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正確なデッサンにこだわる必要あるのか。(#083)

ケイティーと水彩個人レッスンが始まったのは、彼女の娘メイプルが生まれてまもない頃だった。そのメイプルがもう6歳だ。瞬き3回パタパタパタとしたら、乳飲子が6歳になって幼稚園に通い始めた。これを光陰矢の如しという。

ケイティーには他に4人の子供がいる。今どき珍しい子沢山の家庭だ。彼女は自分の描いた動物キャラクターの絵をプリントした生地で子供服を作ってオンラインで販売している。夫のトムはビジネスの裏方の全てをしている。プラス・夫婦で、子供たちの学校への送迎、習い事の送迎に走り回る。家族みんなが集まると誰かしら兄弟喧嘩で泣いてるし。最近飼い始めたゴールデン・リトリバーの子犬は、可愛いアホで、誕生日用のケーキをキッチンカウンターから丸々引きずり下ろして、全部たべて、全部はいたり(こんなのは日常茶飯事だと聞いて空いた口が塞がらない)。とにかく毎日が戦争のような慌ただしさなのだ。話を聞いただけで頭がクラクラする。

そんな中、ケイティーは週に一度2時間、私とのレッスンの時間を取ってる。
最初は彼女の希望で、水彩を教えることからはじまった。彼女の母親は高校で美術教師をしている。そのせいで、彼女は今まで絵を描くことを避けて来たのだという。結婚して子供ができる前までは、アパレルの仕事をしていた。自分で新しいビジネスを始めたときに、知り合いのイラストレーターに要望通りのキャラクターを描いてもらって、それを生地にプリントしていたのだが、先のことを考えると自分で描いた方がいいだろう、と水彩を習うことに決めたのだ。

ほとんどの私の生徒さんがそうなのだが、水彩の色塗りはしばらくやってるとすぐ上達する。でも、デッサン力はなかなか伸びない。デッサンは練習量がいるのだ。そしてみなさん、デッサンの練習よりも大事なことが他にある。仕事・子供や孫の世話・・・。そもそもデッサンの練習は心踊るものではない。色塗りしてた方が楽しい。

そして、ケイティーもこの6年間デッサン力はほとんど伸びてない。でも、彼女の場合は別の理由があるのだ。

毎週のレッスンが終わる頃に、出来上がった動物キャラの絵を見て「これで本当にいいんかなぁ〜」(心の声)と私は首をかしげる。デッサンが甘い。私の基準ではバツ・ボツ・ダメ・ヤメ・.だ。でも、当の本人が気に入ってるので、ま・いっかとならざるを得ない。

そのご、その絵がアレンジされて布にプリントされて服になると、全く違う印象になって目の前に現れるのだ。驚く。私が望むスタイルではないとしても、ある特定のスタイルの魅力を放つ。これはどういうことなんだ?子供向けの服のプリント生地にはデッサンの正確さは必要ないということなんだろうか。下手が味になる分野なんだろうか。

という理由で、ケイティーのデッサン力が伸びない。それでも、ちゃんと商品になる絵が描けているのだから事足りていることになる。そんなわけで、私の立ち位置は、スキルを教える先生というよりも、彼女のアイディアや構図にアドバイスしたり、修正提案したりする・デザイン・パートナーみたいな感じになって来た。彼女のデッサン力に関して「このままで本当にいいんだろうか」という折り合いがつかない気持ちがある。モヤモヤモヤ。

あなたが今抱えているモヤモヤはなんだろう。
あなたの想像力がわたしの武器。今日も読んでくれてありがとう。

えんぴつ画・MUJI B5 ノートブック

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