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麻雀プロに命を救われた話-瀬戸熊直樹プロと出会って-


麻雀にプロがいることをご存じだろうか。
そりゃ知っとるわ、というひともいれば、知らなかったというひとだっているだろう。
そのどちらにも知ってもらいたい話がある。
生きることを諦めていた僕が、ひとりの麻雀プロに救われた話だ。

そのひとの名前は「瀬戸熊直樹」プロ。
麻雀を打つその姿だけで、死にかけの魂に光を灯した、僕の命の恩人だ。

1.とにかく生きる気力がなかった

今から3年前の冬、僕はもう精魂尽き果てており、とにかく生きる気力がなかった。
理由は山ほどあったが、一番に僕を蝕んでいたのは「胸郭出口症候群」という病だった。

胸郭出口症候群とは、神経が圧迫されることにより手や腕に痺れ・麻痺が起こる神経の病気である。強い痛みを伴うケースもある。胸郭出口とは首と胸の間にある通路のことを指す。
(※僕は医療に携わる人間ではないので、詳細は専門の資料やページを参考にして欲しい。)

このときはろくな医者も見つからないまま、発症してから2年の月日が経っていた。
痛みと麻痺は和らぐことなく、毎日、日中夜続いた。
当然こんな身体では正規雇用で働けず、なんとかアルバイトでギリギリ食いつないでいる状態だった。

治療の方法もなく、快癒へ向かう兆しもなく、目の前はいつも真っ暗だった。
もはや「死のう」「死にたい」という自発的な意思すらなかった。

「はやく楽になりたい」「このまま緩やかに死んでいくためにはどうすればいいのか?」——そんなことばかりを考え、日々をやり過ごしていた。

痛みと闘う気力は、もう残り僅かだった。

2.初めて見た麻雀

麻雀を動画で見たのはたまたまだった。

萩原聖人さんやサイバーエージェントの藤田社長が出ていた「オールスターリーグ」を見たのが初めての麻雀観戦になる。
麻雀プロではなく、著名人たちが集まって麻雀を打つ番組だ。
そこに偶然、好きだった舞台俳優が出場していたのだ。

これで少し気を紛らわせるならと、僕は画面を見つめていた。
当時の麻雀に対する知識や経験と言えばアプリで絵合わせをする程度だったが、大まかなルールは理解していた。

ぼんやりと見ていたはずなのに、いつしか僕の応援は熱を帯びていた。
そう、麻雀を見るという行為は「楽しかった」のだ。
僕はもっと人が打つ麻雀を見てみたいと思った。

3.そして、瀬戸熊プロと出会う

「麻雀を見よう。」
そう思った僕はYouTubeでプロの対局動画を探した。
女流プロから、所謂「レジェンド」と呼ばれるひとたちの対局から、気になったものは何でも見た。
見ていたのはMONDO杯の動画が多かったと思う。

いくつもの対局動画を見ていくなかで、あるとき僕はひとりのプロに目が行くようになっていることに気が付いた。
それが瀬戸熊直樹プロだった。

切るような視線。
鬼気迫る表情。
身を削るような闘牌。

魂の一打。

MONDOからMリーグまで辿り着き、TEAM雷電の試合を見るころには、僕の両頬には涙が伝うようになっていた。

「もっと、瀬戸熊プロの対局が見たい。」
「瀬戸熊プロの麻雀を見ていたい。」

死んでいたはずの僕の魂が揺さぶられて、息を吹き返すのを感じた。
そこから、瀬戸熊プロの麻雀を見ることが僕の生きる糧となった。

4.もう一度生きる

息を吹き返した僕は、もう一度病気と向き合うことを決めた。

なんとか良い専門医を探し出して、治療をはじめることができるまでそう時間はかからなかった。
医者には週に一度通い、毎度筋肉注射を打たれた。
痛かったけれど、暑い日も寒い日も、めげずに通院した。

5カ月ほど経ち、症状の緩和は見られたがそれでも常人と同じ日々を送るには程遠かった。
そこで主治医から提案されたのが「肋骨を切除する手術」だった。

正直に言えば怖かった。
それでも卓上で闘う瀬戸熊プロのことを、大好きになったTEAM雷電の面々の姿を思い出せば、返事は「YES」の一つしかなかった。
かれらの闘いを思えば、こんなものはなんだってないのだと。

結果をいえば手術は成功だった。
今現在でも通院は必要とするし、100%元の状態に戻ったわけではないが、随分と症状は落ち着いてきている。
なんせ僕は、アプリゲームでなくリアルで麻雀を打てるようになるまでに快復したのだ。

5.生きて、闘い続ける

瀬戸熊プロ、並びにTEAM雷電を応援し、リアルで麻雀をするようになった僕には、たくさんの仲間ができた。
楽しいと思える時間が増えて、希死念慮に攫われることももうない。

そんな今があるのは、瀬戸熊プロのおかげだ。
あのとき瀬戸熊プロに出会わなければ、今僕はここにいないだろう。

胸郭出口症候群とは一生付き合わなければいけないかもしれない。
それ以外にも、毒親によるPTSDのこと、性別違和のこと、僕には闘わなければいけないことが山積みだ。

それでも。

瀬戸熊プロに生かしてもらったこの命がある。
瀬戸熊プロが闘い続けるように、僕も闘い続けたいと思う。

そして大好きな瀬戸熊プロを、応援し続けたい。
言葉を尽くしても足りない感謝を、エールに込めて。

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