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新章・魔王の娘だと疑われてタイヘンです! 2巻第3章 新たな魔神もタイヘンなんです!①
ノクトベルの西に連なる山中で、二人の少女が魔法の修練に明け暮れていた。
「大地の精霊よ、わたくしの命に従い、その力をお示しなさい!」
少女のうちの一人、ペトラ・プレツィターの足元から、その右手が指し示す方向へと、なにかが弾けるような爆発音が連なり駆け抜けていく。
そしてそれは、その先にあった大岩にぶつかると、ひときわ大きな破裂音を立てて止まった。
「すごい! お嬢様、すごいですー!」
もう一人の少女、プルムが手を叩いて喜ぶ。
「ふん、まだまだですわ。この大岩、ヒビ一つ入ってはいませんもの」
確かに大岩が砕けるようなことはなかったが、その音から類推するに、人一人吹き飛ばす程度の威力があるようにプルムには思えた。
「でもでも、こんな魔法、クラスでも使える人なんて一人もいませんよー」
その言葉にペトラはもう一つ鼻をならす。
「エリナなら使えます」
「エリナは……でも」
「これと同じ魔法は使えないかも知れない。でもこれと同等以上……いえ、もっともっと高等な魔法だって、エリナなら使えるでしょう。……授業中ならともかく、有事の際……いえ、誰かを助けるためならば、必ず」
「お嬢様……」
ペトラの憤った表情にプルムは口をつぐんだ。
「だからといって、負けを認めるわけではありませんわ。あの子は普段はダメダメのポンコツ。以前、ジュゼッペ先生もおっしゃっていたでしょう? 魔法は大きな力を持つからこそ、それを使う者の慎重で冷静なコントロールが必要なのだと。エリナときたら慎重や冷静とはまったくの無縁で魔法使う者としてはそのムラッ気は――」
「なるほどー、まったくその通りですねー」
珍しく素直にエリナの実力を認める発言をしたかと思えば、やっぱりいつものエリナへの愚痴に移行してしまったので、プルムはそれを流すことにした。
少し前まではそれに同調してエリナの悪口を言いあっていたのだが、ここのところの事件を経て、プルムの心境はすっかり変わってしまっていたのだ。
もっともそれはプルムだけではない。エリナへの感情という意味では自分よりもはるかにペトラの方が変わってしまったのではないかとプルムは考えていた。
この愚痴にしても、以前よりもどうも言い訳がましく聞こえるのだ。
「プルム、ちゃんと聞いていますの?」
「あ、お嬢様、もうすっかり日が落ちてきちゃってますよー。あ、あのー、こんな暗くなってきちゃってからなんですけど、また、あそこに寄らせてもらってもいいですかー?」
「ふん、まったく……」
ペトラは小さくため息をつく。
「でも、そうですわね。このような時間まで付き合わせてしまったのはわたくしの方。元より、あそこには寄っていく約束でしたものね」
「はいー! ありがとうございますー」
プルムは満面の笑みを浮かべて、ランタンを左手に山道を歩き出した。
魔法の修練をしていた場所からほんの少し森の奥に分け入り、微かに聞こえる水の流れる音の方へと斜面を下りていくと、その両側に蒼く小さな花が咲き乱れた小川が現れる。
その蒼い花はレーヌ草と呼ばれる花で、プルムが大好物にしているケーキの材料に使われるものだ。
「植物の精霊さんー、夜分遅くごめんなさいー。今日のレーヌ草のご機嫌はいかがですかー? ふんふん……おおー、なるほどー」
そんなプルムの様子にペトラは小さく微笑む。
精霊との交信は決して簡単にできることではない。
ペトラですら、精霊に命じることはできても、その意志を汲み取ることまではできずにいる。
「レーヌ草の様子はどうなのかしら?」
「はいー。今日もご機嫌みたいですー。順調に繁殖できてるって――えっ?」
「……どうかしたの?」
突然その顔色を変えたプルムにペトラは訝しげな目を向けた。
「なんか、植物の精霊さんが急にざわめいてー……えっとー、なにかに怯えてるみたいでー」
「要領を得ませんわね。なにに怯えているというのです?」
「それはわたしにもよくわからなくて、でも、どんどん近づいてきてるみたいで――」
ガサガサッ。
そのとき木々の生い茂った向こう側でたった大きな音に、二人は飛びあがらんばかりに驚いた。
そして、お互いに視線を合わせて息を呑む。
「……いいでしょう。プルム、あなたはそのまま精霊との交信を続けなさい。精霊が怯えるようななにかがいることは確か。あなたは精霊が伝えるイメージだけでもつかんでおきなさい」
「お、お嬢様はどうなさるんです……?」
「知れたこと。その茂みの奥を確認するのです」
「危ないです! おやめくださいー!」
珍しいプルムの強い声にもペトラが屈することはなかった。
「精霊が怯えるほどの存在なのでしょう? ならば、すでにわたくしたちは危ない状態にあるということ。それがなんであるのかわからない方が、より危険であるとわたくしは判断いたします」
「お嬢様、でもー……」
「大丈夫。それがなんであるのか、確認し次第すぐに逃げますわ。あなたもすぐに逃げられるよう心構えをしておきなさい」
それ以上の反応は待たず、ペトラは音がした方向へと足を向ける。
「……大地の精霊よ、あなたの目をお貸しなさい。暗きを見透す宵の目を」
日はすっかりと落ちてしまっており、周囲は真っ暗闇だったが、その魔法によってペトラの視界は開けた。
昼間のように、とまではいかないが、星明かり程度の光源で本が読める程度の視界が得られる。
「っ!」
だが、ペトラはその視界になにかが見える前に息を呑んだ。
まだ幼くともペトラもまた魔法を操る者。
チリチリと肌が焼けつくような感覚が走り、茂みの向こうに強大な魔力を持つ者がいることを直感したのだ。
ペトラは以前、ジントロルという巨大な魔物に捕まったことがある。
ほとんど気を失ってはいたが、あの恐ろしい感覚――恐怖――を忘れたわけではない。
そして今、その茂みの向こう側に、ジントロルをはるかに超える脅威が潜んでいる……。
精霊が警告を発するのも当たり前だと思えた。
(エリナ……)
自然と頭に浮かんできたその名前を噛みしめるようにうなずき、ペトラは茂みへと歩を進める。
その名前の効果だろうか。
ペトラはその脅威が、もしかしたら脅威ではない可能性に思い当たった。
肌に感じる魔力の強大さに間違いはない。
だが、ジントロルに感じたような悪意や敵意といったものが感じられないことに気がついたのだ。
こちらに気がついていない可能性。
敵対的な存在ではない可能性。
敵対できるような状態ではない可能性。
そもそもこちらの存在を気にもしていない可能性――
思い当たった最後の可能性にペトラは怖気だったが、もう一度頭の中に金髪の少女を思い浮かべて、足を進めた。
この茂みの向こうだ。
その存在が動いた気配はない。
ペトラは息を殺し、極力足音を立てないようにしつつ、それでも挫けることなく、茂みの向こう側を見やった。
「え……!?」
驚いたことに、ペトラが目にしたのは人間だった。
否。
人間の姿をしたもの。まだ人間だと確定したわけではない。
ペトラは冷静に自分の認識を改める。
神々しさすら感じる白い鎧を身に纏った美しい女騎士――のように見えるもの。
それが大樹の根に寄りかかり、苦しげに肩で息をしている。
強大な魔力は今も尚感じられた。
魔法を行使しているわけでもないのに、魔力感知の術を使うまでもないほどの強大な魔力。
弱っているように見えても、その事実がペトラに拭い去れない危惧を抱かせていた。
(でも、エリナなら……)
ペトラは一つ息を呑みこんでから、その女騎士に近づくことにした。
これまでの自分ならそうはしなかったかもしれない。
(これはエリナのせいですわ。わたくしがこんな行動に出てしまうのは、全部エリナのせい)
ペトラの足は急に軽くなったように、その大樹に向かう。
「もし、そちらの方、大丈夫ですかしら? お加減を悪くされているように見えますけれど」
声をかけつつ、ペトラは慎重にその様子をうかがった。
そして、驚愕に目を見開く。
「え……? ええええっ!? あのっ、あの、もし!? もしかして、あのっ、マリチャン様ではありませんのっ!?」
赤みを帯びた艶やかな長い金髪が長く豊かなものになっていたから気がつかなかったが、その顔は確かにランドバルド邸で出会った美形の騎士のものだった。
男性だと思っていたが女性だったのだろうか。
「うっ……うぅっ……ジェノウァめ……」
「ジェノウァ……?」
それは天が属の主神、天空の支配神とも言われる神の御名だ。
それが侮蔑のニュアンスと共に口に出されることにペトラは違和感を覚えた。
苦しげな女騎士の目がうっすらと開き、ペトラの姿を捉える。
「人間、か……。ちょうどいい……」
神を侮蔑し、ペトラを見て『人間』と呟く存在。
やはりこれは、あのときに出会った騎士ではない――
ペトラがその考えに至った時はすでに遅かった。
「おまえの恐怖を見せよ」
「なっ――」
妖しく光る金色の瞳に射貫かれたように、ペトラは目を見開いたまま硬直し、やがて脱力して膝からkずれ落ちた。
「……あっ……ああっ……あっ!」
開かれた瞳孔に、目の前の女騎士の姿はすでにない。
そこにはペトラのまだ短い人生の中で、最も鮮烈に記憶されている恐怖が映し出されていた。
「ほう? そうか、おまえは魔物に襲われた経験があるのか。巨大で強大な魔物。普通の人間には決して抗えぬ脅威……」
「い、いや……来ないで……ひぃっ!」
ジントロルに襲われた時の記憶を掘り起こされ、ペトラは悲痛な声をあげて失禁する。
「いいぞ。私が最初に産み出す魔神に相応しい――――む?」
だが、恐怖に引き攣っていたはずのその表情が突如として弛緩した。
「あ……エリナ……」
ペトラはそう呟くと安堵の笑みを浮かべて気を失い、白い鎧の胸に倒れこむ。
「……恐怖はすでに払拭されていたか。これでは使えぬ」
魔神はそう言って木々の向こうへと顔を向けた。
木々の陰からプルムが現れ、魔神とその胸に倒れこんでいるペトラを見て目を見開く。
「お嬢様から離れてー!」
普段のんびりとした彼女とは思えぬ瞬時の判断で、プルムは即座に魔法を行使した。
その周囲に生い茂っていた草木が急激にうねり、伸張して、魔神の身体にまとわりつく。
何本もの枝や蔦が寄りあつまって、強固で強靱な縛鎖と化した。
と同時に、草木は気絶したペトラの身体を引き離し、プルムの元へと送り届ける。
プルム自身、ここまで巧みに植物を操れるなどとは考えていなかった。
むしろ、無心だったからこそ出来た芸当だ。
――だが、相手が悪かった。
草木からペトラを受けとり、ホッと胸を撫でおろした瞬間、魔神の視線が今度はプルムを射貫いたのだ。
「おまえの恐怖も見せてみよ」
草木による束縛などなんの気にもならないように、魔神はプルムを見つめる。
その強い眼力にプルムは視線を逸らすことすら出来ず、ペトラを抱いたまま、がくりと地面に両膝をついた。
「や、やめて……やめて……」
プルムもまた恐怖の記憶を掘り起こされ、その顔を青ざめさせていく。
「あ……ああああああ……どうしよう……どうしよう……パニーラが死んじゃう……」
「ふむ。おまえは目の前で友が殺されたのか――いや、これは」
「エリナ……っ」
そして、同じ少女の名を呟いて気を失い、ペトラに折り重なって倒れ伏した。
「……こやつもまた、恐怖から救われていたか」
術者が気を失ったことで草木はその束縛を解き、元の状態へと戻っていく。
白い鎧の魔神は倒れ伏す二人の少女を見下ろして、眉を顰めた。
「エリナ……? …………エリ……ちゃん…………くっ……まただ……」
◇ ◇ ◇
『母なる者』マリア。
そう名乗った魔神が去ったのち、エリナたちは一先ずランドバルド邸に戻ることにした。
夜の帳が降りた暗闇の中、足元を照らすランタンの光が寂しげに揺れる。
その足取りは皆重く、口を開く者もいなかった。
コルがエリナの肩にとまり、心配そうにその頭をエリナの頬に擦りつける。
コルの優しさにエリナは目を細め、その頭を指先で撫でたが、それでも口を開きはしない。
誰もが新たに産み出されたという魔神のこと――否、マリウスのことを考えたいた。
「……お帰りなさいませ、エリナ様、皆々様」
ランドバルド邸に辿り着くと、リエーヌはマリウスのことは一言も口に出さずにエリナたちを迎え入れ、温かな夕食で皆の労をねぎらった。
新しく現れた魔神の行方はわからない。
マリウスがどうなってしまったのかも現状ではなにもわからなかった。
「マリちゃんを助けに行こうよ」
夕食を食べ終えたエリナが、そう口を開く。
「あなたの気持ちは痛いほどよくわかるわ。殿下を助けたい気持ちは私も同じよ」
「だったら――」
「朝を待ちなさい」
エリナがなにかを言う前に、ロミリアがピシャリと言った。
「私の方でも魔神がどこに向かったのかを調べるための魔法をいくつか使っているわ。それに反応があれば、すぐにでも駆けつける」
「反応があればって、なかったらどうするの!?」
「落ち着きなさい、エリナ。朝まで待ってなにも反応がなければ、それはそれで居場所や向かった方向のヒントになるわ」
「…………そういうものなの?」
「伊達に学校の先生はやっていないわ。私に任せておいてちょうだい」
「ロミリア……うんっ」
ロミリアの言葉にエリナは納得したが、フランもカナーンもまだ不安そうな表情だ。
マリウス自身が魔神と化してしまった。
それをどう受けとめ、どう対処すればいいというのだろうか。
魔神を捜し出して、それを討伐すればいいという話ではない。
そもそも魔神を討伐すること自体、困難を極めるというのは、みんな身を以て知っていた。
「わたしはね、やっぱりあの魔神はあの魔神であって、マリちゃんとは別なんだと思う」
その言葉に誰も賛同も否定もしない。
「取り憑かれちゃったとか、操られてるとか、そういうのなんだよ。ガビーロールってそういうことするんでしょ? さっきのもきっとそう! マリちゃんは絶対に助け出せるよ! そうだよね、ロミリア?」
エリナの言葉にロミリアは一度目を閉じ、一呼吸置いた。
「私も、殿下を助け出すことを諦めたりはしないわ。絶対に」
その力強い言葉にエリナは顔を綻ばせる。
だが。
「魔神は……討伐するしかない」
今まで一切口を開かなかったラティシアが、そう呟いた。
そして席から立ちあがり、さらに続ける。
「あの魔神が殿下そのものだというのならばなおさらだ。あの魔神は、私が、私の手で――」
「そこまでよ、ラティシア!」
ラティシアの言葉をロミリアが制止した。
「今のあなたは冷静ではないわ。そんな状態で軽々しく誓いを立てるようなことをしないで」
「貴様ッ、帝国騎士の宣誓をなんだと――」
「元帝国騎士ね。今のあなたは国と将軍閣下の立場を捨てて飛び出してきたお尋ね者。そう言う話だったと思うのだけど? そんなことも忘れてしまったのかしら、おバカさんねぇ」
「人をどこまで愚弄すればッ!」
ロミリアの胸ぐらをラティシアが掴む。
それでも尚、ロミリアは言ってのけた。
「あなたに面と向かって『おバカ』なんて言ってあげられるのは私くらいだもの。感謝してほしいものだわ」
「貴様ァッ!」
「なによ?」
怒りに染まるラティシアの視線を、ロミリアは真っ向から受けとめた。
「あっ、あのっ、ロミリア? ラティシアさん? ケンカしてる場合じゃないと思うんだけどっ」
突然はじまった大人の女性同士のケンカに、エリナはわたわたと慌てる。
「ど、どうしよ、フラン!?」
「わ、わたしに言われてもっ。カナちゃんは!?」
「……傭兵団では、こういうケンカはしょっちゅうだったのよ。それでも上手いことルナが収めてくれてね」
「おおっ、どうやって!?」
「剣の柄で、こう……ガンッ、ガンッて両方の頭を殴りつけて、ケンカ両成敗だって……」
カナーンの話を聞いて、エリナとフランは改めてそこにいる『ブレナリアの聖女』と元『ヒュペルミリアスの凱旋将軍』の姿を見た。
「できないよ、そんなの!?」
「そ、そうよね」
「カナちゃぁんっ」
「しかたないでしょ!? 私だってこんなのどうしたらいいかわからないわよっ」
「まあまあ」
フランはとりあえずエリナとカナーンの仲裁に入る。
そこに、未だ胸ぐらを掴まれたままのロミリアの声がかかった。
「ごめんなさいね、あなたたち。心配しなくていいから、ご飯食べ終わったのなら、さっさと部屋で寝てしまってちょうだい。明日の朝には行動の指針を決めるわ。心と体をしっかりと休めること。いいわね?」
「ええええっ!? で、でも……」
「リエーヌ、お願いするわ」
「かしこまりました。さぁ、エリナ様、フラン様、カナーン様、参りましょう」
リエーヌは三人を立たせると扉の方へと押しやる。
「でも、二人は――」
「ご安心を。ロミリア様は元より、閣下の方も本気ではございません。魔王討伐の英雄であるお二人ですよ? 本気で暴力を奮うつもりなら、この屋敷ごと吹き飛んでもおかしくはありません。旧知の仲故のお戯れといったところでございましょう」
「そ、そっか……」
エリナはそれでなんとか納得し、フラン、カナーンと共に自室に押しこまれるように追いやられた。
「でもさ」
リエーヌが扉を閉めて出ていってからはたと気がつく。
「あの二人が本気でケンカしはじめちゃったら、寝るとこなくなっちゃうって話じゃない?」
「…………」
「…………」
エリナの言葉にフランとカナーンが視線を合わせた。
そして三人は、ラティシアの凄まじいまでの剣技を脳裏に浮かべる。
「ま、まさかね……」
「まさかまさか……」
「ロミリア先生も心配しなくていいって言っていたじゃない。だから大丈夫よ」
「そうだよね?」
「そうそう」
三人はぎこちなく笑いあい、寝るための準備をはじめる。
いそいそと寝間着に着替え、髪を梳き、三人で一つのベッドに潜りこむ。
「マリちゃんのこと、絶対に助けようね」
「うん、もちろんよ、エリナ」
「エリナが助けるつもりなんだもの。マリちゃんは絶対に助かるわ」
「カナちゃん、なにそれー」
「さあね。私は思ったことを思ったままに言っただけ。さあ、寝ましょう?」
「うん、おやすみなさい」
「おやすみ、エリナ、カナちゃん」
「おやすみなさい」
キィ、と最後にコルの鳴き声がして、三人は小さく笑った。