feis Tighe Chonáin (Dublin 1936).
[ed.] [tr.] MacNeill, Eoin [ed.], Duanaire Finn: The book of the lays of Fionn, 3 vols, vol. 1: Irish text, with translation into English, Irish Texts Society 7, London: Irish Texts Society, 1908.
Campbell, J. F. (1890–1893). Popular Tales of the West Highlands. Vol. I–IV (New ed.). Alexander Gardner.
中野節子. (2009). 二つの 「怪童物語」 を追って―ペレドゥルと金太郎―. 大妻女子大学紀要―文系―, 41.

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