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目を癒す習い事

「はい、立ってください!」
先生の一声で子どもたちが一斉に立ち上がる。

「はい、今日もよろしくお願いします」

「「お願いします!!」」
プールサイドに子どもたちの元気な声が響いた。

長男が水泳を習い出して2年ほどになる。


彼は水が苦手である。
初めての子、ということもあって沐浴のときは本当に慎重に、

「あっ、顔に水かからないように!」
「ガーゼで優しく優しく!!」

なんて、すごく気を使ってお風呂に入れていた。
そのせいなのかは不明だけれど、つい最近までシャンプーをシャワーで流すときは、ギュッと目をつぶり、しっかり手で顔を押さえるほどの水嫌いだった。

プールを習い出して2年たつ近頃は、やっとそんなこともなくなってきたけれど。

長男が産まれた時と違って、今は赤ちゃんの沐浴のしかたも変わってきたようで、助産師さんから指導を受けて驚いた。

「大丈夫です。頭からシャワー(水圧は緩め)でじゃーっとかけてあげてください」

「えっ、ガーゼは、、」

「いりません」

(へぇー!6年の間にいろいろ変わったんだなぁ)

それならば、と、遠慮なく次男の頭からシャワーのお湯をかける毎日。
助産師さんが言うとおり、次男は泣き叫ぶこともなく、へっちゃらだ。


話がそれてしまったけど、そんなこんなで今日は長男のプールの付き添いだ。

最初は食い入るように我が子を見学していたが、最近ではすっかり飽きてしまった。

だいぶ泳げるようになってきたし、ガラスの向こうから少し照れくさそうに、こちらに向かって手を振ることもなくなった。

子どもたちに水泳を教えてくれる先生は若い先生が多い。
もちろん年上のベテランの先生もいるけれど、多くはわたしより年下の先生ばかりだ。

水中に飛び込めば、しなやかに泳ぐ姿はイルカのようで。

ザバッと水から上がるのは鍛え上げられた美しい身体。
ハリのある肌の上で水滴がはじけて、若々しさを主張している。


うーん、
濡れた肌ってなんかエロい。

ついつい我が子そっちのけで、若い先生ばかり目で追ってしまう土曜日の午後。



プールの塩素のにおいがこちらにまで届くので、つい懐かしい記憶が引っ張り出される。

小学校の時のプールの記憶。


学校のプールの更衣室の湿気の不快感。

落ち葉や死んだ虫が浮かんでいるプールがすごくイヤだったこと。

あの専用の水道で目を洗うのが嫌いだったこと。←今は洗わないらしいね

高学年になってくるとなんとなく気恥ずかしい、男子の目線。

少し気温が低い日は、唇が紫色になりながらガタガタ震えたこと。

濡れた髪で受ける、プールの後の授業の気怠さ。


あの懐かしい気怠さも
もう、二度と味わうことはないのだろう。

子どもができて、いろいろな経験をするようになるたび、『あぁ、わたしはもうそんな経験することないんだな』って思ってしまう。

息子の『経験』を自分の『記憶』に重ねてしまうのはわたしだけなのだろうか。。



「ピッピッピーー…」

プールサイドに終わりの笛の音が響いて、我に返った。

「ママ!またスマホばっかり見てたやろ!」
なんて、着替えた息子にまた言われるかな。

(違うよ、昔を思い出しながら、先生の身体を見てたんだよ)
とは口が裂けても言えないなぁ。



…ちなみに、息子のクラスの先生は女性です。

男女どちらの先生を想像をしていましたか??笑






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