血の抜かれた世界
だんだんと、思い出せなくなってゆく世界がある
それは、夢と現実に、あまり境界線のない世界
その世界は、砂や朽木で全てが構成されていた
夏にも関わらず気温は2度もないくらいだ
おおよそ、生命と感じられるものは存在していなく、
全ては可視化した意識そのものだった
そこでは、一切の関わり合いが無に等しく、また無意味であった
血の抜かれた世界とは、意識であった
なぜなら、この世界は私という生命体の消滅と共に無くなるではないか
母が死んだら、私の世界から”母”が消滅して終わるだけだが、
私が死んだら、”世界”そのものが消滅するのだ
そんな人間的ニヒリズムの誘惑によって血の抜かれた世界は創造された
成長と共に、知識や、極めて俗世界的な日常の、陳腐な出来事どもが、
この世界の上に山積みになってゆく
”社会”が無礼にも、無頓着に、土足で介入してくる
今では、ジョルジ・デ・キリコや、サルバドール・ダリの絵画たちが、
あの世界の片鱗を忠実に捉えてくれたおかげで
扉の前に立たせてくれる
しかし、いつか戻れなくなるのではないか.という不安が憑き纏う
私は思い出したいのだ
血の抜かれた世界の中に忘れてきた、感性を
あの世界は、まだ未発達なのだから
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