私だけの卒業式
小学生の頃から私は(当時は塾通いなんて子もいませんでしたし)
比較的成績の良い子で 貼られたレッテルは
優等生・模範生・大人しく真面目で 消極的
そんなレッテルがずっと 中学高校と続きました
本当はいやだった・・ そんなレッテル剥がしたかった
だけどできないまま ずっとずっと「いいこ」でした
時にはあがいて いわゆる「不良」と呼ばれる人たちとつきあったり
けど彼らは優しかった 絡まれてたりしたら即助けてもくれた
だけど いつでもそこには1線が引かれていました
彼らにとっても私は 土俵の違う人種だったのです
そういう人たちからも 普通の人たちからも1線引かれた
いつも違う土俵にいる人種 それが私でした
結構モテはしました ラブレターも数々あったり
何人かとはおつきあいもした 3角関係もあった(爆)
女の子からラブレターも貰った_(▼∀▼)ノ彡☆ バンバン!!
でもそれらは私には常に「友情」・・でした
後から思えば 友人と取り合った彼氏も
考えたら友人の枠を出てなくて 2股かけられた女が
2人でバイバイして終わりなんて出来たのも そんな程度だったから
でも
高校3年で初めて 真実人を想うと言うことを知りました
今までも 今も この先もずっと忘れ得ぬ人です
けれど私には愛情表現が分からなかった
どうしたら思いを伝えられるのか
どうしたら心から信頼し甘えられるのか
幼い頃から親に愛されたことが無く
愛情表現をされたことが無い私には
その方法が全く分からなかった
そんな状態のまま 卒業の日を迎えてしまいました
心を伝えることも無く このまま永遠に別れてしまうことが辛く
卒業式が終わったあとの校庭に 1人でかなりの時間佇んでました
すると まるで映画の1場面
登場人物のヒロインはダサイ女子高生ですが(/・ω・)/
ふっと背後に現れた人影 大好きな彼でした
彼と私の足元に前日の雨の名残の水溜りが有りました
校庭の泥で汚れた泥水の水溜りを 彼は見てた
そして 1人立ってた私に 何してるの?も何も無く
突然口を開いて 私に言いました
「水たまりに溜まったドロ水はどんな味?」
「さぁ ただの水の味じゃないの?」何気なく答えた私
「そうかなぁ やっぱり泥臭いんじゃないの?」
言うなり彼は 即座にそこにあった水たまりから泥水をすくい
あっという間もなく 飲んでしまいました
そして 言いました
「ごめん やっぱただの水の味だった」
私のすべての固い殻が崩れだしたのは多分そのときからです
誰にも愛されず愛せず いつも心に鎧をまとってた私
どうしたら伝えられるか どうしたら愛せるか愛されるか
どうしたら心をすべてゆだねられるか・・・・
そんな「疑問」だけ胸に抱えてどうするんだ
彼を見ろ 疑問は即解決すべき方向へ持っていくじゃないか・・・
自分の舌で味わうこと 自分の目で見ること
自分の耳で聞くこと そうして
自分の心が求めていること
なにもかも 己の裁量でできうるんじゃないか
ちいさなささやかな泥水事件でしたが
何十年たってもまだ ありありと浮かんでくるあの光景
1秒の迷いもなく泥水をすくって唇に運んだ彼
忘れ得ぬ 忘れてはならぬ そして忘れたくても忘れられない
それが私が初めて「他人」に心開き
胸の中をさらけ出す第1歩目だったのです
この人とのその後は過去にも書いたはずですし
多分過去ログが残ってることと思いますから
もうこれ以上は書きませんが
今 私は 誰かのためにどろどろの水たまりの水を
果たして飲むことができるでしょうか
山に 初雪降る頃に 帰らぬ人となった彼
2度と笑わぬ 彼の顔
2度と聞こえぬ 彼の声・・
「小さな日記」という歌の1節でしたっけ
あの歌がずっと10年以上 聴けませんでした
卒業式が終わってすぐ 予想通りに彼に会うことはもう
決して無いこととなってしまいました
でも 私にとっての卒業式は
校内でやった式典でも卒業証書授与でもなく
泥水を掌でスクッテ飲んだこと
これが 私の高校の卒業とともに
小さく縮こまって 殻だらけの中にいた私自身の卒業式
愛を知らない私への卒業式でもあったのです
今でも思い出します
古いドロドロの校庭 佇む彼と私
彼の掌の泥水
そして私の中に刻まれて 2度とその先は成長しない彼の姿
あの時のまま止まって私の網膜に刻まれた彼の姿からは
私は果たしていつ 卒業できるのでしょうか