ノマンズランド #2~シナリオブック~(ハート型の悪魔)
夢か現実かはすぐに区別がついた。
夢であるなら、それはあまりにも鮮明に映り過ぎていたし、なによりこの衝撃ともいえるほどの本能的な恐怖心は現実以外では到底感じることはできないだろうから。
その漆黒の身体は暗闇をもってしてもあまりに真っ黒で、反射一つない異様な体だった。まるでその怪物の周りにだけ光が存在していないかに思えるほど。
運がよかったとしか言いようがないだろう。その大きなものは私を一瞥(という表現は正しいかわからない。あのハート形のなにかを顔というのなら…)し、そのまままっすぐ森に消えていった。
動かなかった身体をなんとか動かし、情けなくも地面を這って動いた。(腰が抜けていた!あの二本の尾をみれば誰だってこうなる) そして無事、文明の明かりにたどり着いた。
のちに思い出したことがある。口だ。奴には口がついていた。ちょうどそれの胸辺りに。
そして何かうなる声も聞こえた。その口から聞こえたのだ。何かが入っていたのだろうか?その口を通して何かが捕食されたのだろうか?生きたままで?
だとしたら あの口はどこまで開くのだろう...。ハエ地獄のように徐々にと化されていくのだろうか...?
そんなことはどうでもいい。捕食された先客のおかげで、私は生き延びることができたのだから。