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チェスプレイヤーで学ぶポーランド語の発音入門
5月8日から17日までチェスのポーランド選手権が開催されています。決勝は GM Wojtaszek と GM Piorun の組み合わせとなりました。
ポーランドはFIDEの国別ランキングで12位の強豪国で、多くの有力選手を輩出していますが、ポーランド人選手の名前の読み方に苦労するチェス愛好家は少なくないようです。そこで今回は、ポーランド選手権2022に出場した16選手の名前を例に、ポーランド語の綴りと発音を解説します。
ポーランド語の母音には a, e, i, o, u, y, ą, ę の8個がありますが、a, e, i, o, u は日本語とほぼ同じと思って構いません。残りはウィ、オン、エンのような発音です。以下では混乱しやすい子音字を中心に取り上げ、日本語や英語と同じような読み方をするものには触れません。
Igor Janik イゴル・ヤニク
綴り字の j は /j/ と発音します。「ジャ」ではなく、「ヤ」の子音に相当します。
Mateusz Bartel マテウシュ・バルテル
連字 sz は一つの子音 /ʃ/ を表します。英語の sh に似た音です。
Tomasz Warakomski トマシュ・ヴァラコムスキ
w は /v/ と発音します。英語の v に当たる音です。
Miłosz Szpar ミウォシュ・シュパル
l に斜線の付いた ł は /w/ と発音します。英語の w に当たる音です。
Paweł Teclaf パヴェウ・テツラフ
c は /t͡s/ と発音します。「ツ」の子音に当たります。
Bartosz Soćko バルトシュ・ソチコ
ć は /t͡ɕ/ と発音します。「チ」の子音に近い音です。
Jacek Tomczak ヤツェク・トムチャク
連字 cz は /t͡ʃ/ を表します。英語の ch に似た音です。
Łukasz Licznerski ウカシュ・リチュネルスキ
ポーランド語には長母音がありませんので、「~スキー」とはなりません。
Radosław Wojtaszek ラドスワフ・ヴォイタシェク
w は本来 /v/ ですが、有声子音は語末や無声子音の直前で無声化するので /f/ になります。
Jakub Kosakowski ヤクプ・コサコフスキ
語末の b と無声子音の直前の w が上記の規則により無声化し、それぞれ /p/, /f/ と発音されます。
Grzegorz Nasuta グジェゴシュ・ナスタ
連字 rz は /ʒ/ と発音されます。フランス語の j に似た音です。
Grzegorz Gajewski グジェゴシュ・ガイェフスキ
語末の連字 rz は無声化して /ʃ/ つまり sz と同じ発音になります。
Szymon Gumularz シモン・グムラシュ
y は /ɨ/ と発音します。i と u の中間のような母音です。
Piotr Sabuk ピョトル・サブク
ここでの i は母音ではなく軟音記号で、直前の p が軟子音であることを表します。
Kacper Piorun カツペル・ピョルン
こちらも同様で、日本語の拗音のように発音します。「ピオルン」ではありません。
Wojciech Moranda ヴォイチェフ・モランダ
連字 ch は /x/ を表します。ハ行のように聞こえる音です。ここでの i も母音ではなく軟音記号で、直前の c が軟子音の ć であることを表します。「ヴォイツィエフ」ではありません。
ポーランド語の文字や発音の規則は他にもまだまだありますが、例外が少ないため覚えてしまえば比較的簡単です。皆さんも一度本格的に学んでみてはいかがでしょうか。
続編