本の一枚 11
いや、もう感無量なんですよ。
noteには、『創作大賞』というのが毎年開催されている。この記事を書いている時は『創作大賞2024』の締め切りが数日後に迫っている状況だ。そんなタイミングだが、本を読んだので、今の気持ちを書いていきたい。
noteを始めた初期から、もしくは途中でひょんなことからご縁が出来たnoterさんがたくさんいる。そのうちのお一人である秋谷りんこさんが、昨年『創作大賞2023 別冊文藝春秋賞』を受賞されたのである。驚くと同時に、自分ごとのように嬉しくなって、旦那に「聞いて聞いて!」と語ったのを覚えている。
そして、出版が決まり、重版出来という嬉しいニュースも見て、いま見たら(遅いぞ!私!)、「シリーズ化決定」の文字も見えた。いや、もう、ずっとnoteでわいわいやっていた方が、大きな広い世界で活躍されるのを目にしていると、もう感無量という言葉以外、出てこなくなるのである。
私の語彙不足も大いにあるだろうが、言葉にならない気持ちはたくさんあるんです、というのは付け加えておきたい。
りんこさん!やっと読み終えました!めっちゃ素敵です!
感想文になるかどうか分からないですが、以下、読後ほやほやの私の気持ちです。
視えるということ
『ナースの卯月に視えるもの』は、長期療養型病棟に勤務する看護師の卯月咲笑が主人公。入院している患者さんの「思い残し」が視える看護師さんだ。まったく自分の意思で動けない患者さん、かろうじて動くことができる患者さん、自分のことを伝えることができる患者さん、どの患者さんにも「思い残し」がある。そして、それが視えるのが卯月である。
最初は視えることを一つの手段として、患者んさんに寄り添おうとしている、そんな卯月の姿を読んで、「あれ?探偵小説だったっけ?」と一瞬思った。でも、それは話の前半部分だけで、後半になって卯月の「視える」に対する想いが少しずつ変わっていくうちに、手段ではなくなってくる。じゃあ、何になったのか。看護をする上での精神的な補助や指針みたいなものに変わってきたような気がする。でも、そのあたりから、卯月の目指す看護本来の姿が見えてきたような気がしたのだ。
ところで、この卯月が「視える」ということなのだが、実は私も「視える」一人なのである。幼い頃は自覚がなかったが、夏休みにおばあちゃんの家に遊びに行くと、挨拶の二言目には「あんたはまた連れて来とるね」と言って、分厚い経典で身体をぽんぽんとされたものだ。そのおばあちゃんもまた視える人だった。
ただ、「視える」と言っても、私はそこまで強く視えるわけではない。親族は割とはっきりと視える方であるが、親族以外はぼんやりか、気配を感じるか、そのぐらいである。だから、卯月の「視える」シーンを読むたびに、しんどいだろうなあとずっと思っていた。なぜなら、私の場合ではあるが、一度「視て」しまうと、ずっとそれが気になるからだ。気にしなきゃいいのに、忘れたらいいのに、ちゃんとお祓いを覚えたら?といつも言われるが、ずっと流れに身をまかせてきた。きっと何か理由があって「視えた」のだろう。なので、気にしつつも見守ってきた。それがしんどいことでもあるが、楽なことでもあるのだ。どう説明したら、より伝わるか分からないが、「視えた」ものって、なるようにしかならないと思っているのだ。
だから「視えた」ものに対して、行動を起こした卯月はよくやったなぁとも思うし、放っておいてもよかったかもよ、しんどいし、とも思ったのだ。
そっか。シリーズ化されたら、卯月は「視える」に対してまた新たに考え、行動をするのかもしれないな。
残された時間
この小説の舞台は「長期療養型病棟」である。
いま乳がんを再発して療養中の身である自分にとっては、他人事ではない舞台である。実際にはお見舞いなどで、そういう場に行ったことはあるものの、いざ自分がお世話になるということになったら、どういうところで残りの時間を過ごすのか、ずっと気になっていた。
そういう場が、元看護師であるりんこさんによって、そういう場に縁がない人たちにも現場が見えるように描かれている。医療器具の説明、医学用語の解説、看護師たちの患者への想い。どれもがとても丁寧に描かれている。もうすでに言われているかもしれないが、これから看護師を目指す方や、私のように一生モノの病気と付き合っている方に読んでほしいなと思う。
ただ、小説を読んで思ったのは、この「長期療養型病棟」というのは、残された時間の多い少ないは関係ないし、今そこにいる人たちが少しでも穏やかに暮らせるように、という大きな想いが存在しているのだなと思った。
撮った!
実はこの本を本屋で入手してから、数ヶ月経つ。入手した日は博多駅にいて、博多駅の屋上で思いっきり本を掲げてみたのだ。まあ、いつも何かしら何かを掲げて一枚を撮ることが多いのだが、やっぱりその時の気持ちはただ一つ。「嬉しい」とか「ホッとした」という明るい気持ちだ。
ああ、もうなんて言ったらいいんだろう???
読後、これを書きながら思う。note記事で読んだ時もそう思ったのだが、自分がそういう状態になって、入院した時に出てくる思い残しは誰なのだろう?いや、人じゃなくてモノかもしれないなあ。そんな妄想を繰り広げているのであった。
『ナースの卯月に視えるもの』ぜひぜひ!!!