それが最期の言葉となった【明】
わたしが鬼ウザ激ウザなのは、国民の周知の事実である。
いつも、くだらないことを思いついては、やらずにはいられない性分だ。
かれこれ10年ほど前のお話。
娘も息子も高校生だった頃。
数件の施術が終わり(当時、ほぼ休みなく美容サロンを経営してました)、ほんのり疲れてふらっと子供たちの様子を見に行ったところ、ゆったり休日を満喫している様子。
「ママいちごミルクが飲みたい」
甘味やお菓子を一切好まないわたしが、子供たちに甘ったるいジュースを買ってきて欲しいとオネダリをする。
「………」
「………」
華麗なる無視だ。
TwitterだかYouTubeだかを観て微笑んでいる。
もう一度、声を張って言ってみる。
「ママいちごミルクが飲みたぁい」
「………」
「………」
驚きのシカトだ。
もういい、わかった。
「……それが母の最期の言葉となった。
あの時、どうして買ってきてあげなかったのだろう。ママが甘いものを欲しがるなんて、よっぽど疲れていたに違いない。ただただひらすらわたしはママが(娘ver)、ボクは母さんが(息子ver)鬱陶しかったんだ。」
ここらへんで、後ろを向いている息子の肩が笑いで震えだす。
娘はまだまだ反応してくれない。
まだだな。
「今でも思い出す。コンビニで見かけるたび、スーパーで見かけるたび、“いちごミルクが飲みたぁい“といっていた、可愛らしい母の言葉を。」
可愛らしいとか自分で言っちゃうんだ、とボソッと娘が呟く。
超聞いてるじゃん。
ノってきた!
「母さんはボクたち、わたしたちのために、毎日毎日必死で働いているというのに、それで何不自由なく生活が出来ているというのに。“いちごミルクが飲みたい“たった一つのお願いさえも聞いてあげなかったあの時の自分が許せない。あの時に時間を戻したい。そう、きっと冷たいいちごミルクが飲みたかったに違いない。母さんの最期の言葉は…」
あ、まだ続いてるんだ。
次のお客さんまだなの?
と、娘。
カランコロン
やべ、お客さんキタ。
「こんにちは〜。お待ちしておりました。今日、寒いですねぇ(仕事)」
あれから10年、まだまだ最期の言葉には程遠い模様。
本日、一緒に暮らしている恋人に、
「ねーねー、アコリスのこと地獄のラブ?ぐっちょんぐっちょんラブ??愛が止まらない??止められないこの想い!?
ねーねー、ちゃんとアヒピテルって言ってくれないとグレちゃうんだからね!キレやすい中年なんだからねっっ!」
等々捲し立ててたら、メンドクサッって顔されたので、
「…それがアコリスの最期の言葉となった」
と言い放ち(もはや捨て台詞w)布団に潜り込んで、ふと上記のことを思い出した次第です。
今日も元気です。
きっと10年後も元気です。
それでは、ごきげんよう。