こういうの、ズルをするって言うのよ/「罪の手ざわり」賈樟柯監督作を観て

ジャンクー監督の作品は初めてだった。
映画冒頭、倒れたトラックから大量のトマトが散らばっているシーンを見た時、ああこの映画を観てよかったと思った。
色の置き方、映し方。
最初から最後まで、映像が圧倒的に美しい。
それと並行に音の使い方も印象的だ。
外への暴力は過剰なまでに強く、内への暴力は呆気ないほど静かに。
劇中で、少女が金魚を放流する際の言葉が耳に残る。
「知ってる?こういうの、仏教では『ズルをする』って言うのよ。来世で幸せになるために、現世で良い行いをするの。」
17、8の女の子が、未来に幸せを願うことすらできない、それでも生きなくてはならない。
そんな現実が、今現在実際に在るということ。
中国当国ではこの映画が公開されていないこと。
この映画を撮ったのもまた中国の人であるということ。
私の中で、すこし、世界が広がった。

#コラム #エッセイ #映画 #ジャジャンクー

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