トシちゃんの底力
2024年4月、産経新聞の1ヶ月連載記事は、毎日楽しかった。トシちゃんは、正直に、おもしろおかしく語る。子どもの時のやんちゃエピソードには、初めて聞いたものもあった。昔聞いていたら衝撃を受けたかもしれないが、今聞いても、なるほどね……という感じさ!時効とはいえ、アイドルなら隠しておきたいような内容まで、飾らずに話すところがトシちゃんらしい。
改めて、幼児期から、自分を客観視できていることを感じた。天性の聡明さなのだろうか。とんでもないことをしていても、俯瞰して見る余裕がある。危なっかしいようでいて、将来設計が着実だ。振り返れば、自然と筋が通っている。本人は、あくまでアウトローを気取っていたいのかもしれないが、真面目で堅実な資質が、自然とにじんでいる。
連載で最も驚いた箇所は、友人達とともに、初めて芸能事務所に履歴書を送ったら、全員に合格通知が来た時のこと。こんなのおかしいと考え、この後、お金を取られるに違いないと思ったとか。詐欺にあう大人が大勢いるというのに、弱冠中学生にして、このように冷静な感覚があるとは!
デビュー当時からの数々の功績を話す際にも、自分の力ではなく時代の流れに乗れたという、客観的な見方をしている。だからこそ、着々と実力をつける行動につながったのだろう。当時を知らない世代が多い今、想像を絶する大人気を、もっと盛大に表現して欲しいのに、描写が淡白過ぎる歯がゆさもあった。実力を伴っていない時期の本人の感覚は冷静でも、私たちが冷静になれないほどの、強烈な吸引力だった。この時期が底力となって、今に繋がったとも言える。
「田原トシちゃんねる!」では、ぶっつけ本番で、さまざまなチャレンジをしている。そんな中、難問に答えられたり、機転をきかせたり、トラブルに対処したり、底力を感じる場面が多々ある。普段、料理をしている訳でもないのに、砂糖と塩を一瞬で見分けられる。かなり以前、可南子さんのインスタライブを聞いた時に語られていたエピソード。子供の頃、山梨の田舎で蜂に刺された時、お父さんが直ぐに毒を抜いてくれて(確か、口で吸って)、病院に駆けつけたら、「応急処置が素晴らしい」と褒められていた、とのこと。トシちゃんって、どこでも生きていける底力があると思ったものだ。原始時代でもモテそうな?!
ファミリーのXを見ていると、トシちゃんは、大きなハコより、ファンと近い場所を好んでいるようだ。自分のショーのタイプが、観客にとって、正面からしっかり全体が見える小規模舞台の方がいいと思っているからだろうか。ジャニーズから独立して初めて行ったライブをYouTubeで観たけれど、ライブハウスのようだった。あの時こそ、本来やりたいと考えていたステージが表れていたと見るべきだろう。大規模な空間で大歓声に包まれると、ファン自身もますます興奮し、演者も満足を得られるものだ。そんな、ドームクラスの大舞台を、羨ましく思ってしまう気持ちもある。しかしトシちゃんは、ごまかしの効かないステージ上でのパフォーマンスを、しっかり観て欲しいのだろう。最近でも、イオンの無料イベントが好きと言っているそうな。通りがかりの人もいるような空間でこそ、底力がものを言う。
ファンとの温泉ツアーの様子が、有難いことに、YouTubeチャンネルで見られる。信じられないくらいフレンドリーで、スターらしさが失われないかと心配なくらいだ。だが、ショータイムとなると、普段着でも、急にスター然とする。単なるファンサービスというより、家族ひとりひとりとのふれあいを、トシちゃん自身が心から楽しんでいるようだ。絵付けなどの作品作りも、集中力が高くて上手い。どんな場所でも何でもこなせる、トシちゃんの底力が表れている。
冠婚葬祭が好きではないと公言しているのに、大切なカズのお父様の葬儀には、何をおいても駆けつける。それがトシちゃん。このような素顔が見えると、ますます惹かれてしまう。持ちつ持たれつの関係を利用しないつきあい方ができるのも、実力あってこそ。ついつい、表面的なつきあいもしてしまう私は、虚を捨て実を取る姿勢を、見習いたいと思う。
Xで「懐かしいと思わせるのは簡単、FCに入るまで持っていける底力がトシちゃんにはあるのだ」というコメントを見かけて、まさに同感!と膝を打つ思いだった。80年代アイドルが注目され、何十周年イベントなども増えているような気がするが、トシちゃんの場合、底力が違う。1年も休まずにライブを続けてきた、実力と自信がある。
新曲「愛だけがあればいい」を聴くと、声も表現力も深みが増した、奇跡のトシちゃんに出会える。ここに来て、TBS「ひるおび」のエンディングテーマになったり、BS日テレで帯番組が持てたり、嬉しいニュースが目白押し。今こそ、トシちゃんの底力が、表面化する時代なのだ!
「生まれ変わったら、世界を獲りたい」という発言を目にした。生まれ変わらずとも、これから世界を獲りに行くことができるのではないかと、私は考える。歌って踊れる若くて上手いアイドルは、韓国をはじめとしたアジアにもたくさんいるけれど、還暦を過ぎて歌って踊れるアイドルは、世界中探しても、存在しないのではないだろうか。80年代JPOPは、クオリティが高く、今聴いても古臭さがない。トシちゃんのヒット曲の歌詞を英語に直し、今、歌い直したらどうだろう。それを世界中に宣伝したら?ユニバーサルミュージックさま、いかがでしょうか。
トシちゃんの底力に、さらなる期待が膨らむ。