誠実なトシちゃん
80年代アイドルが注目されて、再びライブを開催するタレントが増えている気がする。当時のJPOPレベルの高さが見直されているようで、大歓迎。だが、ブームが続くかは未知数である。トシちゃんは、そんな世の流れと関係なく、長年にわたって老舗としての信用を築き上げてきた。ファンにとっても、プロデューサーにとっても、プロモーターにとっても、公演会場側にとっても、その信頼は厚いと思う。
ディナーショーについてみてみると、年々評判が上がり、今年から名古屋会場が増えるそうだ。ライブは、今年度まだ始まったばかりだが、各会場、満員御礼。声出しOKになった川口ライブでは、昨年以上の熱気と盛り上がりを実感した。どちらにも、何十年と続けてきた誠実な実績が表れている。この勢いのまま行くと、45周年記念ライブは、どこの会場になるのだろう。今年度の集客力が、自然と、さらに大きな会場へと導くに違いない。
人を評価する時、その言葉ではなく行動をみるのが正解だ。詐欺師に騙されるのは、安易に、その場の言葉だけを信じてしまうからだろう。実際にその人がどういう歩みをしてきたのかという足跡をたどれば、誠実かどうかの判断ができる。トシちゃんの場合、言葉の軽さに目がいってしまうと、わかりにくい。だが、その場の発言で物議を醸すことはあっても、仕事に対していい加減に取り組んだり、自分の都合で仕事に穴を開けたり、仕事の信頼を損ねたりした事件は、長いキャリアの中、まずなかった。(ドラマで忙しい頃、体調を壊してライブの日程変更したことを、「夜ヒット」で謝っていた記憶があるが、それだけかと思う。その際、プライベートを含めた自身の管理の悪さを反省していた。)
私がつぶさに見てきたここ3年について言えば、ぎっくり腰になっても、一度もステージを休まなかった。地方のモール会場では、本当に腰が痛そうだったけれど、ちゃんと足を上げて、最後まで踊り切った。会場にいる初見の人々は、腰痛を冗談としか思わなかったかもしれないレベルを保っていた。コロナ禍でも、本人含めた誰もコロナに罹らず、予定通りに全てのスケジュールをこなした。特別な「還暦記念ライブ」日程が、コロナのせいで急きょ変更を余儀なくされ、通常ライブツアーの合い間に無理矢理はさまれることとなった際にも、全く違う内容のライブを、どちらもハイクオリティでやり遂げた。写真集撮影をしていた頃でもあり、ハードスケジュール下、あちこちでベストを尽くすのは、相当たいへんなことだったと思う。
最近、痛感する。トシちゃんがやってきたことは、誠実な行動実績が新たな需要を生むという、ごく当たり前なブランド形成をしてきただけだということ。今回のライブで、満員の会場を嬉しそうに見回しながら、「東名阪の3箇所でしかライブができない年もあった。最近、戻ってきたファンは、今までどこ行ってたんだ!」と、地団駄を踏むような仕草で笑わせていた。自身の誠実な努力の継続により、時間をかけて、自然と挽回できたのだろう。
昨年度ライブの感想に書いたのと同様、「生きてるミッキーマウス」感があっただけでなく、今回のライブでは、「ダンディなライオン」感や「動けるフランク・シナトラ」感が増していた。声の伸び、感情の込め方、美しいビジュアル、舞う衣装、身体の動きの緩急、大きな舞台装置、華やかな照明、どれをとっても、昨年以上だったと思う。バラードだけでライブができる歌唱力も見せつけてくれた。
誠実なことに、昨年度のライブからまたワンランク上のパフォーマンスを仕上げている。本当にすごい。過去の自分をまた更新してきたトシちゃんは、日常生活において、常に「田原俊彦」像の底上げのために生きているのではないだろうか。どうしたら、さらに進化した自分を見せられるのか、どうしたら、もっとファンが喜ぶのか、新しいステージのためのインプットを心がけながら生きているに違いない。
J:comとアサヒ緑健の協賛があって、
セットが豪華になったようなことを、ライブMCで話していた。トシちゃんだけでなく、スタッフやバンドメンバー、ダンサー、舞台装置を含めた全体像が、最高級に揃い、仕上がってきたのではないだろうか。その充実感が、さらなるパフォーマンス向上に繋がっているようだ。ファンが増え続けている実績が、そういう効果をもたらしたのだと思う。それも全て、トシちゃんの誠実なパフォーマンス所以である。
MCでは「まだ未完成なステージ」と話していた。私にとっては、十分に完成形だったが、ライブを続けながら、さらに磨きをかけるつもりなのだろう。誠実にもほどがある。だからこそ、トシちゃんライブは癖になり、1回だけに留まらず、誰もがおかわりしたくなるのだと思う。昨年度の場合、直接私が足を運んだライブは1箇所だけだったが、配信やDVD鑑賞も含めたら、いったい何回観たのか、自分でも数えきれない。今回も、初公演の流れをあれよあれよと、呆気に取られながら見終わったが、既に、おかわりで味わい尽くしたい箇所が頭に浮かぶ。次の東京公演を想像して、今からワクワクだ。
今回、わが夫も初参戦。日頃の地道な「トシ活」が実ったのか?! 最初は「行くのが恥ずかしい」と言っていた夫に「去年の中野サンプラザライブの時、私の前はご夫婦だったよ。」「年々、男性ファンが増えていて、最近は3割ぐらいかな。」「往復、私が車を運転するよ。」と、もう一押しすることで、夫婦参加の夢がかなった。会場では、明らかに昨年以上、多くのご夫婦らしきカップルが目についた。お揃いのトシちゃんTシャツを着ておられるツーショットは、本当に羨ましかった。
そんな夫の感想。楽しい。歌が上手い。すごい体力。大したもんだ。元気をもらった。ステージが豪華(私が、散々独立してからの苦労話をしていたので、しょぼいと想像していたそうな)。照明が綺麗。話が面白い。笑い声自体が、芸の域に達している。TVでは、笑い声が浮いていると思うことがあったけれど、舞台上では、ちょうどいい塩梅だ。かけ声をするお客さんが、歌舞伎の「大向こう」のようだ。会場が一体となっている。……シンプルかつ冷静かつ当然な感想が、嬉しかった。
その上、トシちゃんに俄然、興味が湧いたようで、「今日(ライブの次の日)、トシちゃんは家でゆっくり休んでるのかなあ。」「50分で会場入りしたって言ってたけど、どこに住んでるの?」「次のライブはいつ?休まないとできないでしょう?」等々、いろいろ質問してくる。冗談めかして「トシちゃんみたいにポジティブ思考じゃないと!」「自分も負けてられない。」とまで言うようになった。緑効青汁のパンフレットにあった「『トシちゃんがあんなにがんばっているんだから私も負けられないな。』といった声を聞くと、やってよかったと思う。」という、トシちゃんが喜ぶ感想通りの発言を連発。トシちゃんあるある。普段は頭が硬い方なのに、素直な受けとめ方をしていて、これも、トシちゃんの誠実なパフォーマンス効果かなと、幸せな気持ちだ。夫もおかわり希望をしてくれたら、本物のトシちゃんファミリー!焦らせず、推移を見守りたい。
今回、私が特に印象的だったのは、登場時のオーラと、歌の開始を待つ後ろ姿の美しさと、ステージからはけて行く時のひょうきんなスタイル。これから観る方もおられるので、詳しく語らないが、一回一回のステージにかける思いは、細部まで浸透している。もちろん、終演後の挨拶にも登場してくれて、感謝の思いが伝わってきた。誠実さこそ、トシちゃんの本質だと改めて感じられる、大満足のライブだった。
拡散祭りが全体に伝わらず、少しモヤモヤした面があったのも事実。グッズとデジタルくじの行列の違いが分かりにくかったし、ライブフォト売り場があったなんて、全く気づかなかった。新参者が言うのは失礼かもしれないが、正直なところ、トシちゃんと運営サイドのクオリティに、差がある気がしている。どこにどの行列を作るのかぐらい、スタッフは事前に考えて、わかりやすい掲示をしておくべきではないだろうか。並び直している人たちを、結構見かけた。商売が下手だと思う。最終的にはいつでも、トシちゃんの誠実なクオリティが帳消しにしている。そのことに気づいて、運営サイドには、さらなる努力をお願いしたい。(伝わるか不明だが。)
トシちゃんを応援していると、本物の持つ輝きが世に広まり、さらに増大していく高揚感がある。誠実なパフォーマンスは、今後、必ず絶頂期をもたらす。それを共有できる喜び。ここまで元本保証・高利回りな商品も珍しい。元々のスーパースターが、より一層ビッグになる過程の目撃者に、あなたもなりませんか?(どこまでこの文章が伝わるのか、これも不明だが、トシちゃんほど、そそられる媒体も珍しいので、知らない人には教えてあげたくなる。)
トシちゃん伝説は、まだまだ続く。