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部屋と口琴と ~倍音のある生活

うちの部屋には「口琴」というものが、計10本くらい眠っていたのですが、かれこれ10年近く、段ボールに放り込まれて、放置されてました。

口琴とは、こういうペンの長さくらいの小さい小物で、口に当てて、ビヨーンビヨーンという音を鳴らす簡易な楽器です。

左2本はベトナム製、中の黒いのはヨーロッパ製(多分ハンガリー)、右が北海道のムックリ

ここ1-2年、DTM(デスクトップミュージックの略:卓上で音楽を創りこむ総称です)をやるようになって、なぜか使う機会が増えたので、「口琴」について書いてみたいと思います。

今回はライトに4,000文字未満、かなり気軽な楽器なので、興味ある方はちょいとのぞいてみてください。

前半(1-3章)は、口琴についての説明、有名な方の作品を紹介します。
後半(4章)は、自分の作品に取り入れた事例を紹介しています。


0.自己紹介

音楽が好きで、聴いたり、演奏したり、創ったりしてます。
一度は音楽やめたのですが、2年ほど前から再開してDTM始めてます。
DTMならではということで、エレクトロニックなものを志していたのですが、なぜか民族楽器を掘り起こしている生活。

1.口琴とは?

 口にくわえたり唇に当てたりして、指で弁を振動させることで、その振動音を口の中の空間に共鳴?こだま?させて、音を鳴らす、、、という楽器です。

 文に書くと難しいのですが、やってみるとすぐにコツがつかめます(ただし、北海道のムックリだけは、群を抜いて難しいです!!)

また、基本的には音階はコントロールできません。音楽的に使おうとすると、キーの異なるものを準備して多重録音するか、取り込んでからピッチシフトさせるかしかありません。

まずは、有名な方の動画が分かりやすいかと思いますので紹介しておきます。

■直川礼緒さん
⇒倍音研究の第一人者だそうです。かなりストイックな口琴プレイを披露されています。


■巻上公一さん
⇒なんと、音階がつけられないという口琴の弱点を解消した、トロンボーン型の口琴を操ってます。ほしいですねぇ。

2.倍音とポピュラーミュージック

 さて、口琴から少し離れるのですが、こういう「倍音」系の音は根強い人気があって、特にエレクトロニックな音楽やダブなんかでは取り入れられていたりします。

 僕が知っている中で最初の記憶は、Jamiroquaiの1stアルバムEmergency on Planet Earth(1993)でした。当時はそんなにメジャーではなかった、オーストラリア原住民の民族楽器楽器ディジリジドゥをかなり印象的に使い、70's Stevie Wonderを思わせるファンク?/R&B?サウンドは、なかなか衝撃的でした。

Jamiroquai - When You Gonna Learn? (Official Music Video)

この曲では、イントロと間奏で使われているのですが、、、
「せっかくオシャレな音なのに、このノイズうるさいよ」

と思う方もいるかしれません。
そうなんです、ノイズを雑音と感じるか効果的なかっこいい音と感じるかの境目は紙一重で、とらえる人次第です。

「これを良いと感じるのがオシャレ」といかいうわけではなく、先入観なく聴いて、気持ちいいか気持ち悪いかは、自分の感性に従うしかないと思います。

あと、倍音で有名なのは、モンゴルのホーメイですね。
僕もあこがれて、練習したことあるのですが、全くできませんでした。

声がときどき2重に聞こえる箇所があるのが分かるでしょうか?一度生で聴いてみたいものです。

3.口琴もいろいろある

一番ポピュラーなのは、ヨーロッパ型の口琴ではないしょうか?(冒頭の写真の真ん中の黒いやつ)

形がちょっと面白くてオシャレです。
スヌーピーの作品でも誰かが使っているのを見かけたことがあります。

家にあるものは、どこかの雑貨屋で買ったので、どこの製造かわからないのですが、確かハンガリーだったように記憶しています。

そして、ベトナム製。これはダンモイという名前がついていて、シンプルな構造なんですが、かなり明るくてキャッチ‐な音がします。個人的には一番使いやすいやつですね。(冒頭の写真の一番左の金色のやつ)

最後に、アイヌのムックリ。(冒頭の写真の一番右の竹のやつ)これは難しい・・・
通常は手で弁を震わせるのですが、それをひもで引っ張る必要があります。
タイミングよく引っ張らないとビヨンビヨンとならないのでちょっとコツがいります。

そして、上手くならせるようになる頃には、ひもが切れます(´Д`)

ただ、この自由にならせないもどかしさも含めて、魅力的ですね。

さて、これらはどんな音がするの?どう使うの?ということで、次の章で、取り込んだ自分の作品例を紹介します。


4.曲への取込例

さてこの章では僕が作った作品に取り込んだ例を紹介するのですが、
・音階はコントロールできない
・音がかなり小さいので、録音に気を遣う
・ニュアンスを残すにはEQの幅が意外と広いので、他の楽器とかぶりやすい
という3重苦があるので、、、なかなか難しいのが現状です。

4-1.エレクトロ/ハウス

日本の伝統生物エビーバー

 これが作品としては、いちばんうまくまとまりました。ベトナム製の口琴を日本の三線と混ぜ合わせて、エレクトロ/ハウスな曲になじませてます。
 ボーカルというかキャッチフレーズをワンフレーズを繰り返して、エフェクトかけていく、というようなハウス/テクノのフォーマットにのせて、口の開き方などで、エフェクトの量をアナログで調整する、というような使い方です。
 モジュレーションかけて、エンベロープでエフェクトの深みを調整して、、、と多分簡単にDTMなどの卓上で再現できるのですが、このバカバカしさを含めた映像作品だと思っていただければと思います。(なのであえて「弾いてみた」風にしてみました)

 あ、あとエビーバーというのは、とあるクリエイターの方が考案したエビとビーバーが混じったナゾの生き物で、日本の伝統生物ではありません。鳥獣戯画にも描かれていません。念のため、訂正しておきます。

4-2.チル/ポップ

「山椒バニラアイスがけ #山椒食べながら作ってみた  2024年9月3日」

 こちらはX(旧Twitter)で作った作品。
 音楽制作の中で山椒好きなマニアックな界隈がありまして、そこに出展した作品です。だいたい口琴というと、「え?この楽器は何?」というところから説明が必要なのですが、山椒界隈では、すでに有名だったのが印象的でした。
 山椒の痺れと口琴の倍音の響きをかけています。

 また、紹介した3種類の口琴を弾き比べたというショーケース的な作品。

 もともとは、深夜の2時間DTMという、2時間限定でお題に沿った作品を作る、、、という企画で、「バニラ」というタイトルで作ったものでした。そこに口琴を山椒と見立てて、ふりかけて、「バニラアイスの山椒かけ」をしてみたというところです。

 音楽的には、音のバランスをとるのが難しく、口琴の倍音って、結構EQ広めにとらないと魅力が伝わらないので、オケの音を小さくするという処理になったのが残念です。

 また、この企画は3時間で作るという目安があるので、2時間DTM作品に追加している都合上1時間しか作業時間がなかったので、いま聴きなおすと、演奏がかなり雑ですね、、、いつか再録したいです。

 あと、もとの2時間DTMの作品もリンクしておきます。原曲で印象的だったフレットレスベースの良さが、口琴の音を混ぜたせいで、ずべてかき消されてしまっているという点、要注目です(他人の作品だとこういう壊し方はできないのですが、自分の作品だからこそですね。まじめに使おうとした場合には「EQかぶる楽器との事前のすみわけ」が必要になると思います)

 深夜の2時間DTM2024年9月1日
 お題:空想のラジオのオープニング曲
 Titel:バニラ

4-3.DUB/アンビエント

「宝探しの曲」 深夜の2時間DTM2023年4月29日(土)

 さて、さかのぼること1年半前、自宅を大掃除したんですが、その時に、写真の口琴が大量に見つかったんです。
 DTM再開して1年くらいたったころだったので、なんか新しいもの欲しいな、と取り入れてみたのがこれです。
 やはりこういうDUB/アンビエントっぽい曲には、すごくしっくりきます。

 宝探しをしてみたら、そこから謎の守り人が出てきたという設定で、セリフ的に使ってますね。

5.まとめ

ということで、口琴の世界、どうでしたでしょうか?

「ホーメイは難しい」「ディジリジドゥはでかい」となると、
「安くて小さい口琴」で、お手軽に、憧れの倍音生活を始めてみてはいかがでしょうか?

生活が豊かになるかどうかは、わかりません。すくなくとも自分は10年くらい段ボールの中に放置されてました。

最後にまじめな話、、、

バンドアンサンブルで使おうとすると、音が小さいのと、マイクで拾わないといけないので、なかなか難しい楽器ではあります。
ドラムの方がそのあたりの音量バランスを持っている方だと助かるのですがこれは、アコースティックな民族楽器全般の制約といえます。

その点、DTMなどで使う場合は、事前に音域がかぶる楽器隊との調整は必要ですが、そこさえクリアすれば、取り込めるので、逆に使いやすいのではないかと思います。

ただ、こちらはモジュレーション系のシンセ音やプラグインエフェクトで代用できるので、生口琴の用途はあまりないのも現実です。

いいところがあまり思い浮かびませんでしたが、そういう突込みどころも含めて、ビヨンビヨンした倍音には癒されます。気が向いたら、入手してみて、楽しい口琴ライフを過ごしてみるのも、一興ではないでしょうか。

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