フィアナ伝説:スリーヴ・カーンの戦い(Cath Sléphe Cáin)

両者、すなわちフィンとゴルは互いに前に進んだ。丘を斬り伏せ、武装に身を固め、楯を打ち鳴らした。
死ぬのは二人に一人、互いに殺し合った。フィンは吠えて一撃をくらわせ、ゴルはうめき声を漏らし、フィンの息子オシァンは優しく音楽を演奏し、モーナの一族は打ち破られた。

※elcuig indalanae(bad-get? one of the two)
死ぬのは二人に一人としましたが、ぶっちゃけよくわかんないです。

Cath Sléphe Cáinより

600年から900年頃のものとみられる古い散文です。フィン・マックールがゴルと勝負をして殺すストーリーは珍しいと思います。例えば「古老たちの語らい」ではフィンに包囲されたゴルが餓死しますが直接彼が手を下しているわけではないです。

両者が丘を斬る描写は「クアルンゲの牛捕り」でのフェルグス・マク・ロイヒを彷彿とさせます。話は全体的に殺伐としていますが、オシァンだけは異質な優しさを見せています。戦士としてではなく、詩人あるいは死者を悼む存在として描かれているようです。また、アイルランドにおいて高位の詩人は演奏は行わないのですが(別に演奏家がいる)、オシァンが演奏を行っていることは注目に値すると思います。

追記
Sléphe Cáinは日本語ではスリーヴ・カーン(美しい山)です。この戦いがどこで行われたかは正確にはわかりませんが、ケン・アヴラ(Cenn Abrat)という山の別名がスリーヴ・カーンであるため、もしかするとフィン・マックールが戦ったケン・アヴラの戦いの一場面なのかもしれません。ケン・アヴラは現在のシーフィン山(フィンの座)に比定されています。

参考文献

Kuno Meyer, ”Cath Sléphe Cáin inso” , Zeitschrift für Celtische Philologie 8,  (1912) : 105


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?