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会話のキャッチボール球切れ

会話とは、キャッチボールである
キャッチボールという、野球のことばを使うのは実はアレなのですが、他にいい表現が思いつかないので、このままで。

言語学者的なお話をすると思うでしょう?
しないのです。

会話とは、やっぱり相互のやりとりなのです。

例えば架空の会話パターン甲
A:「やっほー、元気?」
B:「はい」
A:「昨日何した?」
B:「寝てました」
A:「そうなんや。ところで、この曲聴いてみて」
B:「聴きました」
A:「どうやった?」
B:「よかったです」
A:「ところで明日暇?」
B:「無理です」

会話のパターン乙
A:「どんな映画が好きかな? ところで明日一緒に映画行かない?」
B:「映画はあまり観ないです」
A:「じゃあ、明日一緒にご飯行こうよ。◎◎というレストランがあってね」
B:「そこ、行ったことあります」
A:「お話ししたいな~と思ってるんだけど。今日は寒かったね」
B:「はい。寒かったです」

みたいな。甲乙ともに、Bはとにかく、徹底的にAが投げたボールを投げ返すことなく、自分の脇に置いています。甲では、一問一答でBがAに対して質問を返すということをしない。乙では、複数のAの発言の中から、答えたくないものを無視して返事しているように見えます。

これを繰り返すとどうなるか?
Aはネタが尽きるか、あるいはBに興味を持たれていないと思って、会話を中断するでしょう。これ以上会話を続けるには、Aの側に鋼鉄のメンタルが必要です。

さらに、LINEにはリアクションという機能がついていて、Aのメッセージの下にちっちゃい顔のマークだけで反応することができます。詳しくはこちら。先日、ある昭和生まれの人が「あれ、自動でついているのではないの?」と言っていました。

会話丙
A:「この前久しぶりに琵琶湖行ったわ」
B:「リアクションにこっ」

さて、Bは、Aのことが嫌いなのでしょうか? それはBにしか分かりません。
でも、Aはこれらの会話が続けば、Bは自分のことを好きではないと判断するでしょう。

けれど、「一般的に~」とか「普通は~」とかは、ほとんどあてにならないと思います。なぜなら、この会話、「普通じゃない」から。

普通じゃない会話を、普通の観点から分析しても、有益な答えは見つからないと思います。

一つだけ分かることは、Aは早晩Bに連絡をとることをやめるでしょう。連絡すれば、最終的に自分が傷つく。わざわざ自分が傷つく行動をとることは、やはり精神衛生上よくないでしょうね。

Bが、Aと会話したくないなら、この方法はBの望み通りにことが運んだことになります。けれど、会話したくないということを、この方法でAに分からせるというのは、最善の方法か? ということは考えてみる必要がありそうです。

BがAと会話したくないわけではない、あるいは実はこれでAとの会話を楽しんでいる、と考えることもできるのではないかと思います。それほどに、人の感じ方や考え方は千差万別です。Aがどう考えるかも、実は様々な可能性があるでしょう。

この文章は何のために書いているのでしょう?
自分でも分からなくなってきました。

ただ、ことばを研究する者として、また、ことばを扱う学部で教育をする者として、ことばというものをうまく使って、コミュニケーションすることは、決して悪いことではないと思うわけです。

僕は、少なくとも、話してほしいし、語ってほしいと思っています。
あくまで、僕個人はそう思う、そういうことです。


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