大いなる酒宴
続いて書かれた未完の「類推の山」は「ぎこちない努力」としたら、「大いなる酒宴」は「人間の限界を思い知る」こと。
本篇の小説は168ページで終わり、残りの約100ページは訳者解説。
この「訳者解説」が解説というより研究。訳者はかくありたい。
第一部は、大勢の酒飲みたちによる煩雑な会話と宴の様子。
学び、知り、理解しょうとする欲求、「渇き」をもち、「生きている実感をすこしでも強くもちたい」と思っているものたちが、しかし、なんの方針もないため、ひたすら泥酔し、支離滅裂な酒宴をくりひろげる「悪夢」
第二部は、そこを抜け出した主人公が、いかがわしい人工天国を巡回する。
そのような混乱に耐えられなくなったものたちが逃げ込む偽の解決策、「人口天国」
そこでは、人々は、まやかしの飲み物、すなわちにせものの芸術やにせものの学問によって喉の渇きを癒されたような気になり、本当の喉の渇きを覚えなくなっている。この飲み物が、実質を欠いたうわべだけの言語、「不毛のエスペラント」「普遍的で、明快で、空っぽな言語」。
第三部は、元の場所に戻った主人公が日の光のあたる外へ出て、意味深長な会話を交わしたあとで締め括られる。
第一部の質の悪い酒でなく、もっと上等な本物の酒、すなわち、体験そのものであるような「真の言語」が存在することが希望。
その酒は「自分自身の知性のひらめき、自分自身の心のうずき、自分自身の腕が流す汗によって」手に入れなければならない。
(訳者解説より)
ぼくたちはいっせいに立ちあがった。ぼくたちのひとりひとりに、急いでやらなければならないことがいろいろとあったのだ。生きていゆくためには、やらなければならないことが、たくさんあった。
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