日露青年交流の参加者レポート
数年前、とある国際交流プログラムに参加した。その際主催者に提出した参加者レポートを久しぶりに読み返して、眠ったままにしておくのは惜しいと思い、ここに公開することにした。ただし、プライバシーの観点から内容をある程度改変している。
1日目
✕✕側以外の参加者とは事前説明会が初対面だったが、うまくやっていけるかという不安は間もなく消え去った。日本人同士がすぐに仲良くなれたのは、出発までTさんとIさんが楽しい雰囲気を作り出して下さったおかげだと思う。
ウラジオストク空港からSさんの車に乗ってホテルに到着した。プログラムを通じて、ロシア人参加者の運転する車とタクシー合わせて3、4台に分かれて乗り込むというのがお決まりの移動手段だった。
歓迎レセプションでは「思った以上に英語が通じない」という声が多く聞かれた。早くも言葉の壁に圧倒された参加者が少なくなかったと思う。ロシア語を話せる身としては、通訳で助けるべきか邪魔にならないよう引くべきかという難しい判断を常に迫られていた。
2日目
午前はマトリョーシカ絵付け体験。まさか描きながらロシア国営放送のインタビューに応じることになるとは思いもしなかった。先生の教え方が上手で絵の苦手な私でも楽しむことが出来たが、日焼けしすぎと肌を描き直されたのは不満である。別に黒人のマトリョーシカがあっても良いではないか。
午後のチェストーナメントでは■ポイントを獲得し、■人中■位で日本人■位の成績。これは本当に嬉しくて大きな自信にもなった。
3日目
午前は書道と落款。書道は参加したが、会場が狭かったので落款の時間はロシア人に席を譲る形でお休みした。
午後の将棋トーナメントでは予選から日本人ばかりが勝ち上がってしまい、選手達から「今は日本人同士の対局ではなくロシア人と交流したい」という声が上がった。Sさんと交渉した結果決勝トーナメントから持ち時間が短くなり、一緒に市内散策する時間が生まれたのは皆のファインプレーだったと思う。
4日目
午前のチェスは日露対抗戦で、私は2局指して連敗。特に2局目は最終日まで落ち込むような悔しい負け方をしてしまった。真剣勝負だからこそ、楽しいだけで終わらせてくれないのが将棋チェス交流だと思う。
午後はペア将棋。感銘を受けたのはロシア人の対局マナーの良さである。静寂を徹底的に叩き込まれたチェスプレイヤーは、将棋でも決して対局相手を不快にさせることがない。「礼に始まり礼に終わる」を口先だけで実践している将棋指しはよく見習うべきである。
5日目
極東連邦大学の日本語授業を見学した。どのクラスもレベルが高く、時には我々も理解できないような高度な内容で、私のロシア語学習にも良い刺激になった。
水族館ではイルカショーの後展示を回ったが皆疲労困憊で、最後までガイドの話を聞いていた日本人は私とT君の二人くらいだった。
6日目
あとは帰るだけ。このプログラムで嬉しかったのは、皆それぞれが新しい目標を見つけていたこと。これを機に将棋やチェスを頑張ろう、或いはロシア語を勉強してみようという人が多かった。
残念だったのは、何人かの日本人があまり「日露交流」出来ていないように見受けられたこと。理由は個人のやる気、言葉の壁、環境、ロシア人側の問題等が考えられるが、今回の場合は日本人に対してロシア人が少なすぎたと思う。将棋やチェスが交流の媒体として理想的であることは言うまでもないが、人が居ないことには交流が始まらない。
空港まで同行してくれたロシア人とは、"Увидимся в Японии!" "Конечно!"と言って別れた。来年、それが実現することを心から祈っている。
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