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感想:まいにちフランス語入門編「自己表現のためのフランス語 Parler de soi en français」

2022年4~9月 入門編(新作)
講師:中條健志
「自己表現のためのフランス語 Parler de soi en français」

評価(5段階):☆☆☆

私は初学者ではないので、入門編にはレベルの高さや学習進度の速さを求めてしまう。その点でこの講座は期待できるものだった。テキスト4月号を読む限り、発音についての説明があっさりしていて、第6課で早くも人称代名詞の強勢形が扱われており(後期で強勢形が扱われたのは第30課)、ある程度の学習経験を前提としているように思われたからだ。

しかし、放送が始まってしばらくするとこの期待は裏切られてしまう。ひたすら同じことを反復練習するばかりで新しく得られる知識がほとんどなく、発展的な文法事項が一向に現れない状況に焦りを感じるようになった。実際、5月に書いたNHKラジオ まいにちフランス語 2022年度上半期には不満しか綴られていない。

まず文字と発音をしっかり身につけ、文法を基礎から積み上げていく学習方法しか知らない私にとって、この講座の一見すると非体系的な教え方は馴染みがなく、理解しがたいものだった。だから勝手に期待して勝手に幻滅してしまったのだが、この講座のテーマが「自己表現のためのフランス語」であることを考えれば納得できたはずだ。あまり発音や文法に意識を向けるとかえって表現できなくなってしまうのが語学なのだから。

ラジオ放送では講師の中條先生とパートナーのドナシメント先生が淡々と進行する。二人の間で会話らしきものはなく、オープニング曲やディアローグも含めて終始落ち着いた雰囲気で、はっきり言って面白味がない。しかし、この面白味のなさこそがこの講座の最大の魅力である。余計な情報が耳に入ってこないため、15分間勉強に集中させてくれるのだ。明るい雰囲気の番組は聴いていて疲れてしまう。

5月の記事の最後に「最後までやってみなければ良い講座かどうかはわからない」と書いたが、実際最後の9月になって良い講座だと評価を改めた。理由はなんだかんだ言って勉強を楽しんでいる自分に気づいたからである。この頃はまいにちロシア語と同時に学習を進めていたが、毎日先に手を付けるのは決まってこちらの方だった。これはフランス語の方が好きだからとか、楽だからという単純な動機だったかもしれないが、講座自体の魅力も大きかったと思う。

なぜ面白味のない勉強がこんなに楽しませてくれるのだろうか?答えは4月号「今月のことば」にあるよう思う。「講座では、文法や発音の規則について考えるときも、フランス語でやり取りしたり、読んだり書いたりするときも、主人公はいつも皆さんです。」

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