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期待値があれば本当に勝てるのか?

まず期待値って?

 期待値とは、ある事象が起こる確率pとそれによって得られる利益/損益xを積を、すべての場合で足し合わせたものです。


は?

ってなってると思うので、具体的な解説をします。

サイコロを振って、4以下ならば12ドル貰えて、5以上ならば15ドルを失うといったギャンブルを考えます。
この時の期待値Eを求めていきたいと思います。

まずサイコロは6面あるので、
1)4以下の出目が出る確率p1は4/6
2)5以上の出目が出る確率p2は2/6

1)の時、12ドル貰えるのでx1=12ドル
2)の時、15ドル失うので x2=-15ドル

期待値Eの定義は、
E=P1・X1+P2・X2+…+Pn・Xn
なので、この場面に当てはめると
E=4/6 ・12+2/6 ・(-15)
 =8+(-5)
 =3ドル
よって期待値は+3ドルとなって、このギャンブルに参加するのは期待値+の行動になっています。

なんかまあ難しい解説になってしまった感じがありますが、
期待値のお気持ちは、ギャンブルを無限回したときに平均して得られる金額はこのぐらいだよって感じです。わかりやすく言えば。

よって、この期待値っていう概念は無限回ギャンブルに参加することを前提としたものなので、有限回しか参加することができない現実のギャンブルに適用するには完璧ではない、つまり期待値は+なのに有効ではないみたいな状況も考えられます。これからその例について考察していきます。

期待値は+だけれども・・・


 ギャンブル性がどの程度かを示す指標としてボラティリティというものがあって、ボラティリティが大きければ大きいほど、期待値付近に実際の結果が着地する可能性が低くなります。つまり、いくら期待値がプラスだからと言っても、やらないほうが良いギャンブルというものが存在します。例を挙げます。
 
「1000万円の参加費で、0.00001%で5000兆円が当たり、99.99999%で参加費がすべて失われる。このギャンブルに参加できるのは一人1回である」
 
というギャンブルを考えます。この時の期待値は5000兆×0.0000001=5億で、1000万円の投資で5億円のリターンが期待され、投資額が50倍になるという期待値だけで考えれば余裕で参加すべき事象ですが、現実として参加したくない人がほとんどでしょう。
これはボラティリティが余りにも大きい場面では期待値が機能しなくなるということを表しています。また、上記の例の桁を減らし、何回でも参加できるようにした以下のギャンブルを考えます。
 
「0.01銭(0.0001円)の参加費で、0.00001%の確率で5万が当たり、99.99999%の確率で参加費が全て失われる。このギャンブルには何回も参加できる」
 
この時の期待値は先ほどと同様の計算で、0.01銭の投資で0.5銭の期待値があり、投資額が50倍になるのは先ほどと同様なのだが、この場合多くの人が参加するのではないでしょうか。
この二つのギャンブルの違いは、表面上は
・投資金額の大きさ
・何回参加できるか
の二点ですが、それらは結局「ボラティリティの大きさ」に収束します。
よってこれからは数学的にこのボラティリティの大きさを評価し、それがギャンブルに与える影響を考え、我々がどのようにギャンブルに対応していくのかを考えていきます。
そのために次項でケリー基準なる指標を導入します。


 


ケリー基準


はいもうほとんど脱落していると思います(もう結構あきらめてターゲット絞って解説しています(笑))
はいじゃあ行きますよ~

ケリー基準とは、ボラティリティの大きさと期待値から、自分の最適な投資金額をきめる基準のことです。
このケリー基準Fを求める公式をケリーの公式と言い、以下のように示される
F­­=期待値/オッズ(アメリカ式)
ここでオッズはアメリカ式オッズのことであり、例えば日本で11倍の馬券を1万勝って当選すると、11万円が得られる。アメリカ式オッズは
アメリカ式オッズ=得た利益/投資金額(=(回収金額-投資金額)/投資金額)=日本式オッズ-1
となる。つまり日本式オッズで11倍の馬券はアメリカ式オッズでは10倍です。
ここで例を二つとってケリーの公式を使ってみよう。


例1 まずは先ほどの日本式オッズ11倍(アメリカ式オッズ10倍)の単勝馬券を買う場合を考えます。購入者は正確に確率を見積もることができる超人だと仮定します。この人はこの馬が一着に来る可能性が20パーセントだと予想しました。
このときのケリーの公式の割合Fは
F=0.2×10-1×0.8/10=0.12
つまりこの人は全財産の12パーセントを賭ければよいことになります。


例2
 裏表が出る確率が等しいコインがある。このコインの表が出た時、掛け金は2.1倍になり、裏がでたら掛け金をすべて失う。この時のケリーの公式の割合Fは
F=1.1×0.5-1×0.5/1.1
=0.05/1.1
≒0.045
よってこのギャンブルに対しては総資産の4.5%を賭ければよいことになります


例3
0.01銭(0.0001円)の参加費で、0.00001%の確率で5万が当たり、99.99999%の確率で参加費が全て失われる。このギャンブルには何回も参加できる
この時のケリー基準Fは
F=0.0000001×49999.99-0.9999999×0.01/4999999
≒0.0000001×500000-1×0.01/5000000
=(0.5-0.01)/5000000
=0.49/5000000
=9.8×10^(-8)
≒10^(-7)
よって全財産の0.0000001、つまり0.00001%を賭ければよいことになります。
逆にこれから、自分がいくらお金を持っていればこのギャンブルに参加してよいのかをもとめることができます。この場合では0.0001円<全資産の0.00001%であればよく、
⇔1円<全資産×0.1%
⇔1000円<全資産
となり、全資産が1000円以上ある人はこのギャンブルに参加すべきということがわかります。


参加費が1000万円で勝利したときに5000兆円が当たる先ほどの例

1000万円の参加費で、0.00001%で5000兆円が当たり、99.99999%で参加費がすべて失われる。

はどうでしょうか。
同様の計算で総資産が100兆円ある人はこのギャンブルに参加したほうが利益的であることがわかります。
このように自分の資産に応じて期待値プラスのギャンブルでも参加すべきかするべきでないかが変わってきます。これの指標となるのがケリー基準です。

ここまで手計算でケリー基準を求めてきましたが、ネットにケリー基準計算機があるので、知りたい事象があったならばそれで計算してみてくださいw

また、ケリー基準とはこれ以上賭けるとリスクのほうが大きくなる点であるため、ケリー基準の投資比率をそのまま使うのではなく、半分の投資比率にするハーフケリーというものもよく使われます。ケリー基準に従うと結構資金変動が大きいですし、計算ミスやその他のリスク要因も考慮すると、ハーフケリーぐらいにするのが無難かなとおもいます。

ケリー基準の注意点


ケリー基準の注意点についても述べておきます。このケリー基準を用いるためには期待値とオッズを正しく見積もらなければなりません。例えば競馬はケリー基準の適用がかなり難しいです。なぜなら、特定の馬が一着に来る確率など正しく判断できる人などいるわけがないので、期待値の算出などできないし、オッズも馬券購入締め切りまで不安定で、特に購入口数が少ない穴ねらい3連単など、購入時と確定オッズでかなりの乖離があります。このような不安定性があるので、ケリー基準をそのまま使うのではなく、リスクマネジメントとしてハーフケリー程度にとどめておくほうが賢明です。また、当然ながらケリー基準は期待値プラスのギャンブルにのみ適応することができるベットコントロール法なので、例えば期待値マイナスのバカラにいくらベットコントロールをしようとしても全くの無駄です。投資比率は0%が最適ですw

まとめ

・期待値プラスだとしてもベット額に気を付けないと破産してしまう可能性がある
・破産しないように、かつ最速に資産を増やすための、自分の資産に対する投資額の比率を数学的に教えてくれるのがケリー基準

ここまで読んでいただきありがとうございました~





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