教育研修レポートかつやまきのくに子どもの村学園第1回
2019年7月20日、お隣福井県の勝山市にある「かつやまきのくに子どもの村小学校・中学校に行ってきました。
日本一自由な学校と言われるきのくに子どもの村学園。その創設者である堀真一郎氏による【ニイルの思想と子どもの村】の講演会に伺ってきました。
以下、堀真一郎氏講演より
京大の大学3年時、僻地教育について卒論を書こうと思っていた頃にニイルの本に出合う。
~英国サーマルヒルスクールの創設者ニイル(1889~)について~
・父は小学校校長、母は小学校教諭という家庭
・8人兄弟の中で一番勉強ができなかった。
・14歳で卒業、働きに出たが続かず、戻って父の学校の見習教師に。
・小さい村の私立学校の校長になったが、まだ新しい教育思想には至らず、当時は生徒に机の上に手を置かせて鞭で叩いていた。
・その後ドイツ、オーストリアと転々とし、33歳の時サーマルヒルスクール創立。
・そこでは、女の子が裸で池で泳いでいる、聴いている子どもたち自身がニイルの話す物語の中に登場人物として登場する。新しいもの好きのニイル。
堀氏は1971年に初めてニイル(72歳)に出会う。その娘のゾーリは2回勝山を訪れており、寮を見せるとこう言った。「この学校がいかに良い学校か分かったわ!だって、荒れてるもの!」と。
ニイルの言葉【困った子どもは、実は不幸な子どもである】 いたずらしたり、空想に浸っていたり、盗みを働いたりする子は悪い子ではない。かわいそうな子、不幸な子なんです。彼らは内面で自分自身とたたかっている。その結果として、まわりとたたかう。
先生や学校は、親から教育の解除をおこなう。叱らない、抱きしめる、ほおずりもする。
【まず、子どもを幸福にしよう。すべてはその後に続く】
【子どもは愛することはできない。愛されることを求めるだけである】
親の態度が厳格過ぎたり、支配的、過干渉、過保護、放任・拒絶の態度だと、子どもは家庭内暴力などの行動が出る。 親は溺愛すればよい。父母の養育態度が愛情で溢れていると、子どもは良く伸びる。
例:パチンコを作る一日体験教室で、周りをキョロキョロ眼だけ動かしながら見る子は、情報を集めている。自分で考えている。また、完成すると「できたよー!」とお母さんのところへ行ってぴたっとくっつく子は精神的、身体的に安心を得ている。良い関係性。こういう子らはよく伸びる。
~子どもへの肯定的声掛け~
「あと20分しかない!」→「まだ20分もあるよ!」
「急がないと間に合わないよ!」→「急いだら間に合うよ!」
「まだレタスと卵がお皿に残ってるよ!」→「おぉ!もうウインナー食べたんや!」
「あぁもう!またこぼして!」→「コップ割れないで良かったね。」「怪我しなくて良かったね」「ちょっとした怪我で良かったね。」「死ななくて良かったね」
「国語は80点でともかく、算数がんばりなさい。」→「国語80点も取れたん!」
「ほらね、がんばったから70点取れたでしょ」→「70点も取れたん!」
「あと10点やったら100点だったのに」→「90点も取れたん!」
「包丁切れるよ。危ないよ!」→「下を見て。」
「悪い子だ」→「僕はそれは困るんだよ。なんとかして欲しいな」
~きのくに子どもの村学園では~
悪いことしたらごほうび。例:一緒に泥棒に入る(その子には内緒だけど、その家の人には事前に伝えておきます。)そして、抱きしめる。
良いとこ良いとこを見る。
叱るのではなく、その行為によって「誰か困っていない?他の人が嫌なことは気を付けようね」と気が付いてもらえれば十分。
学校生活すべてが道徳。
ニイルの言葉【人はみな生まれた時からさまざまな方法で道徳を刷り込まれている。もちろん合理的な内容もあるが、しばしば子どもの本性に反するようなことも要求される。例えば子どもは本来好奇心に溢れ、動き回るのが好きで、やかましい存在である。落ち着きがなくて、大人には耐えられれないような大声で叫んだりする。それは、大きくなりたい、強い自分を感じたい、たくさんのことができるようになりたい。そんな自然の生きる力の現れである。しかし、たいていの子はもの心もつかないうちから、「とにかく静かにしなさい」と言われ続け、静かにできる子が「良い子」だと思い込まされる。しかしそれは子どもが自然に、つまり経験を通して学び取ったものではない。子どもたちは、あまりにも早くから、モノの見方や感じ方、そして行動の仕方を教え込まれ強制され、多くの固定観念や偏見を、そして大人から叱られるという不安と恐怖を内面化していく。】
嘘をつくことは善でも悪でもない。善い悪いではなく、大人が言うからではなく、自分で考えてみる。
みんなで決める。ルールを破ってしまったら、「みんなで決めるってどういうことか分かる?」責めない。話合いってどういうことか考えてもらう。
次回は、学校の中へ。子どもたちはどんな生活をしているのでしょう。楽しみです。(飯貝真美子)