新しい学習指導要領で、世界史Bは、世界史探究へと改編された。
標準単位数が4から3に減り、内容の精選が図られたことが大きなポイントと言われる。
学習指導要領には、耳障りの良い言葉が並んでいる。
では実際の教科書はどうだろうか。
高等学校では、昨年度歴史総合が始まり、今年度から世界史探究と日本史探究が始まった。
世界史探究の教科書には、一長一短あり、簡単に語り尽くすことはできないのだが、僕が一番衝撃を受けたのは、山川出版『詳説世界史』の本文のうち、特に次の一節だ。
え!?「後漢が滅亡すると、華北の魏、四川の蜀、長江中下流域の呉が並び立ち、近隣の異民族を引き入れながら抗争を繰り返した(三国時代)」だって。
世界史Bでは、曹操と曹丕、劉備と孫権の名があったはずだ。それがそっくり消えている。
まさか。
諸葛亮はともかく、劉備の名まで、教科書から消さないだろうと思っていたが、少なくとも本文にはない。
脚注を見てみると、
とあり、公孫氏のことが書かれているだけだ。
ちなみに、附属中学校で使っている中学校歴史の教科書がこれ。同じ山川出版社のものだ。
さらにコラムで
と書いてある。
『詳説世界史』の教科書の記述が、本文は同社の中学歴史教科書と大差ないばかりか、中学歴史のコラムの方が面白い。
三国志が好きな生徒は多い。
内容を精選するのはいいが、削るのではここではないのではないか、と、世界史好きな個人としては思いつつも、世界史教員としては、まあ、仕方ないかなと思う面もあり、葛藤は続く。