🈞 あのときの想い出
まだ家族で住んでた頃の事です
我が家の愛犬ボビィーが交通事故で
左半身不随の寝たきり状態で退院し
リハビリ真っ最中の時期
その時期に それこそこれは
たかが犬などといっておれない
たかが??亭主殿が入院した 多分3月頃?
埼玉にある我が家になぜか
東京恵比寿の病院から電話が入った
間違い電話かと思ったが
主人の名前を言い「奥様ですね?」
ご主人が脳内出血で入院されています
緊急手術を要しますので すぐいらしてください
何を言われてるのか一瞬分からなかった
脳内出血?? だって
まだ若いぞぉ ジジィじゃないぞぉ
意識障害 言語障害 半身不随状態・・・・
経過がどんどん事務的に報告される
すぐに手術ったって
恵比寿までなんて2時間かかりますけど・・
そう言ったら
立ち会い確認無しでも
やむを得ない場合は手術に入ります
その後自分がどう行動したかは あまり定かでない
ともかく子供らに置き手紙し 病院まで行った
いや違うな 子供はまだ小さかったから
まだ元気だった母に連絡して子供を頼んで・・・かな?
で 集中治療室で管だらけで 酸素吸入器をした彼が居た
意識はあった 何か言ってた
ろれつがまったくまわらない 何を言ってるかわからない
分からないが分かってる風に「うんうん」何度も答えた
助かっても左半身不随は残るでしょう
医者の言葉に 寝たきりの犬の姿がだぶった
あれはいったい いつのことだったんだろう
意識的にか無意識にか 私は当時の日付を覚えていない
地下鉄サリンの事件の頃だった
彼の通う電車の彼の乗る車両の彼の降りる駅に
彼の乗る時間にサリンはバラまかれた
緊急入院が 逆にサリンから彼を救った
彼の居ない自宅で 病院通いを続けながら
私は必死で犬のリハビリを続けた
この犬が 彼の身代わりになったのだと
真剣にそう思った
彼の不自由をこの犬が肩代わりしたのだと
奇跡の日々だった
主人はたったの2週間で退院した
医者もあきれる驚異の回復だった
もちろんまだ左半身にしびれは残っている
けれど外見的には全く誰にもわからない
しゃべるのが商売の彼が話せなくなったら終わりだが
言語障害も あっと言う間に消え去った
その頃 わずかに左足を引きずる彼が
左足が湾曲し 片足上げて歩く犬を 散歩してた
私は その姿を 後ろから いつもそっと見てた
犬はそれから片足引きずりながら5年間頑張った
そして5年後に 全てを引き受けて この世を去った
ボビィーというと思うこと
身代わりに片足を失って亡くなったボビィー
そして あの日々
奇跡はある 必ずある
愛する誰かが 代わりに引き受ける
不幸をお互いが代替わりする
そしてそれを支え合って帳消しにする
それは偶然ではない
奇跡は 自分が呼び込む
自分の全てをかけた「想い」
それこそが それだけが 奇跡を呼べる
そんなことをふと
おばさんらしくもなく思ってしまう
やっぱり 愛するものを失った時期って
特別なんだろうね
ちなみに余談ですが
入院直後 脳の記憶欠損を確かめるため
看護士さんが呆れるくらい何度も同じ質問をする
脳のどこかやられてると 同じ質問に答えられない
看護士さんが旦那に年中 お名前は?お住まいは?
で ご結婚は?
主人の答え さぁ いたっけかなぁ?
奥さんの名前は? さぁ 貴方じゃないの?
これ あまりおんなじ質問に嫌気が差して
分かってるのに冗談で応えてた主人の答え
又翌日 奥さんは?
さぁ5人いるかなぁ
あのなぁ~~
半身不随になったり 寝たきりになっちゃったり
言語障害になっちゃったり
食事も自分で食べられない患者さんがほとんどの病院
その中で主人は 健常者と変わりなく冗談は言えるし
話しは面白いし 時には看護士さんと
会社の若者との合コン計画まで立てたりして
脳外科入院患者きっての 看護士にモテモテの患者でした
いつも病院行く度 看護士さんにワイワイ囲まれて談笑中
私が行くことないやんけ
という 脳外科内ではモテモテの過去の旦那でした
現在はどこでもモテません ざまーみろ
あの頃の思い出は ボビィーの身代わり死と
あほな亭主の生涯1度モテタ思い出 (Θ_Θ)