うるさすぎる静寂に
最終列車が行ってしまった。
朝には列車が動き出し僕を迎えに来るだろうがこの駅は孤独でしかも寒かった。
体の奥底から凍えるようでそして一度冷えてしまえばもう元に戻ることはない。
悪い寒さだ。
暗くどろどろとした寒さ。
そんな夜を過ごさなければならない。
途方もなく長い夜になることは経験上分かっていた。
駅舎に置かれた時計は乾いた音を響かせている。
それ以外の音はない。
僕が試しに控えめに普段なら聞こえるか聞こえないかわからない位の大きさで壁をこつんと叩いてみた。
すると恐ろしく響いた。
音は何倍にも増幅され駅舎の中を伝った。
けれど音が外に漏れることはない。
全てがこの空間に吸い込まれてしまう。
だからここに留まることはできない。
どこかに向かって歩き出さなければこの駅に取り込まれてしまいそうで。
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