定額働かせ放題について
公立高等学校で世界史探究・歴史総合を教えているAKSです。
今回は昨今、話題となっている「定額働かせ放題」について書いてみたいと思います。
賛否両論ある話題なので、あくまで私見としてお読み頂ければ幸いです。
最初に明言しますが、私は「定額働かせ放題」に反対です。
社会科の教員として、労働基準法を超越するような給特法には明確に疑問を感じます。
同期の県庁勤務の公務員や私立の先生は残業手当てをもらっているので、おかしいなあと思っています。
ただ、教育や歴史が好きでこの仕事に就きましたし、30年近く「定額働かせ放題」の現場で働いていますので、感覚が麻痺しています。そういうものだと思って就職したし、そういうものだと思って部活も土曜授業も続けて来ました。
心配なこともいくつかあって、一番は「今は勤務時間と認められている仕事が勤務時間と認められなくなる」という心配です。
もし、残業手当が受け取れる仕組みになったら、部活動には当然出るでしょう。まさかでない訳がない(笑)。
土曜などの授業や講習にも出ると思います、たぶん(笑)。
授業準備はどうでしょうか。
現在は職場でも隙間時間で授業準備をしていますし、私は朝型なので早いときは朝6時代から出勤してタイムカードを押し、せっせと授業準備をしています。
放課後もやっていますし、自宅でも休日時間のあるときは一日授業準備をしている日もあります。
残業手当が出るようになったら、授業準備に適用されるでしょうか。
されるとしたら、自宅でやっている授業準備は全て基本職場で行う方が良いことになり、授業準備をしようと思ったら、休日も仕事場に行ってタイムカードを押すでしょう。
でも、実際には、授業準備に残業代は出ないと思います。
現在も時間講師の先生には、お給料は授業分だけが出て、授業準備分は出ていません。
そう考えると、残業代が出るようになったとしたら、授業準備は勤務に含まれないことになりそうです。
「授業準備をするならタイムカードを押すな」みたいな(笑)
じゃあ朝も6時に出勤しても授業準備ならタイムカードを押せず、部活や面談なら押せるのか(笑)。
では面談はどうか。
面談は勤務になるかもしれませんが、面談の準備や事後記録、対応は?
学級日誌の生徒記入への返信は?
朝教室に早く行き、生徒の様子を確認した場合は?
このよう考えていくと、残業手当出すということは、勤務としてお金になる仕事と、勤務に当たらずお金にならない仕事を選別することだと分かります。
するとどうなるでしょうか、
お金になる仕事をやるようになり、お金にならない=勤務にならない仕事をしないことが、もっとも合理的な選択になるでしょう。
もしも授業準備が勤務に当たらないなら、空き時間に授業準備をしてはいけないなどという本末転倒なことになりかねません。
面談は勤務になるが、事後処理は勤務に当たらないなら、事後処理を軽んじるようになるでしょう。
したがって、私の主張は、残業手当を出してほしいが、現在の仕事内容を幅広く勤務と認めてほしいというものになります。
「残業手当を出してほしいが、現在の仕事内容を幅広く勤務と認めてほしい」
これが私の真意になります。
あれは勤務時間、これは勤務に当たらない、などという選別が行われれば、給料は微増するかもしれないが、善意で成り立っている教育は崩壊しかねません。
色々書いて来ましたが、「定額働かせ放題」に反対です。
残業手当てを出すなら、業務を選別せず、どのような業務にも手当を出してほしいと思います。
極言すれば「タイムカードを押して出勤してからタイムカードを押して退勤するまでは勤務時間は勤務時間というこれまでのしきたりに基づいて残業手当てを出してくれる」制度を望みます。
でも、実際には、それは困難でしょう。
理由は、莫大な予算措置が必要だからです。
公務員である以上、給料は、国家予算や地方公共団体の歳出となります。
世間は「定額働かせ放題」と揶揄していますが、もしそれが終わったとき、教員の給料を出すのは、突き詰めれば、税負担です。
税負担を増してまで、教員の「定額働かせ放題」廃止を、国民や県民は支持するでしょうか。
問題は複雑で根深いなと思います。
最後に誤解のないよう、繰り返しますが、私は「定額働かせ放題」にははっきりと反対の立場です。
ただ、問題は複雑で、簡単ではないと思っております。
より良い制度になるよう、願っています。
難しい。
お読み頂きありがとうございました。
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