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鉄道の一枚 7

※この記事は、やんさんの企画『駅にまつわるエトセトラ』に参加しています!





私が、まだ少しだけ、お酒が呑めた頃。

当時、私は都会の会社に勤めており、まだ車も持っていなかったので、列車通勤をしていた。毎日、自宅の最寄り駅から、会社の最寄り駅までのわずかな時間の列車の旅を堪能していた。

その職場は、わりとみんな和気あいあいと仕事をしていたので、仕事終わりにちょっと一杯呑んで帰ろうぜ!という事もしょっちゅうで、私は呑んでも一口、二口と味見程度で、ほぼ呑めないにも関わらず、よく一緒に呑み事に連れて行ってもらっていた。

それは、美味しい料理を食べる代わりに、会計係&酔っ払った同僚を最寄り駅で起こして列車を降りるのを見届けるという役割で、一緒に連れて行ってもらっていたのだが…。うん、懐かしい、そんな時代もあったなぁ。

そして、時は、ある年末のこと。

年末の仕事納めの納会で、それぞれが手に紙コップを持ち、いろんな飲み物を飲みながら、いろんなおつまみをつまみながら、あちらこちらで、ぱーっと盛り上がっていた。部屋には、お酒の匂いがぷんぷん充満していた。

私は、その日はウーロン茶オンリーで、しばらく盛り上がってる輪に入っていたが、やがて少し外れて、ウーロン茶の入った紙コップを持ったまま、その辺にあった椅子に腰掛けた。腰掛けたと同時に、その横にあった机に紙コップを置いた。ふぅ、ちょっと休憩。

ところが。ところが、だ。休憩している私に目をつけた同僚が何喰わぬ顔でやってきて、私の横に座って話しかけてきた。私も何やら話しながら、机に置いた紙コップを手に飲み物を口に含んだ。

………ん?んんっ!?これ、お酒やん!

油断した…。同僚が悪ノリして、私のウーロン茶が入った紙コップを何かが入った紙コップにすり替えたのだ。部屋中があんなにお酒の匂いで充満してなかったら、気づいたはずだったが、うん、油断した…。

これ、何!?何のお酒!?っていうか、私の口の中に一口入ったこのお酒はどぎゃんすればよかとね~!?
お酒を口に含んだまま、私は仕掛けた同僚に目で訴えた。
んんん~~~っっっ!!!

そして、その騒ぎに気付いた数人の同僚がやってきて、私にこう言った。
「飲み込むか、出すか、どっちかにせんね!」
ええ〜っ!?飲み込むって!はぁっ!出すって!?どっちも無理!!
えぇぇぇぇぇ〜っ!!!

ごくり。

飲み込んでしまった。誰かがこの日のために持ってきたとかいう、秘蔵のウイスキーを…。度数は40度以上あったのではなかろうかと記憶している。もちろんロックだ。それを飲み込んだ私はストンと床に座り込んでしまった。

それから周りの人たちが、水やお茶を持ってきて私を介抱してくれた。私の紙コップをすり替えた犯人も一緒に介抱して…って、ちょっと、あんたね!どうしてくれるとよ!?
私にウイスキーを仕掛けた犯人は、ずっと謝りながら水を飲ませてくれたけど…新年明けたら覚えときいよ〜!

結局、私は最後まで椅子に座ったまま、納会はお開きになり、私は列車通勤組に連れられて、ゆっくりと駅へと向かった。そのペースは亀の歩みより鈍かった。
それでも、私のペースに合わせて同僚が駅まで連れて行ってくれたのだが、ここからが私の迷走の始まりとなった。

駅に着いたものの、こんな日に限って、同じ方向の列車に乗る人たちは二次会へ行ってしまったのである。
「大丈夫!?やっぱりタクシーで帰ったほうがいいっちゃない?」
「…いや、大丈夫。車に乗ったら、吐きそう…。とりあえず列車動いてるから、列車に乗って帰るぅ…」

「何かあったら、すぐ電話するとよ!」

そう言って駅まで一緒に連れて来てくれた同僚たちとは、ホームへ上がるエスカレーターの前でお別れして、とりあえず、エスカレーターでホームへと上がる。しかし、それすらも気持ち悪い…。

ひとまず、ホームのベンチに座って、休憩する。あー、風が冷たくて気持ちいいなあ〜。そんなことを思いながら、列車を何本かやり過ごして、やっと落ち着いたタイミングで普通列車に乗った。

列車に乗ったのはよかったが、揺れが気持ち悪さを増幅させる。いかん。このまま乗ってると吐きそうだ。そう思って、いったん次の駅で列車を降りた。


撮った。

そして、なぜか、その降りた駅の階段を一歩一歩踏みしめて登っていき、改札口をいったん出て、近くにあったベンチに座ってぼーっとしていた。あー…気持ち悪い、頭がくらくらする、眼の前がセピア色になりよるよ…。

すると、そんな私を見かねて、駅員さんが話しかけてきた。
「どこまで帰るのですか?」
「○○駅までです…」
「そうしたら、次の列車に乗らないと○○駅までは帰れなくなりますよ。次に来る列車が○○駅に行く最終ですから…」
「えー、でもここに座ってる方が楽なんですけど…動きたくないし…」
「いやいや、次の列車に乗った方がいいですよ!」

結局、駅員さんに説得されて、私はまた、改札口を通り、階段を一歩一歩踏みしめて降りて、ホームへたどり着いた。ほどなくして、最終列車が入線してきた。

列車に乗って、自宅最寄りの駅まで、がんばって乗った。
そして、列車を降りて、やっとの思いで改札口を出た。いつもは寒いと感じる冬の夜風が、やっぱり気持ちいい~。

って、…え?それから、どうやって家へたどり着いたのかって?
まず、降りた駅で、同僚ではなく、なぜか友達に電話をして、私が家に無事にたどり着くまでつきあって、という訳の分からないことを言い、友達の声に励まされながら、通常10分ぐらいの道のりを30分かけて、家までの道を一歩一歩踏みしめながら、帰りましたとさ。

ちなみに。
翌年の納会から私の警戒度がアップしたのは言うまでもありません。




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やんさん!
駅でのエピソードは、他にもたくさんあったのですが、駅の写真を探していたら、この誰もいない夜の駅の階段の写真が出てきて、この懐かしエピソードを思い出しました(^^;)

どうぞ、よろしくお願いします!!!

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あこはるか
記事を書くための栄養源にします(^^;)