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Let it be

あと半年の命と宣告された一家の半年間の物語
アニメ版 象の背中をご存知ですか
大切な人を残してあなたは最後に
どんな言葉を贈りますか
という大きな題材がコレには盛り込まれてますが・・

こういったものを見ると 
19年前に亡くなった兄を思い出してしまいます
兄は特に余命何年とか
宣告されたわけではありませんでしたが

運が悪いときは運が悪いもので
私が事故って生死の境をさまよっている最中に
兄は白血病を宣告されました

その場ですぐどうこうと言う
状態ではないとのことでしたが

でも骨髄移植が必要で 
その提供者になれる近親者は
私ただ一人でした

しかし入院中の私に
その話をすることを兄は徹底的に避け

身内の者にも何も言うなと釘を刺したそうで
私が事実を知ったのは
意識も戻ってかなりたってから

言うなとは言われてるけど と
恐る恐る父親が切り出したのでした

私は即座に骨髄移植の適合検査を受けると
言い張ったのですが
骨折手術やらナンやら

やたら手術のあとの術後状態で
家族から猛反対を受け 
しばらくは何もできないまま

それからしばらくして突然
肺炎になって具合が悪いんだよと父親から聞き
え?!と思ってたらそのたった2日後です
兄が亡くなった・・と

あとから知ったのですが 肺炎になる少し前に
兄から 私の娘に電話があったそうで

おじさんちょっと検査のために入院するからさぁと
で たいした検査じゃないから私には知らせるなと
そういう電話だったそうです

亡くなるその直前にも 私には言うなと・・・

あれから19年 私が骨髄移植をしていたらと
そう思わない日はありません

でも同時に 具合の悪い私に
絶対に知らせまいとした兄の心も
その心のうちも 思わない日はありません

人を思うということはどういうことなんだろう
自分の命と引き換えにしても 
人を思うことってできるのだろうか

そういう疑問に駆られることが
人生には多々ありますが
そういう場面に出会うたび
兄のあのときの胸中を思います

兄の葬儀の日
車椅子で出席した私の耳には
ずっとビートルズの曲が聞こえていました

Let it be Let it be・・・♪
生前ビートルズが好きだった兄のために
葬儀の間中 その曲は流れていました

今もビートルズの曲を聴くたび
人が人を思いやることの重さを
噛み締めている私です

兄は私に最後の言葉は残しませんでしたが
最後の曲を残して 逝きました