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洋上の学びの場「世界青年の船」事業レポート#1 どんな事業?船上生活のリアル

世界各国の青年がひとつの船の中で寝食を共にし、異文化理解を深めるとともに、社会で活躍するための力を磨く、そんなユニークなプログラムをご存じでしょうか。歴史も長く、とても価値のある貴重な経験ができるにも関わらず、まだまだ認知が低くて、色んな国の人と船に乗って…と言うと某クルーズ旅とよく間違われるこの事業。そこで、2019年度、日本サブ・ナショナル・リーダーとして参画してきた私の目線で、どんなプログラムなのか、どんなことが得られたのか、ダイジェストでまとめてみました。この第一編では事業の概要と船上生活の様子を、第二編では寄港地のメキシコ・エンセナーダでの体験、第三編ではどんな環境や学びがあるのかをお伝えします。少しでも多くの方の目に留まり、より多くの若者に応募の機会が広がること、そしてこの文章から何か気づきを得てもらうことを願っています。

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1)「世界青年の船」とは?

「世界青年の船」事業(Ship for World Youth)は、内閣府による6つの青年国際交流事業の一つです。日本+10カ国の18~30才までの青年合計約240名が共同生活をしながら、ディスカッションや文化交流、参加青年による自主活動の企画運営を行うプログラムで、異文化対応力やコミュニケーション力を高める国際交流だけでなく、次世代を担う日本青年の育成を目的としており、セルフマネジメント力、プロジェクトマネジメント力を養うことができます。
その事業名の通り、日本国内での陸上研修や寄港地での活動を含め、約40日の長期プログラムのうち大半を船上で過ごします。参加国と寄港地は毎年異なり、2019年度の参加国は、バーレーン、ブラジル、エジプト、フランス、イギリス、ケニア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、スリランカの10カ国と日本。寄港地はメキシコ西海岸の都市エンセナーダで、途中、給油のためにハワイに半日寄港し、太平洋を横断して日本-メキシコ間を往復しました。
ちなみに、私自身は6つの青年国際交流事業の中で、船を使ったもう一つの事業「東南アジア青年の船」に2013年度の参加青年として参加しました。(下の写真は当時のもの)こちらは「世界青年の船」とは似ているようで異なるカラーがあり、当時大学4年次の私は大きな影響を受けました。その結果として今のような生き方になったのかもしれません。

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各国の青年たちは、まず選考試験で選抜された後、それぞれの国で事前準備を行い、東京に参集します。日本青年は9月に事前研修を行い、翌年1月までの3ヶ月強の間、ディスカッションに備えた情報収集や、楽器やダンスの練習など準備を進めました。
2020年1月11日、各国から全員が東京に集まったとき、そして1月16日に約1か月の間自分たちの‘home’となるにっぽん丸で横浜港から出航したときのワクワク感はこの事業でしか味わえない、期待と不安が入り混じった独特の高揚感があります。

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2)船上生活ってどんなかんじ?

一日の活動は、数日の休日を除いて、8時30分の朝の集合に始まり、ディスカッション、各国の文化ワークショップ、セミナーなどが夕方までびっしりとスケジュールが組まれています。公式のスケジュールの他にも自主活動時間を使って、自国のお菓子や飲み物を使ったパーティーや、映画上映会、ダンスのワークショップなど自国の文化や自身の得意技を活かしたバラエティ豊かなアクティビティが毎日開催されて、全部はハシゴできないほど。
だからこそ自分の時間をつくることも大事で、朝にデッキでヨガやランニングをしたり、夜に星空を眺めたり、日記を書いたりしている青年も多くいました。

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船内では、青年たちは基本的にランダムに組まれた3人一組でひとつのキャビンを使用します。このキャビンメイトと呼ばれるルームメイトが、朝起こし合ったり、時には服やメイク道具をシェアしたりというかけがえのない友人になります。食事は、メインダイニングで3食決められた時間に摂り、食文化や食制限の違いに対応できるよう、ベジタリアン、ハラル料理が必ず用意されているブッフェ形式です。つまり、船酔いが酷くて食事量が減らない限り、運動量と食事量のバランスに気を付けないと、プログラム終了時には持ってきた服が着れなくなる可能性があるということです。ちなみに、インターネットはなく、SNSのないオフラインのコミュニケーションに全力を投じる日々を過ごします。

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言ってみれば洋上に隔離された研修施設のようなもの。とは言ってもなかなかイメージしづらいと思うので、過去の参加青年が制作したYoutube動画をご覧ください。
今回は片道2週間をかけて太平洋を横断するという例年より洋上での期間が長い航路で、多くの大洋の表情、感動的な夕陽や朝日を、時に船酔いと闘いながらも味わう機会がありました。ハワイ付近でデッキの手すりの上に見つけた塩の結晶や、朝日かと見間違うような月の出は、通信環境がなくスマホの通知に煩わされない中で自然の雄大さ・美しさにはっとさせられた瞬間でもありました。
青年たちは、毎日あっという間に過ぎていく、非日常的な刺激があふれる日々の中で、様々な気づきを得るのですが、それは第三編でお話しします。

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#2 メキシコ寄港地活動~¡Hola! México~
#3 そこにある気づきと成長の機会

「多拠点生活」×「パッチワークキャリア」を軸に、自分のパフォーマンスが高まる場所で生活し、自分の専門性や持ち味を活かした仕事・活動を組み合わせキャリアを築くライフスタイルを模索中。大阪にて大人の学びのサードプレイス「Leaning Bar CF曽根崎」企画運営。趣味はウイスキー。