半歩
丁度20年前です
2004年10月15日
私は自分の詩集の発売日がすぐ先の誕生日に迫っていて
バタバタと忙しい
でも心弾む充実した日々を過ごしてました
ハマってたネットを忘れるくらい
自分の人生の集大成である詩集発売に心奪われてました
そんないっぱいいっぱいの心が
視線をどこかに奪わせたんでしょうか
あっと思う暇もありませんでした
何一つ知らず 何一つ気付かないまま
目が醒めた時は 病院のベッドの上
目が見えない 腕が動かない
足は固まったかのように鉄のように重く感覚が無い
しゃべれない 誰かの声が聞こえる
でも 気付くとまた意識無く また別の誰かの声が聞こえ
そして 瞬時目覚める
そんなことの繰り返しで
体中の痛みに 痛いよぉ痛いよぉと呻きながら
持続して目覚めてるようになったのは何日だったんでしょう
今思っても 何日間の記憶が無いのか分かりません
そこで私が聴かされたのは 10月15日
どこかからの帰り どこかの道で車にハネられたということ
何処からの帰りだったのか
何処の道でなのか 誰にぶつかられたのか
なぁんにも分かりません
それよりなにより
そこから更にさかのぼること何ヶ月か
何をして何処に居てどう生きてたか
全く記憶がありません
わかるのはただ 普通に当たり前に常人として生活してた私から
一気に病院のベッドに縛られてる私になってるってことだけ
警察に当時のことを尋ねられると
頭が爆発せんばかりになり 発狂しそうになります
フラッシュバックっていうんですか
思い出したくなく心の隅に追いやったことを
無理に思い出そうとして思い出すと
フラッシュバックって現象に襲われて
人格破壊することもあるという・・
だからもう思い出さなくて良いそんな話だったと思いますが
自分としてはやはり 自分が何処に居て何処から来て
どこに行こうとしてるのか 自分の生きる道筋ですから
知りたいと思う 思うけどどうにもならない
それからの一年は本当に地獄でした
繰り返しの手術 筆舌に尽くしがたい痛み
そのあとの一年もまた
リハビリリハビリリハビリ 繰り返し
粉々に砕け散った骨は ただ寄せ集め
折れた断片を形を合わせるもへったくれも無く
ただかき集めまとめてくっつけられました
もう足とは呼べない形状で
それでも今なんとか まともではないにしろ
形だけでも歩けるのは 何かの恩恵なのか
もしくは試練なのか
普通にしてたことが出来ません
床に落ちたものをしゃがんで拾うなんて夢のまた夢
正座?? そんなものこの世にあったろうか・・
ギリギリ90度膝を曲げれば何とか座れる椅子が
私の今の世界の全てです
足だけではない
顔も頭も首も腰も口の中も
今はそこらじゅうの医者に通うことが私の日々
タクシーの運転手さんにはもう完全に自宅を覚えられてしまいました
果たして何人の運転手さんがうちを知ってることか
そんな時間の積み重ねで 2年
楽しみにしていた詩集は 本屋の店頭に並んでるのも
見ることは出来ませんでした
ネットで宣伝していっぱい売って再販にこぎつけるんだぁ
なんて夢ももう どこへいってしまったのか
毎晩全身の痛みで寝られない
全てがねじれて 食べ物もまともに受け付けない
元々細かったのが 明日には消えるんではないかというくらい細い
やっと寝られると痛みで目覚める
不思議ですね
夢も仕事も恋も愛も 睡眠も食欲も
普通の体があって 初めて夢中になれるものだった
足が無い人よりましだ
寝たきりの人よりずっと幸せだ
みんなそういいます 確かにそしてその通りです
もし私が0から始まっていたなら・・
マイナスから始まるか0から始まるか
6くらいの体調がマイナスになってそこから始まるか
多分 そんな程度の問題なんでしょう
5あったか6あったか定かではないけど
その「あった時代」を
それこそを一番忘れなければならない
今ある2か3かもしくはマイナスかわかんないけど
その状態をちゃんと受け入れて
そこから新たな自分を始めない限り
私はただの呼吸だけしてる人間に成り下がってしまう
・・・でも なくしたものは大きい
もう手に入らないものが やたら恋しい
つかまりながらやっとの思いで靴を履くとき
私はかつてどうやって靴を履いてたのかな?
もう遠い昔のように記憶があいまいです
階段をものを持って運ぶ恐怖
雨の日に傘を持ったらバランスが取れない
ゴミの日に重いゴミを両手に持ったら
そのままズルズルと玄関先で腰が砕ける
にもかかわらず 倒れることは出来ない
貧血起こしてしゃがみこんでた頃があったが
貧血起こしたら最後
しゃがむなんてありえないことだから
そのままその場で嫌でも分かっててもバタンっと倒れるしかない
そんな2年でした そしてこの先も後何年か分からないけど
そんな一生でした・・って終わるんだろうな
考えることも夢も希望も
全部ただそれだけでした
できることがない 何も持ってない
そんなときです
あの悪そうな子犬がプレゼントされたのは
立ったまましゃがめなくたって
排便されたらとらなきゃならない
逃げたら追い掛け回さなきゃならない
できるのかできないのかなんて
そんな悠長な悩む時間は無し
待った無しでつかまえにゃならん
与えられる ということ
与える ということ
そのどちらが大変なことなのか
そのどちらが幸せなことなのか
私には今分からない
分からないけれど多分
そんなことすら考える余裕無く
できようができまいがやるしかない
そんな思い そんな時間を目の前にした今
さぁ 私はどうするんだろうか
そっぽ向いて知らぬ顔をするのか
ただ立ち止まったまま 何もしないのか
私が私であるために あり続けるために
私が新たな私を見つけて生まれるために
私は実は てぐすね引いてその時間を待ってたりする
そんな自分に気付き
時折ギョっと 唖然としながら・・・・
貴方は私を 愛してくれた
貴方が愛した私を 私は愛した
今 私が愛せない私を 貴方は愛さない
当然 当たり前 自業自得
そんな言葉が頭をぐるぐる
私が私であることを又始め
私が 私を愛したら そのとき
貴方は又 私を愛してくれますか
貴方 私は今 半歩 前に進めました・・・
呆然と 唖然としながらそれでも