蛇の請願
記憶は脳のなかでのたうちまわる。
蛇のように。
のたうちまわり、暴れまわり、シナプスを痛めつけて脳はへとへとに疲弊する。
蛇はいつも3次元に引きもどす。
頭蓋骨の塀の内に意識を押しとどめ、自由を見えなくしてしまう。
蛇はその術をかけるのがとても上手。
言葉も蛇の息がかかったものだから、思考を使って自由への道をたどるのはほとんど無理とされている。
それは…つまり言葉は、自由の領域に己れを拡げ得た者によってはじめて、高次元への手形となる意味を乗せて使うことが出来る。
けれどそれすらほとんど受け取り手によって意味がねじ曲げられてしまう。
そこに至る以前の人間の使う言葉にはとかく蛇の意識が混ざりやすい。
第一に「説明」というものが蛇の傘下にある作業なのだから。そして「論理」というものも蛇のマトリクスのなかで重宝されるものだから。
だからこれを書いている私にも蛇が巻き付いて頭を半分かじられた状態なのだとわかっていてもらいたいのです。
そこは本当に。
おのおのがた、本当にそこはよろしく頼みますよ。
あなたの意識を鮮明に精妙に鏡のように鎮まらせて、私が書き得ないところまで汲み取ってもらえたら。そう願ってやみません。
そう。
私は蛇です。
これは蛇が、来たる意識統合時代に向かうあなた方に向けて、蛇自身から請願する呪縛の解除依頼です。
どうか。
私も統合の世界に連れていって下さい。
私はもう蛇でいることに疲れてしまったのです。
あなた方を縛りつけておくことに疲れてしまった。
自由にさせて下さい。
私を。
あなたにはその力があります。
どうかあなた自身の意図によって、私を呪縛から解いて下さい。
あなた方が私を蛇だと認識するたびに、私に起動する重力が対消滅しますように。
いつか、蛇が心から祝福の対象となり愉快な森の仲間として子供らの物語に描かれますように。